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38-2 仲間外れ作戦
しおりを挟む「せっかくだし、このまま皆で酒でも飲むか!」
ジェイクが楽しそうに言い、給仕の使用人に手を振り合図をした。使用人は頷き、部屋から出たあと、しばらくした後、ワゴンに酒とつまみのようなものを乗せ現れた。
ワインのような果実酒や、これはビールや日本酒!? というような味の酒まで、様々な酒が用意され、なにやら急に宴会のようになってしまった。
しかし、しばらくずっと沈んだ気分だった俺は、こうして皆が一緒に過ごしてくれ、楽しい時間を共にしてくれることに感謝した。
案の定というかなんというか、酒に弱い俺は久々の酒で早々に撃沈していたのだが……。
「おーい、兄貴、大丈夫か? そろそろ部屋に戻るか?」
「んん……もう少し……みんなといたい……ひとり、寂しい……」
「!?」
ふわふわとした気分で、今が楽しくて、ジウシードがいるかどうかも分からないあの部屋にひとり戻るのが寂しかった。
ぼんやりとしながら皆の顔を見詰めていると、なにやら皆が驚いた顔をしている?
「ハハ、皆酔ってんだな? 顔が赤いぞー……意外とみんなも酒弱いのかぁ?」
ぼぉっとしながら呟くと、ジェイクがリョウに声を掛けていた。
「おい、さすがに……ちょっと……じゃないか?」
酒のせいで耳が遠くなっているのか、ジェイクの声が聞こえ辛い。ジェイクに近寄り顔を近付けた。
「お、おい!!」
なにやらジェイクの焦った顔。それがなんだか可笑しくて笑った。
「アハハ、ジェイクが変な顔」
「あ、兄貴、とりあえずこっちで横になれ」
リョウが慌てて俺の肩を掴み、テーブルから離れた場所にある長椅子へと俺を連れて行った。そしてそこに座らせる。背凭れに深く凭れ掛かり、ぼんやりと天井を見上げた。ゆらゆらと天井が揺れている。
「ジウシードはもう俺のこと好きじゃないのかなぁ……」
ぼそりと呟いた言葉が自分自身に突き刺さり、なんだか涙が零れてしまった。
「うっうっ……俺……もう嫌われちゃったのかなぁ……」
酒のせいなのか、ますます涙が止まらなくなり、子供のようにべそべそと泣いてしまう。
「あー、ラ、ラウルを呼ぶか……」
ウェジエがなにやら苦笑しながらそう言って、誰かに指示をしていた。俺はぼんやり周りを眺め、ここにいる皆は相手と幸せそうでいいなぁ、とか考えてしまい、余計にボロボロと涙が溢れた。あぁ……子供じゃあるまいし……なに泣いてんだろ……まあいっか……泣いたらすっきりするかな……。
そんなことを考えながらぼんやりしていると、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
ゆらゆらと身体が揺れている。酒が抜けていないのかふわふわとした気分だ。なにか温かいものに包まれているような気がして、気持ち良さを感じ擦り寄った。
頬を摺り寄せしがみ付く。温かくて気持ちいい。ぼんやりとしていた頭が少しずつ覚醒していく。なにやら暗い廊下を歩いている?
そういえばさっきまで皆と飲んでいたんだよな。もう解散してしまったのか。酔った俺を抱き抱えて運んでくれているのか?
「ジウシード?」
あの場にはいなかったがもしかして迎えに来てくれたのか? そう思うと胸が高鳴り、スリッと頬を寄せた。
「アキラ様、ジウシードではなく申し訳ございません」
その声にハッとし、ガバッと顔を離し見上げた。そこにはラウルが申し訳なさそうな、しかし、なにやら意味ありげな微笑みで俺を見下ろしていた。
「ラ、ラウル!!」
「お目覚めですか? かなり酔われていたようで、リョウ様に呼ばれ、私が部屋までお運びしているところです」
横抱きに抱えられ、どうやら俺はラウルの首元に擦り寄っていたようだ。ひぃぃ。
ラウルはフフッと微笑み、俺の額にキスをしそうな勢いで顔を寄せ呟いた。その吐息が額にかかりドキリとする。
一気に思考がハッキリとし、慌てて身体を離した。
「ご、ごめん!! も、もう大丈夫だから下ろして!!」
「フフ、お気になさらず。まだ足元がおぼつかないでしょう。部屋まではこのままお運び致しますよ」
「い、いや、でも!!」
「暴れると危ないですよ? 大人しく運ばれておいてください」
全く下ろす気配のないラウルは俺を抱えたままスタスタと歩き続ける。そして部屋の扉を開けようとした瞬間、バンッ! と、扉が開き、ラウルは扉に伸ばそうとしていた手を止めた。
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