弱い犬ほどよく吠える、追放された冒険者は自業自得で

栗金団(くりきんとん)

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【第20話】 ダンジョン攻略―リヴァイアサン―

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コウガが、前線に立ってリヴァイアサンを引き連れる。
ランタンが水中で火壁を使った発想を利用して、空を飛ぶための『飛行』を水中で使い、命がけのダイビングを試みる。
人魚のような尾びれを使った予備動作もなく右へ左へ進むコウガに、リヴァイアサンは山脈のように凹凸の目立つ顔を寄せて怒りに任せて噛みつきを繰り返す。
天敵のいない空間で長らく暮らしていたリヴァイアサンにとって、最強の盾である鱗の前にはコウガの攻撃は痛くも痒くもない。
とはいえ、しつこく攻撃を続けられれば顔の周りでコバエが飛び回っているような苛立ちを覚える。
よって、飲み込むためでも食すためでもなくただ殺すためにコウガを追い続けていた。
(くっ、全くいつまで寝ているんですかね…!)
事前に蛇系モンスターと戦闘していなければ、到底予測できない動きで迫るリヴァイアサン。
コウガは、それを時には身をよじり時にはカウンターを仕掛けて躱す。
遠洋用の舟を食らう巨大なモンスター相手に、地上まで真っ直ぐおびき寄せることはできない。
ましてや、企みがあると悟られてはいけない。だが、そうして盛大な運動をさせて飲み込まれたランタンの目を覚ますことがコウガの一番の狙いだった。
観察眼には、体力を消耗してリヴァイアサンの中で気絶するランタンのステータスが映っている。
彼女が目を覚ます前に、リヴァイアサンの開いた口が迫った。
その口の中に広がる幽谷のような深淵を覗き見たコウガは、溢れ出る冷や汗を無視して後方に下がる。
当然リヴァイアサンの口はコウガを追って、牙の先にある岩壁より硬い顎が胸をかする。
「ごふっ!」
衝撃であばら骨が何本か折れる音と共に、コウガが僅かに息を吐き出して身体を折る。
だが、魔法だけは発動させたまま地上へ向かう。
水からリヴァイアサンの身体をもう一度引きずり出すためには、先ほどのように高く地上へ飛び上がらせる必要がある。
そのために、ここから地上までは助走として真っ直ぐ駆け抜けなければいけない。
痛みをこらえて加速をするコウガに、リヴァイアサンはみるみる距離を縮める。
単純なスピードだけなら、コウガの方が下だ。引き寄せるだけなら、ロロンが適任だった。
だが、コウガは自分の限界をよく理解していた。魔法は同時に二つ以上行使できない。
リヴァイアサンを地上に出した時、致命傷に近い一撃を与えて同時に水への退路を断つことはできない。
さらに、ここでランタンを失いロロンとの信頼関係が崩れるのはコウガにとっても多大な損失だった。
彼の真の目的は、ダンジョンの初踏破の先にある。
コウガは足元を見るどころか、視線を下にやることもしなかった。
すぐそこにモンスターの牙があるのは、気配だけでわかった。
カワセミが川面に一直線に飛び込むように、勢いよく地上へ出る。そのまま天井を目指しながらコウガは、横目に能力を底上げされたロロンを見た。
ハイジャンプで宙を舞ったリヴァイアサンが、強靭な鱗に覆われた頭蓋骨で持ってコウガを高く打ち上げた。
そこで、コウガは意識を失った。
「おらあぁぁ!」
小島の端まで寄ってから、限界まで助走をつけてロロンが飛び上がる。
獲物を追うことに夢中になってそのまま跳ね上がったリヴァイアサンは、いつの間にかコバエが二匹になっていることに気づかない。
そもそも天敵の少ない蛇の狭い視界は、後ろから迫る敵に対応していない。
さらに、眼球を守る瞼というものが存在しない。ロロンは上段に構えた剣を、無防備な眼球に突き出す。
剣先が真っ直ぐ瞳を貫き、リヴァイアサンが悲鳴を上げた。
「ギイィィイイ!!!」
「『光の盾』!」
身体をよじったリヴァイアサンは、水圧でロロンを振り払えないことで、ようやくそこが住み慣れた湖底ではないことに気づいた。
すぐに引き戻そうと頭をもたげて、後ろから倒れる形でバックビートを行おうとする。
