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21-2 舌打ちの応酬

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「さて、今後の話だが……」

 ひとしきり食事を終え、まったりとお茶を飲んでいるとジウシードが立ち上がり、俺の前へとやって来た。

 そして手を取ると、立ち上がるように促され、応接椅子へと手を引かれる。
 そのまま長椅子に座ったジウシードの横に座ろうとすると、腰をガシッと掴まれビクッとしたと同時に勢い良く引かれる。
 バランスを崩し、そのままジウシードの膝の上に……。

「ちょっ!」

 膝の上に横抱きに抱えられ、太腿をさわっと撫でられゾワッとしてしまう。

「んんっ」

 思わず声が漏れてしまい、ラウルとメイドさんの視線が刺さり、ひぃぃいとなる。

「ジ、ジウシード!!」
「なんだ?」

 なんだじゃねー!!

「ふ、普通に座るから!!」
「ラウルとメイドが気になるのか? 気にしなくていい」
「だから気にするっつーの!!」

 メイドさんは顔を赤らめながらも、目を伏せつつ、応接椅子のテーブルへとお茶を用意してくれ、その後はラウルに下がって良いと指示され、そそくさと出て行った。

 ラウルは応接椅子の横に立ったまま……。

「これからの話だが……」

 がっしりと腰をホールドされ、さわっと誓約の証に指を這わせつつ、こめかみにキスをされながら言われるが……話に集中出来んわ!!

「や、やめっ……そこ、触るな!! ……あん」

 ひぃぃい!! ラウルの前なのにぃい!!

「アホなのは二人きりのときにしてください。今後の話をさっさとしていただけますか」

 超絶冷たい視線を投げ掛けられながら、めちゃくちゃ冷たい声で言われ……ビュオオオと吹雪いていそうな冷気が漂っていました……。

 しかしジウシードはそんなラウルに慣れているのか意にも介さずといった表情。

「ちっ」

 おぃぃぃいい!! 舌打ちするなよぉ!! これ以上ラウルを怒らせないでくれー!!

「ちっ」

 ラウルまでもが舌打ちし出した!! なんだよこれ!! 二人してちっちっちっちって繰り返してやがる……舌打ちの応酬……いや、なんなんだよ……これ。

「だあっ!! 鬱陶しい!!」

 勢い良く立ち上がり叫んだ。ジウシードもラウルもビクッと固まり俺を見る。

「ジウシード!! 話しはちゃんとする!! 今はスキンシップ禁止!!」
「わ、わかった」
「ラウル!! ジウシードは俺が後で言い聞かせるから、今は今後の話をよろしく!!」
「は、はい」

 ぜーはー言いながら言い切ってやった!! ふん! 俺だって意見はちゃんと言える大人なんだよ! な、なんかその主張が子供みたいだが……そこはまあ……置いといて。茫然とする二人にドヤ顔。フフン、スッキリした。

 呆気に取られていた二人は「プッ」と噴き出し、ジウシードは愛おしそうな目を向け、ラウルは目を伏せながら優し気に微笑んだ。それは初めてみる優しい顔で、意外に思ってしまいまじまじと見詰めていたらジウシードが拗ねました。しかし、「スキンシップ禁止」のせいで、拗ねながらも手は宙を彷徨い、ちょっと笑いそうになってしまった。


「それでは今後の話をさせていただきますが、アキラ様はこの国の話は……」

 ラウルがチラリとジウシードを見た。ジウシードは頷き、日本にいたときに大体の説明はした、ということをラウルに伝えた。ラウルは頷き、そしてもう一度この国の話を簡単にした後、今後の話に進む。

「アルヴェスタ王国の三領、ラルストン、アヴァルガン、ナダスバウド。これらの領主が受ける国王選定の儀。その最初の試練が『運命の相手』を見付けること。そこから始まるのですが、今後その運命の相手と共に別の試練が始まります」
「別の試練……それはどんな……?」

 なんか命懸けとかとんでもないものだったらどうしよう、という若干の不安が。

「それは分かりません。毎回試練の内容は極秘のため、我々には知らされません」
「そ、そっか……」

 そりゃそうか……試練の内容を知っていたら対策とか出来るかもしれないもんな。そうなると公平性に欠けるのかもしれない。

「大丈夫だ。俺とアキラならどんな試練でも問題ない。アキラのことは俺が必ず守るしな」
「え、いや、う、うん……」

 ジウシードは隣に座る俺の頭をクシャッと撫でたかと思うと、そのままスススッと頬に手が降りて来ようとしたところを、ラウルにビシッと手刀で払い除けられていた。ギロッとラウルを睨んでいるが、今はスキンシップなしの約束だしな、仕方ない……ハハハ……。


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