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47-1 戦闘
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精神的ダメージを食らい、皆が微妙にそわそわしていたが、とりあえず先に進もうと、再び歩き出す。
洞窟の岩肌が続く巨大な空間はしばらく続いていたが、罠がなくなった代わりに今度は魔獣とやらが出現するようになってきた。
「皆下がれ!!」
ウェジエが俺やリョウ、フェシスに叫び、背後へと下がらせる。ジウシード、ウェジエ、ジェイクは剣を抜き、それらを薙ぎ倒して行った。ときには魔法を放ち、思わず感嘆の声を上げてしまう。
「おぉ、スゲーな!! 魔法攻撃かっこいい!!」
呑気な言葉を発しているのは、三人の戦いが圧倒的に強いからだ。領主まで上り詰めたというのは伊達じゃないということだろう。領地対抗試合とやらも、こいつらが圧倒的に強かったらしいしな。
魔力とやらを籠めた手を翳し、そこから発動される炎や水、雷などは迫力もある上に、なんせ綺麗だった。自在に迸る魔法。そりゃ、見惚れるよね。リョウですらジェイクの戦う姿に見惚れているようだった。
そうして呑気に見惚れていると、ズシンッとなにやら地響きが……な、なんだ?
圧倒的な力で魔獣たちを倒し切ったジウシードたちは、その地響きに気付いたのか、洞窟の先に目をやった。まだまだ続いていた洞窟の先。そこは真っ暗闇でその先は見えない。しかし、明らかにその地響きはその暗闇のなかから聞こえてくる。
なんなんだ、と皆が身構える。すると、その暗闇のなかからぬっと現れたのは……巨大なドラゴンだった……。
「えっ……」
漆黒と言える真っ黒な鱗にギラリと光る真紅の眼。巨大な身体はこの広い空間を埋め尽くすほどの大きさ。洞窟の天井に届きそうなほどの高さに頭部があり、圧倒され見上げる。
鋭い爪に太い四肢。背にはこの洞窟で広げることは不可能だろう、と思えるほどの巨大な翼が見える。
俺はその場から動けず固まった。リョウとフェシスですら呆然と見上げている。
ジウシードとウェジエとジェイクもしばらく呆然としていたが、しかし、ハッとしたかと思うとお互い顔を見合わせ頷き合った。そしてじりじりと間合いを取るように後退る。そして俺たちに向かい小声で指示をする。
「アキラ、お前たちは岩陰に隠れろ。そして、その場から絶対に動くな」
ジウシードが俺たちに隠れるように促した。その言葉にようやく思考が動き出し、一気に恐怖が沸き立つ。
「ジ、ジウシードたちは大丈夫なのか!? あ、あんなのと……戦えるのか!?」
震える声でジウシードに問い掛ける。ジウシードは俺に振り返りふわりと微笑んだ。その顔はとても優しい顔で、そして怯える様子も全くない。そのことに安心感を覚えた。
「大丈夫だ。心配するな」
そう呟いたジウシードは俺たちを背後に促すと、再びドラゴンに向き直った。
俺たちは言われた通り、岩陰に身を隠す。俺たちを庇いながら戦うのは明らかに負担になるだろうしな。足手纏いにはなりたくない。ドラゴンに見付からないようにするのが俺たちの努めだ。
俺たちが岩陰に隠れたことを確認すると、ジウシードたちは真っ直ぐにドラゴンを見据え剣を構えた。
そしてそのことでドラゴンもジウシードたちの存在に気付く。
『グウォォォォォオオオ!!』
ビリビリと空気が震えるほどの咆哮を上げた。思わず耳を塞ぎ、岩陰から覗き見る。ドラゴンは咆哮を上げたと同時に大きく口を開き、炎を吐き出す。
激しい炎は海のように広がり、辺り一面を燃やす。しかし、ウェジエがなにやら水魔法を発動させたのか、キラキラと煌めく水は大きく広がり、ジウシードたち全員を膜のように覆った。炎はドラゴンの口から吐き出されたあとは、燃え広がるものがないためか、しばらくすると洞窟内に熱気だけを残し消え去った。それと同時にジウシードたちは剣と魔法で攻撃を開始する。
固い鱗はジウシードたちの剣を通さない。ジウシードたちは苦戦しているようだが、しかし諦めるような奴らではない。お互い連携を取りながら、様々な攻撃を仕掛けている。
「なにも手伝えないってのが歯痒いな……」
「うーん、まあ確かに……」
俺が呟いた言葉にリョウは頷いた。さすがにリョウも心配をしているようだ。皆の戦う姿はかっこいいが、しかし、ドラゴンからの攻撃を受けたりしているところを見ると、思わず飛び出て駆け付けたい衝動に駆られる。そんなことをしてはジウシードたちを邪魔してしまうことが分かるために、必死に耐える。
フェシスはなにも言わないが、しかし、握り締める手を見ると、俺たち同様に必死に耐えているのだ、ということが痛いほど分かった。
「そ、それにしてもさ、この選定の儀って……」
洞窟の岩肌が続く巨大な空間はしばらく続いていたが、罠がなくなった代わりに今度は魔獣とやらが出現するようになってきた。
「皆下がれ!!」
ウェジエが俺やリョウ、フェシスに叫び、背後へと下がらせる。ジウシード、ウェジエ、ジェイクは剣を抜き、それらを薙ぎ倒して行った。ときには魔法を放ち、思わず感嘆の声を上げてしまう。
「おぉ、スゲーな!! 魔法攻撃かっこいい!!」
呑気な言葉を発しているのは、三人の戦いが圧倒的に強いからだ。領主まで上り詰めたというのは伊達じゃないということだろう。領地対抗試合とやらも、こいつらが圧倒的に強かったらしいしな。
魔力とやらを籠めた手を翳し、そこから発動される炎や水、雷などは迫力もある上に、なんせ綺麗だった。自在に迸る魔法。そりゃ、見惚れるよね。リョウですらジェイクの戦う姿に見惚れているようだった。
そうして呑気に見惚れていると、ズシンッとなにやら地響きが……な、なんだ?