だが、潜没しようとするリヴァイアサンの頭の先には水面ではなく光の盾が広がっている。
ディスカは作戦通り魔法を発動しながらも、嫌な予感がして胸がざわついていた。
10年間積み重ね続けてきた戦闘経験から来る経験則が、一つの考えを導き出す。
「これ、持たないんじゃないの…?」
光の盾は魔法攻撃に特化した防御魔法であり、物理攻撃には弱い。
リヴァイアサンの体重を受け止めることができるのか、そしてもし受け止めた場合その身体はどこに行くのか。
恐らく、最も近くで小島に一人立つディスカの元へと来るのではないだろうか、と。
リヴァイアサンはロロンの攻撃を受けてもなお、少なくとも傍目からは満足に動き続けているように見える。
コウガは戦闘不能に陥っている。
万が一無事であっても、飛行魔法ではすぐに小島に光の盾が届く場所まで引き返すことはできないだろう。
リヴァイアサンの身体がゆっくりと、地上へ近づいてくる。
ディスカの鼻腔に、濃厚な死の匂いが届く。恐怖で身体が硬直し始め突き出した指先が冷たくなる。
何度か手を握りしめてもなお、血液が凍り付いてくような感覚が離れない。
「…しっかりしろ、私!」
ディスカは、拳を太腿にたたきつけた。
そして、腰元から取り出した二本のポーションを一気に飲み干す。
苦く粘りつくような食感を喉に押し込み、空の瓶を投げ捨てて魔法に集中する。
ディスカは後衛にいた時は感じなかった感覚に、身を震わせた。
確実な死の恐怖に混じる奇妙な高揚感と一体感だ。死ぬかもしれない。
だが、光の盾を解除してリヴァイアサンをホームグラウンドに返すわけにはいかない。
そうなったらランタンは助からず、リヴァイアサンを倒す希望は霧散する。
コウガとロロンにランタン、仲間が身体をはり命をかけて得たチャンスを逃すわけにはいけない。
ディスカの頭の中にあるのは、ただそれだけだった。
「キシャァアアァ!」
隕石が落下してきた。
凍った池に石を投げ込んだ時のような澄んだ音がたって、それから土砂崩れのときの唸るような音が鳴り響く。
頭を打ち付けた衝撃でリヴァイアサンの下半身が鞭のようにうねる。
だが、目を潰されてもなお蛇に備わる感覚器官が新しいコバエの存在を知らせる。
無理矢理身体を捻って小島の上のディスカに口を向けると、全身の筋肉を総動員して横ばいで移動をし始める。
押しつぶされる前に目から剣を抜いたロロンは、リヴァイアサンの行先を察すると剣を構え直して降下する。
ロロンの頭の中で、コウガの言葉が反響した。
『あらゆる武器をはじく鱗と巨大な身体を持ち、その身体で荒波を起こして船を沈没させます。』
つい数分前に生まれて初めて地上へ飛び出たリヴァイアサンは、今やコバエと思っていた生物に追い詰められ殺されかけていたことを理解していた。
敗北の二文字を前に、海の怪物としての自尊心や一時的な痛みにもなりふり構っていられない。
潰したはずの瞳に宿る生への渇望を見ながら、ロロンは自分の剣術では奴に勝ちえないと悟る。
そして、自らの誇りであり長い間冒険を共にした相棒を手放す覚悟を決める。
「やってやる…!
やるしかねぇだろ!!『神速』!」
ロロンは、リヴァイアサンの頭でも首でもなく、開かれた口の中に降り立った。
ディスカを背後に、向かってくる洪大に対立する。
燃え滾る火の中に自ら飛び込んできた虫に、リヴァイアサンは獲物を嚙み締める。
アーチ状の牙が獲物の肉を引き裂き口の中に入り込む、そのはずだった。
澄んだ海面と同じ髪色の人間が、牙の間に剣を挟みこんでその身を持って閉口する力に対抗していた。
「ロロン!?」
「止まれやぁああ!デカブツがぁあ!」
剣を足元に捨てて上顎と下顎の牙をそれぞれ手に突き刺したまま、ロロンはぬかるんだ土砂の上で踏ん張る。
自分より大きな獲物すら飲み込んで養分とする蛇だが、開くことに特化した顎は閉じようとする力が弱い。
体重に任せて進むリヴァイアサンの動きを押さえるロロンの身体に毒腺を通して毒が注入され、徐々に蝕まれていく。
にも関わらず、絶対的な自信を持って全身全霊でロロンは逆らう。さらに倍以上の体重差を受け止めても足腰は砕けるどころか、しっかりと地面を捕らえている。

