【完結】異世界転移で落ちて来たイケメンからいきなり嫁認定された件

りゆき

文字の大きさ
上 下
61 / 120

31-1 日本との共通点

しおりを挟む
 お披露目の日以降、ジウシードは明らかに口数が減り、俺を抱くこともなかった。しかし、それは今きっと自分自身に向き合って考えているんだろうな、と思えた。辛そうな表情や無表情ではなく、真剣になにかを考えていそうな表情だったから。
 だから俺は敢えて自分からは声を掛けないようにした。抱かれないことに若干寂しくなってしまったのは内緒だ……いや、うん、ね。

 ジウシードは頭を整理するためなのか、騎士の訓練に混ざって剣を振ったり、なぜか料理をしに厨房へ行ったり……厨房の料理人たちが驚愕の顔をしていた……アハハ……。
 どうやら俺の家で料理をしていたのが楽しかったのか、無心でなにかを行い頭をリセットさせたいのか、黙々と一心不乱に料理をしていた。

 剣を振る姿はさすが異世界ぽいなぁ、と感心し、ジウシードの格好良さに惚れ惚れしていたのだが、料理はさすがに周りの反応が大きすぎて、俺は苦笑するしかなかった。
 しかも、ジウシードの作る料理がまた旨いもんだから、料理人たちが若干悔しそうな顔をしていて笑ってしまった。それでもジウシードは自分の考えることに集中しているのか、料理人の反応に気付いてなさそうだったが……。

 そして、俺はそんなジウシードの姿を見守りつつも、リョウと話をするためにリョウたちが過ごしている部屋へと向かった。
 ラウルに弟と話したいとお願いし案内してもらう。王城のなか、さらにはリョウと一緒だということで、ラウルは同席せず二人きりで話すことを許された。

「ジェイク、お前も出ていけ」
「はぁ!? なんだと!? なんで俺が……」

 そう声を張り上げようとしていたジェイクの肩をポンと掴んだリョウは、なにかを耳打ちした。すると、ジェイクはガバッとリョウに振り向き、またしても真っ赤な顔になり眉間に皺を寄せ怒鳴る。

「お、お前はっ!!」
「なんだ? 良いのか?」
「く、くそっ!」

 ギリギリと歯軋りが聞こえてきそうな程、歯を食いしばりなにやら悔しそうな顔のジェイク。そして、ドカドカと足音を響かせながら扉へと向かった。扉の前で立ち止まると、ぐりんとこちらに振り向き、なぜかビシッと俺を指差す。

「おい! アキラ!! 弟の面倒くらいしっかりみろ!! 性格歪んでるぞ、こいつ!!」
「え?」

 そう叫ばれ、赤い顔のままジェイクは扉を激しく叩きつけるように閉じ去って行った。

「な、なんなんだよ」

 唖然としていると、リョウは笑いながら俺を促した。

「ハハ、気にするな。あいつは馬鹿だから」

 性格歪んでるとまで言われながらも、なんだか楽しそうなリョウ。ジェイクのことを馬鹿だと言いつつ、なんだかんだ気に入ってそうだなぁ、とクスッと笑った。

「なに笑ってんの?」
「え、い、いや、なんでも」

 クスッと笑ったことに気付かれ、じとっと見詰められてしまい焦る。なんだかんだ馬鹿な子ほど可愛い、じゃないが、リョウはジェイクのことがちゃんと好きなんだな、と分かって嬉しくなった……とは言えない……。そんなことを言おうものなら、おそらく倍返しで俺とジウシードのことを弄られるはず! こいつは頭がやたらキレるからこういうとき怖いんだよ! だからなにもなかったことに……相変わらずじとっと見詰められているが……。

「ま、いいや。とりあえず座れよ」
「うん」

 そう促され椅子に座り、対面にリョウも座る。側近が用意してくれていたお茶と茶菓子がテーブルに並んでいる。
 部屋自体は俺たちの部屋と左程変わることはない。間取りが少し違うか? といったくらいだった。テーブルや椅子などの調度品は少し色合いが違ったり、種類が違ったりとはしていたが、上品にまとめられているのは同じだった。

