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8-2 ケツ穴は大事

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「し、死ぬ!!」

 バシバシと目の前のものを叩き暴れると、俺を締め付けていたものが緩んだ。そして、額にチュッと音を立て、何かが触れる。

「アキラ、おはよう」

 耳元で囁かれた低くて良い声にぞわりとする。そして俺の思考は一気に冷静になり、慌ててガバッと身体を離すと、そこには目の前で嬉しそうな顔のジウシードがいた。

「!? な、なんで!?」
「? どうした?」

 え? あれ? 確か昨日寝たときは後ろを向いてたよな? なんで今向かい合ってんの!?

「あ、あのさ、なんで……その……向かい合って……」
「ん? アキラが寝返りを打ってそのまま俺に抱き付いて来た」
「!!」

 ひぃぃ!! 恥ずっ!! 自分から抱き付いた挙句、ずっとぐりぐり顔を埋めていた訳か!?

「可愛かった」
「ひぃぃ!!」

 なにやら朝から熱っぽい視線を向けられたかと思うと、案の定俺の股間にぐいぐいとなにかが当たっているではないか!!

 慌ててベッドから飛び降りると、俺は急いで出勤準備に入った。ん? なんか昨夜着た部屋着と違うような? 気のせいか? おっと、そんなことを考えている時間はない!!

 慌てて朝食を摂り出勤する。ジウシードは昨夜の説明のおかげか、今朝は余裕の表情で手を振って見送っていた。な、なんか……いや、まあ、うん。考えるな。


 しっかしなんだ、今朝はやたらと調子がいい。ぐっすり寝て気分爽快! やっぱ人肌がいいのか? 温かくて気持ち良かったな……、っていやいや、べ、別にジウシードと寝ることを喜んでいる訳ではない!!
 な、なんというか久しぶりだったから! 人肌ってこんな気持ち良かったっけ、っていう久しぶりの感覚にちょっと感動しちゃっただけだから!

 しかしそれにしても気持ち良かった……。なんか身体がやたらとスッキリ!!

 おかげでこの日一日は久しぶりに気分爽快で仕事が捗った! 何年かぶりの定時上がりで帰ることが出来たのだ!!

 ルンルンで帰宅すると、家の玄関先になにやら赤いものがゆらゆらと……んん!?

 急いで家に戻ると玄関先にジウシードの姿が!! しまった!! 家から出るなって言ってなかった!! 近所のおばあちゃんとなんか喋ってるー!!

 慌てて駆け寄ると俺に気付いたジウシードが満面の笑みになった。うぐっ、可愛いなおい。

「アキラ、おかえり」
「あ、あぁ、ただいま」
「あらぁ、アキラちゃん、おかえりー」
「あ、うん、ただいま、おばあちゃん」

 ご近所に住んでいて、幼い頃から顔見知りのおばあちゃん。両親ともにおばあちゃん夫婦とも仲が良かったからか、両親が死んだあともずっと俺のことを気に掛けてくれている優しいおばあちゃんだ。いつもよりさらに一層にっこにこだな……。

「えっと……ふたりともなにやってたの?」

 おそるおそる聞いてみる。ジウシードのやつ、なんか変なこと言ってないだろうな。

「お喋りしてただけよぉ。アキラちゃん、こんなイケメンさんと同居し始めたんですってねぇ。赤い髪がかっこいいわねぇ。バンドマンさんなのかしらぁ?」
「え、あ、あー、そうそう、弟の友達でね、バンドやってんの。で、金がないからって俺の家に居候してんのよ」
「そうなのねぇ、大変ねぇ。これおすそ分けだから食べてちょうだい。これからおばあちゃんがご飯作ってあげるからねぇ」

 そう言いながらおばあちゃんはジウシードの腕をすりすりと撫でていた。おそらく頭を撫でたかったのだろうが……届かなかったんだな。おばあちゃん、ちょっと背伸びしてプルプルしてるし……。

 にこにこしたおばあちゃんは手を振りながら去って行った。


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