『あなたの『神速』はただの速度向上魔法じゃない。』

ロロンは、修行で初めて崖から落ちたときのことを思い出す。
まだスキルも身に付けていない頃、神速で一気に駆け上るつもりが疲労と慣れない環境でふいに腕の力が抜け落ちた。
いくら脚力があって速く動けても、地面の上にいなくては意味がない。
受身を取っても建物にして10階分の高さから落ちれば、衝撃は骨が折れるにもとどまらず内臓が損傷して脳や心臓に取り返しのつかないダメージを追う。
焦燥感を持って見上げた崖上、まるで読書でもするかのように悠々と見下ろすポチと目が合った。
だが数秒後、地面の上で寝転ぶロロンの身体には傷一つなかった。
一時的な速度向上と身体強化、自然回復、思考加速、それが神速で得られる本当の能力だった。

自分より弱いはずの生物が、全力で当たってもしぶとく反抗するどころか死を厭わずに悪あがきを見せる。
リヴァイアサンは、はるか格下のはずの獲物に恐怖を覚えた。
口の中で抵抗するロロンを差し置いて身体を捻り、弧を描いて尾を振り回す。
勢いをつけたその先に、ディスカがいた。牙に阻まれてロロンは動けない、それでも。
「ランタン!!
ディスカが!
おい!ランタン!」
仲間に助けを求める。
ロロンが蛇の王に石化させられたとき、誰よりも早く動いたのはランタンだった。
リヴァイアサンに出会った時もそうだ。ロロンと同じように、彼女は仲間のために全てを投げ打つことができる。
出せる限りの声量で、聞こえているかもわからない呼びかけをしながら、ロロンはコウガの言っていたことを理解した。