圧倒的な力で魔獣たちを倒し切ったジウシードたちは、その地響きに気付いたのか、洞窟の先に目をやった。まだまだ続いていた洞窟の先。そこは真っ暗闇でその先は見えない。しかし、明らかにその地響きはその暗闇のなかから聞こえてくる。
なんなんだ、と皆が身構える。すると、その暗闇のなかからぬっと現れたのは……巨大なドラゴンだった……。
「えっ……」
漆黒と言える真っ黒な鱗にギラリと光る真紅の眼。巨大な身体はこの広い空間を埋め尽くすほどの大きさ。洞窟の天井に届きそうなほどの高さに頭部があり、圧倒され見上げる。
鋭い爪に太い四肢。背にはこの洞窟で広げることは不可能だろう、と思えるほどの巨大な翼が見える。
俺はその場から動けず固まった。リョウとフェシスですら呆然と見上げている。
ジウシードとウェジエとジェイクもしばらく呆然としていたが、しかし、ハッとしたかと思うとお互い顔を見合わせ頷き合った。そしてじりじりと間合いを取るように後退る。そして俺たちに向かい小声で指示をする。
「アキラ、お前たちは岩陰に隠れろ。そして、その場から絶対に動くな」
ジウシードが俺たちに隠れるように促した。その言葉にようやく思考が動き出し、一気に恐怖が沸き立つ。
「ジ、ジウシードたちは大丈夫なのか!? あ、あんなのと……戦えるのか!?」
震える声でジウシードに問い掛ける。ジウシードは俺に振り返りふわりと微笑んだ。その顔はとても優しい顔で、そして怯える様子も全くない。そのことに安心感を覚えた。
「大丈夫だ。心配するな」
そう呟いたジウシードは俺たちを背後に促すと、再びドラゴンに向き直った。
俺たちは言われた通り、岩陰に身を隠す。俺たちを庇いながら戦うのは明らかに負担になるだろうしな。足手纏いにはなりたくない。ドラゴンに見付からないようにするのが俺たちの努めだ。
俺たちが岩陰に隠れたことを確認すると、ジウシードたちは真っ直ぐにドラゴンを見据え剣を構えた。
そしてそのことでドラゴンもジウシードたちの存在に気付く。
『グウォォォォォオオオ!!』
ビリビリと空気が震えるほどの咆哮を上げた。思わず耳を塞ぎ、岩陰から覗き見る。ドラゴンは咆哮を上げたと同時に大きく口を開き、炎を吐き出す。
激しい炎は海のように広がり、辺り一面を燃やす。しかし、ウェジエがなにやら水魔法を発動させたのか、キラキラと煌めく水は大きく広がり、ジウシードたち全員を膜のように覆った。炎はドラゴンの口から吐き出されたあとは、燃え広がるものがないためか、しばらくすると洞窟内に熱気だけを残し消え去った。それと同時にジウシードたちは剣と魔法で攻撃を開始する。
固い鱗はジウシードたちの剣を通さない。ジウシードたちは苦戦しているようだが、しかし諦めるような奴らではない。お互い連携を取りながら、様々な攻撃を仕掛けている。
「なにも手伝えないってのが歯痒いな……」
「うーん、まあ確かに……」
俺が呟いた言葉にリョウは頷いた。さすがにリョウも心配をしているようだ。皆の戦う姿はかっこいいが、しかし、ドラゴンからの攻撃を受けたりしているところを見ると、思わず飛び出て駆け付けたい衝動に駆られる。そんなことをしてはジウシードたちを邪魔してしまうことが分かるために、必死に耐える。
フェシスはなにも言わないが、しかし、握り締める手を見ると、俺たち同様に必死に耐えているのだ、ということが痛いほど分かった。
「そ、それにしてもさ、この選定の儀って……」
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