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27-1 お披露目へ
しおりを挟む「あー、ハハ、ま、色々あってね。速攻でやっちゃった訳だ」
「やっ……」
兄弟のそういう話は聞きたくねー……そう乾いた笑いを浮かべていると、リョウはニヤッと笑った。
「兄貴はやたらと時間がかかったんだなぁ。ま、兄貴のことだから色々細かいこと考えてたんだろうけど。よくあの重い奴がそんな長い時間我慢したな」
「うっ、い、いや、だって、異世界なんかに行くのに、色々処理しないといけないことがあるだろうが! お前だって仕事は!? 家はどうしたんだよ!? そもそも俺に連絡しろよ!!」
「あー、仕事はちょうど退職したところだったし、家も引き払って荷物は実家に送ったところだったんだ。連絡する間もなくやっちゃったもんでね」
「は!? 仕事辞めたってなんでだよ!?」
「あー、まあかなりのブラックだったもんでね。身体壊しそうになったから逃げた」
「そ、そうなのか……お前が過労死とかならなくて良かったけど……」
「うん。ま、そういうことでそっちに帰ろうかと思ってたときに、あいつが落ちてきた」
そう言ってチラリとジェイクを見たリョウ。ジェイクは未だにジウシードとやいやい言い合っている。ハハ。
「んで、喧嘩になった」
「は?」
「そんで、売り言葉に買い言葉で……まあ、やっちゃった訳だ」
「…………」
そんなんでいいのか!! 選定の儀!!
「売り言葉に買い言葉って……そ、そんなんでお前……その……い、入れ……ごにょ」
「ん?」
そんな喧嘩腰に「じゃあやったらぁ!」みたいなノリで掘られるってどうよ!? 男としてそこはこだわったほうが良いんじゃないのか!?
「お、お前はその……良かったのか?」
「んん? なにが?」
「い、いや、その……お、男の沽券とかさ……」
俺はまあ見た目的にも性格的にも、お世辞にも男らしいとは思われないタイプだが、リョウは違う。精悍なイケメンの上に、気が利いて優しく、性格もサバサバしていて男らしい。しっかり者だし頭もいい。両親が死んだときにまだ高校生だったリョウが、取り乱すこともなく冷静に色々対処してくれていたから、俺も哀しみに暮れることなく生きてこられた。
そんなリョウがまさか掘られるなんて思ってもみなかったし……。女子にもモテモテだったしな……。
「男の沽券……」
そんなことを悶々と考えつつチラリと視線をやると、目を見開き驚いた顔のリョウはプッと噴き出した。
「ま、まさか、兄貴……ブフッ……俺が掘られたと思ってんのか?」
笑いを堪え切れないといった様子で、小刻みに肩を揺らしながら言った。
「え!? ち、違うのか!?」
「あ、もしかして兄貴は……ま、そりゃそうか。あれが相手じゃな」
チラリとジウシードに目をやったリョウが苦笑した。そして再び俺を可哀想な奴を見るような目で見る。その意味が分かり、カァァアと顔が熱くなる。
「い、いや、え!? お、お前は違うの!? あんないかついジェイク相手に!?」
「フッ。俺が黙って抱かれると思ってんのか? あれはアホだからな。言い負かした」
「えぇぇ!?」
まさかのジェイクが抱かれる側!? ま、マジで!? あんな顔して!? あ、あんないかつくてデカくて俺様みたいな顔して!? い、いや、偏見か? そもそも入れるのがどっちでも良い訳!? ん? でもそういやジウシードが一瞬悩んで……はないが、「俺は入れたい」とか言ってたっけ? どっちでも良かった訳か……いや、今はまあそんなことどうでもいいんだが……。
あまりの信じられない気持ちでまじまじとジェイクを見詰めてしまい、それに気付いたジェイクがこちらを睨んだ。
「なんだこら! なに睨んでやがる」
「え、い、いや、睨んでないし!」
逆に睨まれ、あまりの鋭い眼にひぃぃとなる。こ、怖いわ!! この顔で抱かれてるとか全く想像出来ん!
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