『彼女がただ仲間思いなだけのか弱い少女だと思っているなら、考えを改めてください』

「う…ん…
…む?くっさいのだ!」
地震のような振動と鼻が曲がりそうなほどの異臭で、ランタンは目を覚ました。
そして、すぐにディスカの光魔法がないことに気づく。冥府にいるのかと思うほどの冥暗に徐々に目を慣らしていくうちに、ランタンの記憶がはっきりとしていく。
巨大な双眸が水底から迫っていると気づいたとき、彼女は咄嗟にロロンの手を離して自ら囮となった。
その際に魔法を発動しようとして杖を握っていたこともあり、手元には愛しのカドゥケウスがあった。
「おー、カドゥケウス!
よしよし、これで一安心なのだ。
『灯火』!」
松明よりも弱い光源が杖の先に灯り、周囲を照らした。
変温動物の体内だけあって肌寒いが、相手が魚類ではなく爬虫類であったのは幸運だった。
体内を巡るのが空気ではなく水であったら、ランタンはすぐに死んでいただろう。
ひとまず出口を目指して歩き始めたランタンだったが、リヴァイアサンの動きに合わせてうごめく食道は足場が悪く、水と消化液が混じった液体であちらこちらが滑っている。
本来飲み込まれた獲物は毒牙と消化液で身体が痺れて動けなくはずなのだが、どちらも強力な毒耐性を持つランタンには一切の効果を持たない。
「うへぇ…ベタベタするのだ…」
どちらが口なのかもわからないまましばらく進むと、異臭がさらに強くなった。
もはや、鼻をつまんでいても吐き気を催すレベルだ。それでも直感に従って歩みを進めると、ふいにランタンは障害物に躓いた。
それでも持ち前の身体能力ですぐに態勢を整えて立ち上がるが、灯で照らしきれなかったそれに杖先を向ける。
「わっ…!
あ、っとと、もう、何なのだ…ひうっ!?」
障害物かと思ったそれは、人魚の身体だった。
ランタンは咄嗟に杖を構えて攻撃姿勢を取るが、人魚はピクリとも動かない。
蹴飛ばして確認をしてから恐る恐るさらに灯を遠くへやると、同じような死体がいくつも折り重なって点々と落ちていた。
実際には彼らはランタンが火壁で打ち上げた人魚なのだが、適度に焼かれて死んだ人魚は溶液で溶かされることで、魚以上の腐臭を生み出していた。
ランタンはさらに先へと進もうと試みるが、人魚の死体の山が壁となって立ちはだかって進めない。
絶体絶命な状況でもランタンが冷静さを失わなかったのは、長年ソロで活動していた経験と仲間への信頼からだった。
さらにドワーフは本来岩山を切り裂いて地中で暮らしているため、ランタンは敵の体内であろうとも灯がなかったとしても闘志を絶やすことはなかった。
「それに、ロロンがワシを見捨てるわけないのだ。」
だが、この狭い空間で範囲攻撃を行っても巻き込まれる可能性も高い。
特に火魔法は、周囲を焼き尽くしかねない危険な魔法だ。さらに、相手は水底から現れたモンスター。
外に出た瞬間に、溺れ死ぬこともありえなくはない。
「うーむ、どうしようなのだ。
おわっ!?」
ぐらりと、大きく体内が揺れて上下が反転した。
受身を取って転がりながら、ランタンは名前も知らないモンスターが何かと戦っていると理解した。
そして、ノータイムでその相手がコウガ達なのではないかと思う。耳を澄ませていると、覚えのある声がする。

「ランタン!!ディスカが!おい!ランタン!」
即座に立ち上がると、ランタンは腐臭が移るのも構わず人魚たちに手を伸ばした。
そして、その場で死体を爆発させた。
爆風による熱波がランタンもろとも人魚を吹き飛ばし、熱エネルギーがリヴァイアサンの体内を駆け巡った。
「…ッ!?
グギイァアアア!!」
「あっ!?っつ!!」
リヴァイアサンの身体が不自然に跳ねて、柳のように垂れ落ちた腹から尾と頭へ向けて落雷が伝線するように爆発が連鎖していく。
規則正しく一列に並んだ鱗が高熱で形を変え逆さに反り、内側から皮膚が焼け焦げていく。
そしてそれが頭に達した時、開かれた口から小さな火炎が吹き出す。

『あっつ!!!どこ狙ってんだ!』
『いつまでも突っ立っとるお主が悪いのだ!さっさとどくのだ!』

咄嗟に腕で顔を覆ってやり過ごしたロロンは、身に覚えのある感覚で確信する。
それは、誰でもないランタンが体内で攻撃をしている証拠だった。
ロロンは自分自身の血液で濡れた顔を明るくするが、神速の効果時間はとっくに切れている。
足先の感覚はどこかに消え去り、筋肉が千切れ骨が軋む音がする。
「くっそ…もう少しなのに…!」
出血で遠のく意識では振り払う気力もなく、視界はぼやけて揺らいでいる。
リヴァイアサンの進行は止まったが、完全制圧には程遠い。
ランタンがリヴァイアサンを仕留めるのが先か、リヴァイアサンがディスカとロロンを殺すのが先か。
もしくは、ランタンの魔力が切れて体内から脱出できなくなるというのも考えられる。
だが、先に動いたのはリヴァイアサンだった。
死を目前に生存本能が痛みを遮断してリミッターを外された状態で、追い詰められた獣が宿す狂気で狙ったのはやはりディスカだった。
異臭を放つ身体に鞭を打って尾を振り上げて、地面を抉り取るようにして振り下ろす。
ロロンが視線をやったときには、ディスカが細い腕で投げた瓶はリヴァイアサンの尾を外れて舞い、その身体が打ち付けられていた。
脱力した身体は一度浮いてから曲線を描いて水の上に着弾して、何度か跳ねてから最終的に砂浜の先にある扉に頭から当たって止まった。
「ディスカ!!」