 お互いお茶を一口飲みつつ、話し出す。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

【完結】竜を愛する悪役令嬢と、転生従者の謀りゴト

しゃもじ
BL
貴族の間で婚約破棄が流行し、歪みに歪んだサンドレア王国。 飛竜騎士団率いる悪役令嬢のもとに従者として転生した主人公グレイの目的は、前世で成し遂げられなかったゲームクリア=大陸統治を目指すこと、そして敬愛するメルロロッティ嬢の幸せを成就すること。 前世の記憶『予知』のもと、目的達成のためグレイは奔走するが、メルロロッティ嬢の婚約破棄後、少しずつ歴史は歪曲しグレイの予知からズレはじめる…… *主人公の股緩め、登場キャラ貞操観念低め、性癖尖り目、ピュア成分低めです。苦手な方はご注意ください。 *他サイト様にも投稿している作品です。

俺は好きな乙女ゲームの世界に転生してしまったらしい

綾里 ハスミ
BL
騎士のジオ = マイズナー(主人公)は、前世の記憶を思い出す。自分は、どうやら大好きな乙女ゲーム『白百合の騎士』の世界に転生してしまったらしい。そして思い出したと同時に、衝動的に最推しのルーク団長に告白してしまい……!?  ルーク団長の事が大好きな主人公と、戦争から帰って来て心に傷を抱えた年上の男の恋愛です。

【完結】凄腕冒険者様と支援役[サポーター]の僕

みやこ嬢
BL
2023/01/27 完結!全117話 【強面の凄腕冒険者×心に傷を抱えた支援役】 孤児院出身のライルは田舎町オクトの冒険者ギルドで下働きをしている20歳の青年。過去に冒険者から騙されたり酷い目に遭わされた経験があり、本来の仕事である支援役[サポーター]業から遠退いていた。 しかし、とある理由から支援を必要とする冒険者を紹介され、久々にパーティーを組むことに。 その冒険者ゼルドは顔に目立つ傷があり、大柄で無口なため周りから恐れられていた。ライルも最初のうちは怯えていたが、強面の外見に似合わず優しくて礼儀正しい彼に次第に打ち解けていった。 組んで何度目かのダンジョン探索中、身を呈してライルを守った際にゼルドの鎧が破損。代わりに発見した鎧を装備したら脱げなくなってしまう。責任を感じたライルは、彼が少しでも快適に過ごせるよう今まで以上に世話を焼くように。 失敗続きにも関わらず対等な仲間として扱われていくうちに、ライルの心の傷が癒やされていく。 鎧を外すためのアイテムを探しながら、少しずつ距離を縮めていく冒険者二人の物語。 ★・★・★・★・★・★・★・★ 無自覚&両片想い状態でイチャイチャしている様子をお楽しみください。 感想ありましたら是非お寄せください。作者が喜びます♡

黒豹拾いました

おーか
BL
森で暮らし始めたオレは、ボロボロになった子猫を拾った。逞しく育ったその子は、どうやら黒豹の獣人だったようだ。 大人になって独り立ちしていくんだなぁ、と父親のような気持ちで送り出そうとしたのだが… 「大好きだよ。だから、俺の側にずっと居てくれるよね?」 そう迫ってくる。おかしいな…? 育て方間違ったか…。でも、美形に育ったし、可愛い息子だ。拒否も出来ないままに流される。

金色の恋と愛とが降ってくる

鳩かなこ
BL
もう18歳になるオメガなのに、鶯原あゆたはまだ発情期の来ていない。 引き取られた富豪のアルファ家系の梅渓家で オメガらしくないあゆたは厄介者扱いされている。 二学期の初めのある日、委員長を務める美化委員会に 転校生だというアルファの一年生・八月一日宮が参加してくれることに。 初のアルファの後輩は初日に遅刻。 やっと顔を出した八月一日宮と出会い頭にぶつかって、あゆたは足に怪我をしてしまう。 転校してきた訳アリ? 一年生のアルファ×幸薄い自覚のない未成熟のオメガのマイペース初恋物語。 オメガバースの世界観ですが、オメガへの差別が社会からなくなりつつある現代が舞台です。 途中主人公がちょっと不憫です。 性描写のあるお話にはタイトルに「*」がついてます。

処理中です...