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30-2 ジウシードの気持ち
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晩餐を終え、部屋へと戻るとラウルがお茶を入れてくれ、明日以降部屋から出るときは必ず自分に声を掛けてからだ、と念を押され退出して行った。
そして二人きりになり、応接椅子に並んで座っているジウシードに目をやる。
あれからずっと無言のジウシード。俺の手を握ったり抱き付いたりはあるが、あんなに色々触って来ていたのに、今はキスもなければ触ることすらない……い、いや、触って欲しいとかじゃなく! あんなに触られまくっていたのに、急になくなると心配になるだろ!? って、誰に言い訳してんだって話だが、でもなぁ、やっぱ心配になる訳で……。
「なあ、本当に大丈夫か?」
ジウシードの手を握り、俯くジウシードの顔を覗き込んだ。ジウシードはピクリと身体を震わせ、しかし、俺のほうを向くでもなく俯いたままだった。
「あぁ……大丈夫だ」
「…………ジウシードってさ、本当に国王になりたいの?」
「!?」
驚き目を見開きこちらにガバッと振り向いたジウシード。
そう、これを聞きたかったんだよな……。ジウシードが俺の前に転移してきてからずっと、ジウシードは国王になるためにこうやって頑張っているんだ、と思っていた。だから俺が運命の相手だと知り、好きになろうと努力してくれたんだろうな、とも思っていた。
先程の母親とのやり取りを聞いて、ジウシードが俺に対して運命の相手というだけではない、ということは伝わったし、信じてる。だからそれを疑う気持ちはない。
ただ「国王になるため」ということがどうにも引っ掛かった。
あのとき母親に言われ反論していた台詞。
『俺は領主になりたいと言った覚えはありません』
ジウシードは領主になりたかった訳じゃない……自分自身がなりたくてなった訳じゃなく、母親に乞われ仕方なく領主になったということか? ということは、国王になるのだって本当はなりたくないんじゃ? そう思えて仕方なかった。
「俺は……」
ジウシードは泣きそうな顔を我慢するかのような表情になり、再び俯いてしまった。そんなジウシードの手をさらに力を籠めてぎゅっと握る。
「ジウシード……国王になりたいのかなりたくないのか、今俺に言う必要はない。でも自分自身でどちらを選ぶのかはちゃんと考えろ。ジウシード自身が望むことを。お母さんのためでも領民のためでも別に構わない。ジウシード自身がそれで納得しているなら。でもそうでないなら、別に国王にならなくても良いと思うぞ」
「国王になれなくてもアキラはそれで良いのか?」
ジウシードは少しだけこちらに視線を向け、呟くように言った。まるで叱られた子供が言い訳でもするように。そんな姿がまるで幼子のようで可笑しくもあり、それでいてジウシードにしてみれば、「国王になる」ということはずっと昔から母親に強要され続け、ならなくても良いという選択肢すらなかったのだろうな、と思うと、酷く辛くなった。
「俺はどちらでも構わないよ? 国王になろうがなるまいが、ジウシードはジウシードだろ。俺はジウシードがどちらを選ぼうとも応援するよ」
なるべく明るく言った。俺はどちらだろうが全く気にしない。国王でないならジウシードの傍にいる意味がない、となんて全く思わない。いや、逆に国王なんかなられたらなんか大変そう、とかは思うが……。
「そうか……」
「うん」
ジウシードは俺の手を握り返し、俯いたまま何か考え込むように、再び無言になった。しかし、今、きっと必死に考えているのだろう、ということは分かったため、俺はそれ以上は何も言わなかった。
その夜、ジウシードは俺を抱くことはなく、ただ抱き締めて眠った……。
そして二人きりになり、応接椅子に並んで座っているジウシードに目をやる。
あれからずっと無言のジウシード。俺の手を握ったり抱き付いたりはあるが、あんなに色々触って来ていたのに、今はキスもなければ触ることすらない……い、いや、触って欲しいとかじゃなく! あんなに触られまくっていたのに、急になくなると心配になるだろ!? って、誰に言い訳してんだって話だが、でもなぁ、やっぱ心配になる訳で……。
「なあ、本当に大丈夫か?」
ジウシードの手を握り、俯くジウシードの顔を覗き込んだ。ジウシードはピクリと身体を震わせ、しかし、俺のほうを向くでもなく俯いたままだった。
「あぁ……大丈夫だ」
「…………ジウシードってさ、本当に国王になりたいの?」
「!?」
驚き目を見開きこちらにガバッと振り向いたジウシード。
そう、これを聞きたかったんだよな……。ジウシードが俺の前に転移してきてからずっと、ジウシードは国王になるためにこうやって頑張っているんだ、と思っていた。だから俺が運命の相手だと知り、好きになろうと努力してくれたんだろうな、とも思っていた。
先程の母親とのやり取りを聞いて、ジウシードが俺に対して運命の相手というだけではない、ということは伝わったし、信じてる。だからそれを疑う気持ちはない。
ただ「国王になるため」ということがどうにも引っ掛かった。
あのとき母親に言われ反論していた台詞。
『俺は領主になりたいと言った覚えはありません』
ジウシードは領主になりたかった訳じゃない……自分自身がなりたくてなった訳じゃなく、母親に乞われ仕方なく領主になったということか? ということは、国王になるのだって本当はなりたくないんじゃ? そう思えて仕方なかった。
「俺は……」
ジウシードは泣きそうな顔を我慢するかのような表情になり、再び俯いてしまった。そんなジウシードの手をさらに力を籠めてぎゅっと握る。
「ジウシード……国王になりたいのかなりたくないのか、今俺に言う必要はない。でも自分自身でどちらを選ぶのかはちゃんと考えろ。ジウシード自身が望むことを。お母さんのためでも領民のためでも別に構わない。ジウシード自身がそれで納得しているなら。でもそうでないなら、別に国王にならなくても良いと思うぞ」
「国王になれなくてもアキラはそれで良いのか?」
ジウシードは少しだけこちらに視線を向け、呟くように言った。まるで叱られた子供が言い訳でもするように。そんな姿がまるで幼子のようで可笑しくもあり、それでいてジウシードにしてみれば、「国王になる」ということはずっと昔から母親に強要され続け、ならなくても良いという選択肢すらなかったのだろうな、と思うと、酷く辛くなった。
「俺はどちらでも構わないよ? 国王になろうがなるまいが、ジウシードはジウシードだろ。俺はジウシードがどちらを選ぼうとも応援するよ」
なるべく明るく言った。俺はどちらだろうが全く気にしない。国王でないならジウシードの傍にいる意味がない、となんて全く思わない。いや、逆に国王なんかなられたらなんか大変そう、とかは思うが……。
「そうか……」
「うん」
ジウシードは俺の手を握り返し、俯いたまま何か考え込むように、再び無言になった。しかし、今、きっと必死に考えているのだろう、ということは分かったため、俺はそれ以上は何も言わなかった。
その夜、ジウシードは俺を抱くことはなく、ただ抱き締めて眠った……。
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