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16-1 ついに迎えるその日
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「あとでたっぷりと」の言葉の通り、風呂で散々愛撫されまくりぐったりとし、疲れを取るために風呂に入っているはずが、疲れるために入っているような……なんだか訳が分からなくなった……。
しかし、その疲労感は仕事で疲れるのとは全く違うらしく、添い寝も相まってか、翌日はそれなりに好調だったりしてジウシードにはニヤリとされ、ぐぬぬとなるのだった。
今後のことはまず会社に相談した。諸事情で早めに退職したい旨を伝えると、案の定それは困ると言われ、どうしたものかと相談を重ねた結果、田中が俺の仕事を引き継いでくれると言ってくれ、かなり譲歩してくれ有休なども利用し、残り二週間で退職することが決まった。
「いきなり退職とはなぁ……彼女絡みか?」
田中にニヤッとされながら聞かれ、なんと答えたら良いのやらで曖昧に返事をした。
「うーん、まあそんなところかな……ちょっと、その、遠くに引っ越すことになってさ」
「遠くってどこに?」
「いや、えーっと海外……?」
「なんで疑問形なんだよ」
そう言いながら苦笑する田中。
「ハハ……すまん、連絡が取れないところに引っ越すから、きっちり引き継ぎするよ。悪いな……」
「連絡取れないところってどんなだよ!?」
いまどきそんなところあるか!? と驚いた顔。いや、まあ、そうだよな……普通いまどき海外でも簡単に連絡取れるし……。どんだけ辺鄙な土地なんだよ、と思うよなぁ。でも本当にもう二度と連絡は取れないだろうしな……。そう思うと少ししんみりしてしまった。
大学を卒業してから就職した会社だ。それなりに長く勤めていると愛着もある。仕事は忙しかったがブラックではない会社だと思っていたし、同僚たちも良い奴が多かったし、上司もそれなりには良い人たちだった。
「な、なんだ?」
若干うるっとしながら田中の顔を見詰めていたら、思い切り引かれた。ま、そうですよね。
「いや、なんでもない。そういうことだからよろしく」
「お、おう」
たじろぎながらも、なんだかんだと田中は俺の仕事を引き継いでくれた。良い同僚を持って幸せ者だよ。
家のことについては両親が死んだときにお世話になった弁護士、原田さんに連絡を取る。元々父親とは親友と呼ばれる仲で、俺や弟も子供の頃からお世話になっていたのだ。そんな原田さんだからこそ信頼していた。
弟と連絡が取れないため、このまま家を放置していくのも問題がある。従って俺の全財産を原田さんに預け、そこから家を管理してもらい、弟を探してもらい連絡が取れ次第、弟に相続させる。そして普段家の様子は近所のおばあちゃんに見に行ってもらうことにした。
原田さんにもおばあちゃんにも、一体どこへ行くのか、なぜ連絡が取れなくなるのか、とかなり心配をされたが、あれこれ理由をつけて、なんとか納得してもらった。
ちなみに家のなかの物は両親が死んだときに、遺品整理でそれなりには片付いていた。だから、今現在家に残っているものはそれほど重要なものなどはないはず。父親の書斎の物だけはなんだかよく分からん物ばかりだったので放置しているが、最終的に弟が戻らないのなら処分してくれ、と頼んだ。
あとは弟だ。何度もスマホに連絡を入れるが一切繋がらない。生きているのか死んでいるのかすら分からん。いや、俺に連絡が来ないということは生きてはいるんだろうけど。
とりあえず俺がこの世界を離れるまでは連絡し続けるしかないか……。一体なにやってんだか……スマホに出ろよな。
諸々の処理が終わるまでの間、ジウシードが「アキラの住む世界を見てみたい」と訴えられ、仕方なく休日に外出することになった。
