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8-1 ケツ穴は大事

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「一緒に寝たい」
「はぁ!? 男ふたりなんて狭いから嫌だ!! 弟の部屋にベッドがあるからそれで寝ろ!!」
「嫌だ。これから俺を知って行ってくれると約束したじゃないか」
「うぐっ」

 ジウシードを知る、ということと、一緒に寝るということがイコールになるとは思えないのだが!?

 しかししょんぼりワンコに俺は負けた……。自分よりもなにもかもがデカい男となぜか同じベッドに……ちーん。

 せ、せまっ。背後から抱き締められる形ですっぽりとジウシードの懐に収まった俺。な、なんだかなぁ。ま、まあ弟と一緒に寝たこともあるしな! いや、こんな大人になってからはないが……。しかも自分よりデカいやつと寝たことなんてないが……。

 今まで付き合ったことのある女も自分よりは圧倒的に小さかったしな……今から思えば、俺って小柄な女がタイプだったのかも?
 自分の背がそれほど高くもない上に童顔で毛も薄くアレも小さい。成績も運動神経も悪くはないがまあ普通。なにもかもが並……コンプレックスの塊か。そんな俺だから無意識に小柄で可愛らしい女の子を好きになっていたのかもな……。

 弟は精悍な顔付きのイケメンで背も高く、成績も運動神経も良かったから、そりゃあ非常にモテていた。ジウシードはそんな弟とよく似ているかもしれない……いや、見た目とかではなく。なんというかコンプレックスを刺激されるんだよな……。

 チラリと背後に視線をやると、俺の動きに気付いたのか、ジウシードが瞑っていた目を開け微笑んだ。
 そのあまりにも優し気な微笑みにドキリとする。こいつはなんでこんな初対面の男にそんな優し気な顔が出来るんだ……。しかも俺はこんなに拒絶しているのに……。

 ただ国に帰りたいからか……。そりゃそうだよな……。俺と結ばれないと帰れないんだから、今このときだけでも俺を好きなフリをして結ばれたら帰ることが出来るんだ。それまでの間くらいなら演技でもなんでもするか……。

 なんだか胸がギシリと痛んだ……なんだ? なんでこんな胸が痛くなる? いやいやいや、胸が痛くなる必要なんてないだろ。そんなの俺がジウシードの立場でもそうなるだろ。後は俺が受け入れられるかどうかってだけだ。…………いや、無理!!

 いくら帰るためとはいえ、俺になんのメリットもないよな!? ケツ穴差し出した挙句、異世界に連れて行かれるのなんて遠慮する! ん? ということは、ケツ穴だけ差し出せばとりあえずジウシードひとりで国に帰ることも可能なの……か? いや、ちょっと待て! ケツ穴が一番大事だろ!! 早まるな!!

 そんなことを悶々と考えていたのだが、なんせ昨夜の徹夜のせいで瞼はどんどん重くなる。そして、ジウシードの体温が高いのか、全身湯たんぽに包まれたかのような気持ち良さ……。しかも俺よりもデカい身体のジウシードのおかげで、頭のてっぺんから足先まですっぽりと俺を包みこんでくれる安心感……ほっこり。

 人肌って気持ちいいぃ……最近ご無沙汰で忘れてたよ……こんな気持ち良さなら、一緒に寝るのもありかもしれない……いや、ほ、絆されては駄目だ……いや、でも、本当に気持ちいいなぁ……も、今はいいかぁ……明日、考えよ…………ぐぅ。



 んん……はぁあ……なんだぁ? なんか気持ちいいぃ……んはっ……んん……あ、あん、はっ……ん、んんんっ!! ハァハァ……な、なんだろ……めちゃくちゃ気持ち良かっ……た…………ぐぅ……



 あぁ、ぬっくい……気持ちいいな……なんだっけこれ……

 ぐりぐりと顔を擦り付け、温かく安心感のあるものにしがみつく。はぁぁ、落ち着く……。


『ジリリリリ!!』


 そのときスマホのアラームが鳴りビクッとする。あぁ、起きたくねー……このまま眠り続けたい……。と、ぐりぐりしていると、ふと我に返る。ん? このぐりぐりしているやつはなんだ?

 ぐりぐりしていたのをピタッと止めると、ぎゅうぅぅっと背中と後頭部を押され、締め付けられる。うぐっ。く、苦しい!! 死ぬ!!

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