上 下
88 / 113

44-2 お題のある密室

しおりを挟む

「扉もないとはな……どうやって出たら良いんだか……」

 ウェジエが苦笑しながら呟く。

「扉がないってことは……また落下? 嫌だ……」

 嫌過ぎる……。落下だけは勘弁してくれ。あの浮遊感が怖い……。しかもこんな密室って水攻めとかじゃないだろうな、とか考えてしまい、ぞわっとする。

「他のみんなもどうなってるんだろ。同じように密室に閉じ込められてるのかな」
「そうだな……早くここを出て皆の状況を知りたいところだが……」

 ジウシードと離れてしまったことに不安になり、そわそわとしてしまう。きっとウェジエもフェシスのことが心配だろう、と思いウェジエのほうを見ると、ウェジエはなにか発見したのか、ある箇所をじっと見詰めていた。

「どうしたんだ?」
「ん? いや、あれ、なにかな、と思って」

 そう言ってウェジエが指差す箇所へと目をやった。そこには壁だった場所にじわじわとなにかが染み出すように黒ずんで来ていた。

「な、なんだあれ。危ないやつ!?」
「いや……あれは……文字?」

 ウェジエが目を凝らしながら見詰める。俺も同様に見詰めていると、じわじわと浮き出て来たものは確かに文字のような形となっていき、そしてそれは短い文章となった。

「ちっさ!」

 遠目では読めないほどの小さい文字で書かれた文章。

「と、とりあえず見に行ってみるか」

 俺の突っ込みにウェジエが苦笑しつつも、警戒しながらその文字へと歩み寄る。そしてその壁に現れた文字をふたりでじっと見詰める。そこに書かれていたものは……

『結ばれないと出られない部屋』

「「は?」」

 水攻めではなかったことに一安心だが、『結ばれないと出られない部屋』とは一体……。ウェジエと顔を見合わせる。

「えっと……これって……」
「う、うーん……」
「ま、まさかなぁ……まさかセッ……い、いや、んぐ、ゲフンゲフン……ま、まさかな!! 違うだろ!! ア、ハハ……」

 そんな漫画みたいな話あるかよ、なあ? いや、誰に言ってんだって話だが……でも、そんな訳ないだろ! 多分……うん……ね……。

「「…………」」

 ちーん。お互いしばし沈黙……。

 一体どれくらい沈黙していたのか……。そのまま動けなくなった俺とウェジエは、ギシッと身体が固まった。しばらくするとその沈黙に耐えきれなくなったのか、ウェジエがじりっと動いたことで、俺もビクッと身体を震わせる。

「あ、あーっと、とりあえずもう少し調べてみよう」

 ウェジエの目が泳いでいる……、ハ、ハハ……俺も明らかにギクシャクしているのが分かるが、それはもうお互い様だ。うん、諦めよう……。ウェジエもあえて突っ込まない。

「そ、そうだな……なにか部屋から出る方法があるかもしれないし」

 そう言い、お互いウロウロしながら部屋を調べるが、やはりなにもない……。床や壁を手触りで調べていき、天井は届かないが見た限りではなにもない。

 げっそりとしながら部屋の中央に腰を下ろし溜め息を吐く。

「な、なにもないな……」
「う、うん……」
「結ばれないと、というのは……どういう意味だろうか……」
「……ど、どういう意味だろうね……」

 再び沈黙が流れる……。

『結ばれる』という言葉……これって、明らかに『運命の相手を見付ける』という話を思い浮かべるよな……そしてそのなかで『結ばれる』ということイコール、それは『セックス』だった。そ、それは明らかだが……だからといって伴侶以外の人間とヤルとかありえないだろ。

 チラリとウェジエに視線を向けると、バチッと目が合ってしまい、お互いカァァアッと顔が赤くなる。

「い、いや!! 駄目だろ!! 伴侶以外となんて……なぁ!?」
「だ、だよな……だよなぁ……でも、それならどうやってこの部屋を出られるんだろうか……」

 お互い『結ばれる』という意味は分かっていても、それを口にすることすら出来ず、それ以外にこの部屋を出る方法が分からない。
 ふたりでうんうんと唸りながら考えるが、ほんの少しでも「じゃあ試してみるか」とならないということに俺もウェジエもお互いの伴侶をそれだけ愛しているのだということを実感した。

「他の皆も同じお題なのかな……」
「どうだろうな。でもこれってきっと伴侶であることを試されている気がするから同じことを問われているんじゃないだろうか」

 ふむ、とウェジエが顎に手をやりながら考える。俺はそのウェジエの言葉に引っ掛かった。

「伴侶であることを試されている……」
「ん? どうかしたか?」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】【Bl】魔力のない俺は今日もイケメン絶倫幼馴染から魔力をもらいます

ペーパーナイフ
BL
俺は猛勉強の末やっと魔法高校特待生コースに入学することができた。 安心したのもつかの間、魔力検査をしたところ魔力適性なし?! このままでは学費無料の特待生を降ろされてしまう…。貧乏な俺にこの学校の学費はとても払えない。 そんなときイケメン幼馴染が魔力をくれると言ってきて… 魔力ってこんな方法でしか得られないんですか!! 注意 無理やり フェラ 射精管理 何でもありな人向けです リバなし 主人公受け 妊娠要素なし 後半ほとんどエロ ハッピーエンドになるよう努めます

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

推し様の幼少期が天使過ぎて、意地悪な義兄をやらずに可愛がってたら…彼に愛されました。

櫻坂 真紀
BL
死んでしまった俺は、大好きなBLゲームの悪役令息に転生を果たした。 でもこのキャラ、大好きな推し様を虐め、嫌われる意地悪な義兄じゃ……!? そして俺の前に現れた、幼少期の推し様。 その子が余りに可愛くて、天使過ぎて……俺、とても意地悪なんか出来ない! なので、全力で可愛がる事にします! すると、推し様……弟も、俺を大好きになってくれて──? 【全28話で完結しました。R18のお話には※が付けてあります。】

宝珠の神子は優しい狼とスローライフを送りたい

緑虫
BL
事故で両親と愛犬を失った陽太。 アルバイトを掛け持ちして、ギリギリの生活を送っていた。 ある日、深夜バイトの帰り道、交通事故に巻き込まれてしまう。気が付けば真っ白な空間にいて、勝手に人の性格を「単細胞」と評する謎の声に、宝珠を体内に埋め込むので異世界で頑張って長生きしてほしいと頼まれてしまった。 落ちた先は、見知らぬ世界。 深い森にひとり住む喋る大狼のグイードに拾われた陽太は、持ち前の明るさと単細胞な性格のお陰もあって、一見キツイけど実は優しいグイードとのワイルドなもふもふ付きスローライフを満喫し始める。 グイードとの会話から、自分が「宝珠の神子」と呼ばれる百年に一度降臨する神の使いだと知る。 神子はこの世界の獣と番い子供を作る存在と聞いた陽太は、 「やだ! グイードといる!」 と獣王が住む帝都に行けというグイードの提案を拒否。 この先も共にいたいと伝えると、グイードも渋々だけど嬉しそうに受け入れてくれた。 だが、突如平和は破られる。 突然現れた仮面姿の獅子獣人に拉致された陽太。 気付けば獣国の帝都にある獣王城にいて――? 孤独な狼x単細胞な神子のもふもふファンタジーBL、ハピエン。 11万字完結作です。 【BL大賞参戦中】 【ムーンライトノベルズさんにも投稿してます】

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉

あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた! 弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?

処理中です...