初めて見る外の世界にジウシードは目を輝かせ、「あれはなんだ?」「これはなんだ?」とあちこち興味を示し聞いて来る。それが可愛く思え、微笑ましく眺めながら色々説明していると、なんだか異常に視線を感じ、改めて周りを見ると、とんでもなくジウシードが目立っていた……。
しかし、その疲労感は仕事で疲れるのとは全く違うらしく、添い寝も相まってか、翌日はそれなりに好調だったりしてジウシードにはニヤリとされ、ぐぬぬとなるのだった。
今後のことはまず会社に相談した。諸事情で早めに退職したい旨を伝えると、案の定それは困ると言われ、どうしたものかと相談を重ねた結果、田中が俺の仕事を引き継いでくれると言ってくれ、かなり譲歩してくれ有休なども利用し、残り二週間で退職することが決まった。
「いきなり退職とはなぁ……彼女絡みか?」
田中にニヤッとされながら聞かれ、なんと答えたら良いのやらで曖昧に返事をした。
「うーん、まあそんなところかな……ちょっと、その、遠くに引っ越すことになってさ」
「遠くってどこに?」
「いや、えーっと海外……?」
「なんで疑問形なんだよ」
そう言いながら苦笑する田中。
「ハハ……すまん、連絡が取れないところに引っ越すから、きっちり引き継ぎするよ。悪いな……」
「連絡取れないところってどんなだよ!?」
いまどきそんなところあるか!? と驚いた顔。いや、まあ、そうだよな……普通いまどき海外でも簡単に連絡取れるし……。どんだけ辺鄙な土地なんだよ、と思うよなぁ。でも本当にもう二度と連絡は取れないだろうしな……。そう思うと少ししんみりしてしまった。
大学を卒業してから就職した会社だ。それなりに長く勤めていると愛着もある。仕事は忙しかったがブラックではない会社だと思っていたし、同僚たちも良い奴が多かったし、上司もそれなりには良い人たちだった。
「な、なんだ?」
若干うるっとしながら田中の顔を見詰めていたら、思い切り引かれた。ま、そうですよね。
「いや、なんでもない。そういうことだからよろしく」
「お、おう」
たじろぎながらも、なんだかんだと田中は俺の仕事を引き継いでくれた。良い同僚を持って幸せ者だよ。
家のことについては両親が死んだときにお世話になった弁護士、原田さんに連絡を取る。元々父親とは親友と呼ばれる仲で、俺や弟も子供の頃からお世話になっていたのだ。そんな原田さんだからこそ信頼していた。
弟と連絡が取れないため、このまま家を放置していくのも問題がある。従って俺の全財産を原田さんに預け、そこから家を管理してもらい、弟を探してもらい連絡が取れ次第、弟に相続させる。そして普段家の様子は近所のおばあちゃんに見に行ってもらうことにした。
原田さんにもおばあちゃんにも、一体どこへ行くのか、なぜ連絡が取れなくなるのか、とかなり心配をされたが、あれこれ理由をつけて、なんとか納得してもらった。
ちなみに家のなかの物は両親が死んだときに、遺品整理でそれなりには片付いていた。だから、今現在家に残っているものはそれほど重要なものなどはないはず。父親の書斎の物だけはなんだかよく分からん物ばかりだったので放置しているが、最終的に弟が戻らないのなら処分してくれ、と頼んだ。
あとは弟だ。何度もスマホに連絡を入れるが一切繋がらない。生きているのか死んでいるのかすら分からん。いや、俺に連絡が来ないということは生きてはいるんだろうけど。
とりあえず俺がこの世界を離れるまでは連絡し続けるしかないか……。一体なにやってんだか……スマホに出ろよな。
諸々の処理が終わるまでの間、ジウシードが「アキラの住む世界を見てみたい」と訴えられ、仕方なく休日に外出することになった。
初めて見る外の世界にジウシードは目を輝かせ、「あれはなんだ?」「これはなんだ?」とあちこち興味を示し聞いて来る。それが可愛く思え、微笑ましく眺めながら色々説明していると、なんだか異常に視線を感じ、改めて周りを見ると、とんでもなくジウシードが目立っていた……。
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