「……ディスカ?」
映像が途切れて黒ずんだまま動かなくなった水晶に、リョナークが呼びかける。
前後のやり取りを見ても、術者に何かあったのは間違いない。
魔道具が動かなくなったということは、映像を送っていた魔道具が壊れたか、魔力を注ぎ込んでいた術者が死んだことを意味する。
リョナークは完全に通信が切れてただの透明な置物と化した宝石をしばらく見つめていたが、やがて指を組んで強く握りしめた両の掌を膝の上から下ろす。
その隣で水晶の表面に反射した表情を見たリリックは、静かに瞳を閉じて無言を貫いた。

魔法を維持するには、高い精神力を要する。
集中が切れれば魔力は形を留められず空気中に分散し、既に放たれた遠距離魔法であっても敵にぶつかる前にかき消える。
ましてや攻撃を受ければ、痛みでしばらくは魔法が使えなくなる。
そのため、魔法使いは後衛で前衛に守られ続けている。そして、安定的に魔力を練るために杖が存在する。
海の怪物ならぬ湖の主が、独り舞台へ戻る。
リヴァイアサンの口角が、ロロンの絶望を笑うように吊り上がった。
だが、ディスカの光の盾は壊れなかった。
「モンスター風情が……
魔法使いを、舐めるな…」
膝の可動域を超えて折れた脚とひしゃげた脇腹を抱えて、赤く染まった視界の中でもディスカは魔力を精製し続ける。
仲間のために命をとしても戦うと決めた時、ディスカの手元にあったのは数本のポーションだけだった。
体力向上のポーションと回復ポーション、精神力向上ポーション、速度向上ポーション、毒直しのポーション、
それから痛覚遮断ポーションだ。
ディスカが迷わず飲んだのは、精神力向上ポーションと痛覚遮断ポーション。
文字通り、身体を捨てて魔法を取ったのだ。
そして攻撃を受ける瞬間に投げたのは、回復ポーションだ。瓶が割れ、ポーションが効果を発動する。
「『神速』」
完全状態のロロンがリヴァイアサンの牙を払いのけ、足元の剣をしゃがみこんで拾う。
異変を感知したリヴァイアサンは、すぐに全力で口を閉じる。
ロロンは腰を丸めたまま頭は下げたまま腰から立ち上がり、ふらりと前に倒れ込むように一歩を踏み出した。
瞬間、その一歩に全体重を乗せて後脚で地面を蹴り出す。閃光が走った。
狙うのは、開いた口内上部のさらに奥にある脳。閉じ切るより先に侵入を許すと判断したリヴァイアサンは、自滅覚悟で尾を振るった。
自分の口を叩き潰し切り裂いてでも、目の前の脅威を排除することを優先する。
リヴァイアサンが怪物と言われる所以は、その大きさと体力にこそある。
水中という自陣から締め出され鉄壁の防御を失っても、リヴァイアサンはロロンを殺めるに足る力が残っている。
「『光撃の槍』」
光の粒子が魔力で結合し結晶となった一本の槍が、リヴァイアサンの尾に刺さった。
槍先は鎧を失った尾の血肉をかき分けて地面まで到達し、縦横無尽に蠢くリヴァイアサンの楔となる。
胴の真ん中にある心臓近くは爆ぜ、尾は動きを封じられた。
小島の上にある岩場の上に、コウガが這い上がる。
下半身は水につかっており、衝突したときのダメージで見るも無残な状態だ。
少女が持つ白魚のような中指を高らかに立て、ロロンの背中を押す。
ロロンとリヴァイアサンの絶叫が洞窟内に響き渡る。
「『風神烈風』!!」
「グガアアアアアア!!」
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