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29-1 ジウシードの母
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お披露目が終わった後、再び部屋へと戻り、ひと息付こうとお茶が用意されていた。そのときなにやら扉のほうから騒がしい声が響いた。
「お待ちください!!」
その声に皆が反応し、扉のほうを見る。ラウルの声だ。
「なんだぁ?」
ジェイクが怪訝な顔をし、声を上げた。それと同時にバーンッ! と、勢い良く扉が開き、ズカズカと勢い良く入って来た人物。なにやらスレンダーな赤いドレスを着こなしたおばさん……いや、おばさんは失礼か。貴族のような身分が高そうな女性だ。歳は取っているが、若い頃はさぞ美人だったんだろうという顔。ちょっと性格キツそうだが……。
赤い髪を綺麗に結い上げ、茶色の瞳の女性……なんか誰かに似てる?
俺とリョウ以外の四人は「あっ」と言った顔となり、さらに若干嫌そうな顔に……なんだ? 誰なんだ?
ジウシードに至っては一気に冷たい表情に……ど、どうしたんだ?
「お待ちください、アリア様。ここは領主様と伴侶様以外は立ち入り禁止です」
「ラウル! この無礼者!! 私はジウシードの母なのですよ! 私を咎める者がいて良い訳がないでしょう! 下がりなさい!!」
「し、しかし……」
ジウシードの母!? 母って言ったか!? え、あの厳しかったとかいう母親!? た、確かに厳しそうではあるな……とか思ってしまった。
チラリとジウシードを見ると、相変わらず冷たい表情……それどころか感情を失くしたかのような氷のような顔……。なんだかそれが酷く胸を苦しくさせた。
「ラウル、いい。下がれ」
「ジウシード様……分かりました」
ラウルは少し心配そうな表情をしたが、お辞儀をし後ろへと下がった。
「母上、なんの御用でしょうか」
ラウルが頭を下げ後ろへ下がったことを、この女性はまるで汚いものでも見るかのような顔で睨み、そしてジウシードを見た。
「ジウシード、あれはなんですか?」
「なんのことでしょう」
アリアと呼ばれたジウシードの母親はジウシードを睨み付けていた視線を、俺へと向けた。そして持っていた扇子をビシッとこちらに向け俺を差す。
「これが伴侶だと言うの!? 男ではないの!! 跡継ぎが出来ないではないの!! しかもこんなみすぼらしい華のない男を!!」
グサッ!! みすぼらしいって!! みすぼらしいって……ひ、酷い……そ、そりゃこのなかのイケメンズのなかじゃ、めちゃくちゃ平凡だが……そんなこと俺自身が一番分かってるっつーの!! 他人に言われたら余計傷付くわ!!
そんな俺に気付いたのかリョウが俺の横へと立って、おばさんを睨んでいた。あ、おばさんて言っちゃった……ま、いっか、あのおばさんも超絶失礼なこと言ってるしな。
「跡継ぎなど必要ないでしょう。領主になる者は実力でのし上がるのです。血の繋がりなど関係ない」
「お前の子なら次の領主に相応しいに決まっているでしょう!!」
「相応しいとか相応しくないとか、それは我々が決めることではありません。領民が決めることです」
言い切ったジウシードにおばさんは少したじろいだ。しかし、再び俺を睨んだかと思うと、またしても扇子で差し声を上げる。
「そうだとしても、お前の伴侶があんな貧相な男など許される訳がない!! もっと相応しい人間がいるはずです!! 運命の相手をきっと間違えたのよ!!」
こ、今度は貧相な男って……いい加減腹立ってきた……そこまで言われる筋合いないっつーの。リョウも明らかに苛立って来ているようで、兄思いの良い奴だな、とかちょっとうるっとしちゃったよ。
「それこそ、貴女に言われる筋合いはありません。俺の伴侶はアキラだけです。運命の相手、それだけじゃない。俺がアキラを選んだんです」
「ジウシード……」
「お待ちください!!」
その声に皆が反応し、扉のほうを見る。ラウルの声だ。
「なんだぁ?」
ジェイクが怪訝な顔をし、声を上げた。それと同時にバーンッ! と、勢い良く扉が開き、ズカズカと勢い良く入って来た人物。なにやらスレンダーな赤いドレスを着こなしたおばさん……いや、おばさんは失礼か。貴族のような身分が高そうな女性だ。歳は取っているが、若い頃はさぞ美人だったんだろうという顔。ちょっと性格キツそうだが……。
赤い髪を綺麗に結い上げ、茶色の瞳の女性……なんか誰かに似てる?
俺とリョウ以外の四人は「あっ」と言った顔となり、さらに若干嫌そうな顔に……なんだ? 誰なんだ?
ジウシードに至っては一気に冷たい表情に……ど、どうしたんだ?
「お待ちください、アリア様。ここは領主様と伴侶様以外は立ち入り禁止です」
「ラウル! この無礼者!! 私はジウシードの母なのですよ! 私を咎める者がいて良い訳がないでしょう! 下がりなさい!!」
「し、しかし……」
ジウシードの母!? 母って言ったか!? え、あの厳しかったとかいう母親!? た、確かに厳しそうではあるな……とか思ってしまった。
チラリとジウシードを見ると、相変わらず冷たい表情……それどころか感情を失くしたかのような氷のような顔……。なんだかそれが酷く胸を苦しくさせた。
「ラウル、いい。下がれ」
「ジウシード様……分かりました」
ラウルは少し心配そうな表情をしたが、お辞儀をし後ろへと下がった。
「母上、なんの御用でしょうか」
ラウルが頭を下げ後ろへ下がったことを、この女性はまるで汚いものでも見るかのような顔で睨み、そしてジウシードを見た。
「ジウシード、あれはなんですか?」
「なんのことでしょう」
アリアと呼ばれたジウシードの母親はジウシードを睨み付けていた視線を、俺へと向けた。そして持っていた扇子をビシッとこちらに向け俺を差す。
「これが伴侶だと言うの!? 男ではないの!! 跡継ぎが出来ないではないの!! しかもこんなみすぼらしい華のない男を!!」
グサッ!! みすぼらしいって!! みすぼらしいって……ひ、酷い……そ、そりゃこのなかのイケメンズのなかじゃ、めちゃくちゃ平凡だが……そんなこと俺自身が一番分かってるっつーの!! 他人に言われたら余計傷付くわ!!
そんな俺に気付いたのかリョウが俺の横へと立って、おばさんを睨んでいた。あ、おばさんて言っちゃった……ま、いっか、あのおばさんも超絶失礼なこと言ってるしな。
「跡継ぎなど必要ないでしょう。領主になる者は実力でのし上がるのです。血の繋がりなど関係ない」
「お前の子なら次の領主に相応しいに決まっているでしょう!!」
「相応しいとか相応しくないとか、それは我々が決めることではありません。領民が決めることです」
言い切ったジウシードにおばさんは少したじろいだ。しかし、再び俺を睨んだかと思うと、またしても扇子で差し声を上げる。
「そうだとしても、お前の伴侶があんな貧相な男など許される訳がない!! もっと相応しい人間がいるはずです!! 運命の相手をきっと間違えたのよ!!」
こ、今度は貧相な男って……いい加減腹立ってきた……そこまで言われる筋合いないっつーの。リョウも明らかに苛立って来ているようで、兄思いの良い奴だな、とかちょっとうるっとしちゃったよ。
「それこそ、貴女に言われる筋合いはありません。俺の伴侶はアキラだけです。運命の相手、それだけじゃない。俺がアキラを選んだんです」
「ジウシード……」
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