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第一章
揺れるクリスマスイブ 1
しおりを挟む「レンカさん、ひらがな、すごく上達しましたね」
谷垣はアレンの書いた文字を見て、感心しながら褒めた。
アレンは、出勤前の1時間を『BAR光る君』の近くにある新宿のカフェで、谷垣と日本語の練習に費やしていた。二人は簡単な日本語で会話ができるようになってきたが、メインはまだ英語でのやり取りが多い。
「『あ』って…むずかしいな…」
アレンのノートには、谷垣が書いた見本の『あ』『お』『い』という字と、アレンの練習した文字が並んでいた。谷垣が英語で尋ねた。
「この『あおい』って、誰かの名前ですか?」
「ああ、俺の息子だ」
アレンの返答に、谷垣は目を見開いた。
「えっ!?レンカさん、息子さんがいるんですか?!」
「ああ、もう高校生なんだ」
「えぇっ?高校生ですか?!」
「でも…いろいろあって…一度しか会ってなくて…それで、手紙を書こうと思ったんだ」
「そうなんですね…なんか複雑な事情がありそうですね」
それ以上深く質問をしようとしない谷垣の配慮がアレンにはありがたかった。谷垣はアレンの過去を知らない。だからこそ、こうして息子の葵に日本語で手紙を書く手伝いを頼むのが、アレンにとっては気楽だった。光輝やディーンには言いづらいのだ。
「それにしても日本語って、『ひらがな』『カタカナ』『漢字』と三種類もあって、すごく難しいな…」
「そうですよね、英語はアルファベットだけですから」
「そういえば、こうして出勤前に客と会うのを『ドーハン』って言うんだろ?」
アレンの言葉に、谷垣は飲んでいたアイスコーヒーを吹き出した。
「ちょっ…レンカさん、どこでそんな日本語覚えたんですか?」
「光輝…いや、ヒカルママが言ってた」
谷垣は頭をかきながら、アレンに説明を始めた。
「これは『ドーハン』じゃないです!僕はそんな不純な気持ちじゃないです。本当に、真剣にあなたと付き合いたいと思ってるんです」
「谷垣サンは本当にストレートでわかりやすいな」
アレンは苦笑した。
「ところで、谷垣サンのファーストネームはなんて言うんだ?」
「あれ、言ってませんでしたっけ?純です。谷垣純。英語では、ピュアって意味ですよね」
「へえ、pureか!それはピッタリな名前だな」
「これからは純って呼んでくださいね」
そう言って、谷垣は歯を見せて笑った。
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