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44-2 お題のある密室
しおりを挟む「扉もないとはな……どうやって出たら良いんだか……」
ウェジエが苦笑しながら呟く。
「扉がないってことは……また落下? 嫌だ……」
嫌過ぎる……。落下だけは勘弁してくれ。あの浮遊感が怖い……。しかもこんな密室って水攻めとかじゃないだろうな、とか考えてしまい、ぞわっとする。
「他のみんなもどうなってるんだろ。同じように密室に閉じ込められてるのかな」
「そうだな……早くここを出て皆の状況を知りたいところだが……」
ジウシードと離れてしまったことに不安になり、そわそわとしてしまう。きっとウェジエもフェシスのことが心配だろう、と思いウェジエのほうを見ると、ウェジエはなにか発見したのか、ある箇所をじっと見詰めていた。
「どうしたんだ?」
「ん? いや、あれ、なにかな、と思って」
そう言ってウェジエが指差す箇所へと目をやった。そこには壁だった場所にじわじわとなにかが染み出すように黒ずんで来ていた。
「な、なんだあれ。危ないやつ!?」
「いや……あれは……文字?」
ウェジエが目を凝らしながら見詰める。俺も同様に見詰めていると、じわじわと浮き出て来たものは確かに文字のような形となっていき、そしてそれは短い文章となった。
「ちっさ!」
遠目では読めないほどの小さい文字で書かれた文章。
「と、とりあえず見に行ってみるか」
俺の突っ込みにウェジエが苦笑しつつも、警戒しながらその文字へと歩み寄る。そしてその壁に現れた文字をふたりでじっと見詰める。そこに書かれていたものは……
『結ばれないと出られない部屋』
「「は?」」
水攻めではなかったことに一安心だが、『結ばれないと出られない部屋』とは一体……。ウェジエと顔を見合わせる。
「えっと……これって……」
「う、うーん……」
「ま、まさかなぁ……まさかセッ……い、いや、んぐ、ゲフンゲフン……ま、まさかな!! 違うだろ!! ア、ハハ……」
そんな漫画みたいな話あるかよ、なあ? いや、誰に言ってんだって話だが……でも、そんな訳ないだろ! 多分……うん……ね……。
「「…………」」
ちーん。お互いしばし沈黙……。
一体どれくらい沈黙していたのか……。そのまま動けなくなった俺とウェジエは、ギシッと身体が固まった。しばらくするとその沈黙に耐えきれなくなったのか、ウェジエがじりっと動いたことで、俺もビクッと身体を震わせる。
「あ、あーっと、とりあえずもう少し調べてみよう」
ウェジエの目が泳いでいる……、ハ、ハハ……俺も明らかにギクシャクしているのが分かるが、それはもうお互い様だ。うん、諦めよう……。ウェジエもあえて突っ込まない。
「そ、そうだな……なにか部屋から出る方法があるかもしれないし」
そう言い、お互いウロウロしながら部屋を調べるが、やはりなにもない……。床や壁を手触りで調べていき、天井は届かないが見た限りではなにもない。
げっそりとしながら部屋の中央に腰を下ろし溜め息を吐く。
「な、なにもないな……」
「う、うん……」
「結ばれないと、というのは……どういう意味だろうか……」
「……ど、どういう意味だろうね……」
再び沈黙が流れる……。
『結ばれる』という言葉……これって、明らかに『運命の相手を見付ける』という話を思い浮かべるよな……そしてそのなかで『結ばれる』ということイコール、それは『セックス』だった。そ、それは明らかだが……だからといって伴侶以外の人間とヤルとかありえないだろ。
チラリとウェジエに視線を向けると、バチッと目が合ってしまい、お互いカァァアッと顔が赤くなる。
「い、いや!! 駄目だろ!! 伴侶以外となんて……なぁ!?」
「だ、だよな……だよなぁ……でも、それならどうやってこの部屋を出られるんだろうか……」
お互い『結ばれる』という意味は分かっていても、それを口にすることすら出来ず、それ以外にこの部屋を出る方法が分からない。
ふたりでうんうんと唸りながら考えるが、ほんの少しでも「じゃあ試してみるか」とならないということに俺もウェジエもお互いの伴侶をそれだけ愛しているのだということを実感した。
「他の皆も同じお題なのかな……」
「どうだろうな。でもこれってきっと伴侶であることを試されている気がするから同じことを問われているんじゃないだろうか」
ふむ、とウェジエが顎に手をやりながら考える。俺はそのウェジエの言葉に引っ掛かった。
「伴侶であることを試されている……」
「ん? どうかしたか?」
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