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36-1 再会

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 ラウルも俺の前に膝を付き、少し辛そうな顔となり真っ直ぐに見詰める。リョウも同様だ。一体どうしたんだ?

「こんな辛い目に遭ったばかりのアキラ様に頼るのは心苦しいのですが、ジウシード様を止められるのはアキラ様しかいないのです……」
「な、なにがあったんだ?」

 毛布に包まり、リョウに支えられながら立ち上がり、部屋のなかにあった椅子に座るよう促される。そしてラウルは小さく息を吐くと話し出した。

「アキラ様が行方不明となられてから、ジウシード様はリョウ様と共に他の二領主様と騎士に手配をし、必死に行方を探されたのですが、そこへアリア様の姿を見たという情報が入り、すぐさま確認するため会いに行かれたのです」

 ジウシードは今回の件全てに母親が関わっているって最初から疑っていたのかな……。

「アリア様は問い詰められ、とんでもないことを言い出したのです」
「な、なにを?」
「アキラ様はもう死んでいる、と」
「え……」
「それを聞いたジウシード様は怒り狂い、アリア様を殺そうとしました」
「!!」
「ウェジエ様とジェイク様がそれを制止したのですが、抑えるだけで精一杯でアリア様を殺そうと我を忘れておられます。暴走した魔力のせいでその場は他の者が近付けないほどの魔力渦となり、アリア様を捕え、その場から離そうにも魔力渦のせいで離れることも叶わないのです」
「そ、そんな……」

 リョウも小さく溜め息を吐き、ラウルの言葉に続いた。

「ウェジエとジェイクがジウシードを抑えてくれている間に、俺とラウルで兄貴を探したんだ。騎士たちに四方散らばってもらい、片っ端から休息小屋をしらみつぶしに調べた。なんとかそれで間に合ったが、おそらくジウシードは今もあの母親を殺そうとしているんじゃないかと思う」
「ジ、ジウシードのところへ行こう!!」

 ジウシードに母親を殺させたくなんかない。いくらあんな酷い母親でも、ジウシードが自分の手で殺めるなんてあってはならないことだ。傷付くのはきっと絶対ジウシード自身だから……。綺麗事でもなんでもいい。これだけは絶対譲れない。国の法で裁かれるのなら構わない。でも、ジウシード自身の手によって母親を殺すことだけは絶対にさせたくない!!

 慌てて立ち上がるが、俺の脚は震え、あちこちに痛みが走り、思わずぐらつく。

「痛っ」
「兄貴!! 無理すんな!!」

 リョウが咄嗟に俺を支えてくれる。そのときなにやら声が聞こえた。

『ラウルさん、聞こえますか?』

 な、なんだ? これは……フェシスの声? 一体どこから? キョロッと見回してもフェシスの姿は見えない。不思議に思っていると、おもむろにラウルが胸元からなにかを取り出した。それは手に乗るほどの小さな球体。ぼんやりとした紫色の光がゆっくりと点滅している。なんだあれ?

 そんな俺の視線に気付いたラウルがフッと笑い、「通信具です」と呟き、そしてその道具に向かい言葉を発した。

「はい、聞こえます。なにかありましたか?」
『ジウシードが消えました』
「「「え!?」」」

 その球体から声がすることに驚いていたが、それよりもその発言に三人同時に驚愕の声を上げた。ジウシードが消えた!? 消えたってどういうことだ!?

「それはどういう意味です?」

 ラウルが冷静に状況確認をする。

『アリア様を殺そうとしていたのはしばらく変わらなかったのですが、それはまあウェジエとジェイクが止めていました。しかし、しばらくしたとき、なにか急にジウシードの表情が変わり、胸を抑え付けながら蹲ったかと思うと、なにかに憑かれたかのように走り出し、そして急に目の前から消えました。おそらくどこかに転移を……』
「転移……」

 ラウルは顎に手をやり考え込んだ。そして瞬時に状況判断をしたのか、フェシスへ再び声を掛ける。

「分かりました。とりあえずこちらはアキラ様を発見しましたので、そちらへと戻ります。アリア様は捕えて幽閉の塔へと投獄しておいてください。ジウシード様はおそらく……まあ、とにかくそちらの後処理は任せますのでよろしくお願いします」
『……分かりました』

 そうやって会話を終了すると、その球体は色を失くし、ただの透明の水晶のようなものとなった。ラウルはその持っていた球体を再び胸元へと戻す。

「とりあえず戻りましょう。アキラ様の治療も行わなければ……」

 ラウルは、自身が治癒魔法を扱えないから、と申し訳なさそうに眉を下げる。そして俺を横抱きに抱き上げた。

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