異世界転移で落ちて来たイケメンからいきなり嫁認定された件

４－１ 年下イケメンの伴侶

「そもそもさ、その儀式って帰って来られなかった人とかいない訳？」

　ひとしきり笑った後、ジウシードも落ち着きを取り戻し、改めて疑問に思ったことを質問してみる。

　毎回儀式のたびに運命の相手として無理矢理手籠めにされる訳だろ？　そんなの嫌がる相手もいるんじゃないのか？　というのが正直な感想だ。いや、こんな超絶美形の男が相手なら女の子なら誰でも落ちるのか？

　チラリとジウシードに目をやると、顎に手をやり考える仕草をしているが、これまた色気がありますな！　伏せる目元は長い睫毛で影を落としている。すっきりとした輪郭に、鼻筋も通り、毛穴のなさそうな張りのある肌。薄い唇も潤っていて艶めかしい……って、なにじっくり観察してんだ！！

　伏せていた目がこちらを見た瞬間、バチッと視線がぶつかり心臓が跳ねた。ヤバい、ガン見していたことがバレた！

「フッ、なにをそんなに見詰めているんだ？　俺と結ばれる気になったのか？」
「いや！　ち、違うから！！」

　ニヤッと笑ったジウシードは焦る俺に笑いつつ、話を戻す。

「まあ今は違うということにしておいてやる」
「くっ」
「ハハ、で、今まで戻らなかった領主がいないのか、という話だが……おそらくいないな。そんな領主がいたら記録に残っているだろうし、今現在の領地が減っているだろう。今もまだ三領は健在だからな」

　まあ、そりゃそうか。さっきジウシードが言っていたように、戻らない領主がいたなら、領主のいなくなった地は他の二領に吸収されてしまうんだろう。ということは、やはり戻らなかった領主は1人もいない、と……。

「さっき異世界から連れて来たこともある、とか言ってたけど……それって結ばれたら一緒に帰還するってこと？」
「あぁ、もちろんだ。運命の相手だからな。その相手は領主の伴侶となるのが通例だ」
「は、伴侶！？」
「ん？　なにを驚く。当然だろう」
「い、いや！　驚くだろうが！　伴侶って……女の子ならいざ知らず、男相手でも伴侶なのか！？」
「もちろん」
「…………マジか」
「マジだな」

　唖然としているとまたしてもじりじりと前のめりに寄って来るジウシード。後ろに仰け反りながら顔面をベチッと抑えつけ、グイッと押した。

「それって跡継ぎが出来ないじゃないか。良いのか、それで！？」

　男同士なら跡継ぎを産むことなど出来ない。

「なんだ、そんなことか」

　ジウシードは顔面を押す俺の手首を掴み、掌をペロリと舐めた。

「ひっ。な、なにしやがる！」

　生暖かい舌が俺の掌を這った瞬間、ぞわりとし、勢い良く手を引いた。

「フッ、俺の伴侶殿は初々しいな」
「はぁ！？　う、初々しい訳ないだろうが！　自分で言うのもなんだがおっさんだからな！　それなりに経験済みだっつーの！！」

　男と経験はないが……。いや、まあ……女とも精々二、三人しか付き合ったことはないが……。だからと言って童貞な訳でもないしな。やることはちゃんとやっている！　いや、別に誇ることでもないが……。

「おっさん……何歳なんだ？」
「え？　あー、三十一……」

　言ってて悲しくなるが現実だ。おそらくジウシードはこの肌艶、俺より年下だろう。過労でやつれているようには見えるかもしれないが、俺だってそれなりには鍛えているんだ。そんなに老けて見えないとは思うが、しかし、ジウシードのきめ細かな肌と比べたらな……フッ。

　ジウシードが目を見開いてやがる。ハハ、これで俺と結ばれようなんて思わんだろう。おっさんと結ばれるなんてなぁ、可哀想だろ。

「ちなみにジウシードは何歳なんだ？」
「……俺は二十五だ」
「若っ！！」

　六歳も下かよ！！　ますますないな。うん。