不器用なおじさん達の恋の歌

LUNA

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第一章

恋歌が響く夜 2

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時計を見ると、まだ昼前だった。
アレンはディーン以外で日本での数少ない友達、光輝に相談しようと考えた。光輝はディーンの昔のバンド仲間で、少しだけ英語も話せる。何より、とても気のいい奴だ。彼はアキラとも仲が良く、アレンとディーンが出所してからも何度も家に顔を出してくれている。
「アレンだけど。昼飯、一緒にどう?下北沢で」と英語でメッセージを送ると、すぐに「OK」と返事が来た。

二人は商店街にあるスパイスカレーの店で待ち合わせをすることになった。店に入って5分ほどすると、黒の革ジャンに革パンという目立つ姿の男が現れた。長い髪がゆらりと揺れて、店内の視線を集める。
「よぉ、アレン。元気にしてたか?」
「光輝、来てくれてありがとう」
光輝はアレンの向かいに座り、ランチのカレーセットを注文した。そして、早速本題に入った。
「何か悩み事があるんだろ?」
さすがは光輝だ。アレンが相談しに来たことを一言も説明せずに察してくれる。
「ああ……俺さ、今ディーンの家に居候してるだろ?でも、日本語ができないし、無職だし、あいつらに迷惑かけてる気がして……仕事を探してるんだけど、どうやって探せばいいかも分からなくてさ……」
「なるほどな。お前の見た目ならモデルとかいくらでもできそうだが、コネがないと難しいかもしれん」
光輝は腕を組んで少し考え込んだが、ふと良い考えが浮かんだらしく、口元に笑みが浮かんだ。
「もしお前さえ良ければ、俺の店で働かないか?ただ、夜の仕事だから、ディーンが許してくれるか分からないけどな」
「本当か!?光輝の店って、新宿でバーをやってるんだっけ。俺、日本語できないけど大丈夫かな……」
「少しずつ覚えればいいさ。どうだ、試しに今日からやってみるか?」
「ああ!ぜひ頼む!光輝の店ならディーンも安心だろうし……」
「ちょっと待て。ディーンには俺の店で働くってことは内緒にしろよ」
「え?なんで?」
「アイツが俺の店って分かったら絶対に反対するからだ。だから、外国人向けのバーで仕事が見つかったってことにしておけ」
「……分かった。ディーンには内緒にするよ」
話が一段落したところで、カレーが運ばれてきた。二人はしばらく無言で食事に集中する。
「いやー、美味しかったな」
「日本はどこ行っても飯が安くて美味いよな!最高だよ」
「ニューヨークは物価が高いって言うもんな」
「そうだ、光輝。ところで……」
アレンは話を切り出そうとしたが、言葉を選んで一瞬躊躇した。
「なんだよ、言いたいことがあるなら言えよ」
「俺の息子……葵とは最近会ってるか?」
「おう、葵ならたまに店に顔を出すし、月に一回くらいは会ってるぜ。忙しそうだけどな、売れっ子だから」
「俺……俺はさ、葵と空にひどいことをしてしまって……父親失格なんだ。でも、いつか葵が俺を許してくれて、親子になれたらって思ってる。どんなに時間がかかっても」
アレンが苦しげに呟くように言うのを、光輝は優しい眼差しで見守っていた。
「葵は……ずっと父親に憧れてたからな」

それから新宿の光輝の店の場所を聞いてメモをすると、夜21時に直接店に行く約束をして光輝と別れた。
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