異世界転移で落ちて来たイケメンからいきなり嫁認定された件

３－２ 運命の相手

「ひっ！　な、なにしやがる！！」

　思わずソファから滑り落ちた。

「な、なんで俺が入れられる前提なんだよ！！」

　いや、問題はそこじゃねー！！　いや、それも問題だが……。

「ふむ、入れられることが嫌なのか？　ならば、俺が受け入れ……ないな。俺は入れたい」
「！！！！」

　再び声にならない悲鳴が……。

「い、いや、どっちが入れるとかの問題じゃなく！！　そもそも俺はお前と結ばれるつもりなんかねぇぇぇえ！！！！」

　俺は男となんて結ばれたくねーんだよ！！！！

　そう思っていたらジウシードが爆弾発言をした。

「しかし、俺はお前と結ばれないと、元の世界には戻れない」
「は！？」
「運命の相手と結ばれることでしか帰還の魔法陣は開かない」
「え……」
「俺が戻らないと、国王になれないという問題よりも領地に領主が戻らなく、領民が困ることになる」
「…………」
「そして一度でも戻って来ない領主がいたならば、その領地は次期国王選定の儀から外され、領地も他の二領に吸収されるだろうな」
「ぐっ……」

　い、いや、だからといって俺がケツ穴に突っ込まれないといけない理由にはならんだろう！！
　俺だって男同士に理解がない訳じゃない。男同士の性交渉だってある程度は知っている。しかしだな！！　だからと言って俺自身が受け入れられるかは別なんだよ！！

　頭のなかで様々な考えが駆け巡っている間に、ジウシードは自身もソファから降り、俺の前に膝を付いた。そして、俺の手を取りぎゅっと握る。

「な、なんだよ」

　ぐぐぐっと手を引き抜こうとしても、ジウシードの握り締める力が強く抜けない。じりじりと詰め寄られ、真っ直ぐ見詰められたじろぐ。あまりの綺麗な顔に緊張し思わず顔を逸らしてしまう。

　ジウシードはもう片方の手を伸ばして来たかと思うと、俺の頬に触れた。ビクッとしてしまい、その反動でガバッとジウシードに振り向いてしまった。その目は真っ直ぐに俺を見詰め、まるで獲物を狙うような、もう逃がさない、というような獣の目。

　ぞわりと身体が震え、身体が強張り身動きが取れない。頬に手を添えられたままゆっくりとその綺麗な顔が近付いてくる。唇にジウシードの熱い吐息がかかり、ぞわぞわとする。こ、このままじゃ……唇が触れる……。

　や、ヤバい……う、動け……動けよ、俺……このままじゃ……

「う、あ、あ……あぁぁあああ！！！！」

　ジウシードはビクッとした。必死に喉から声を絞り出した瞬間、なにを思ったか俺はジウシード目掛けて頭突きをかました。

　ゴスッ！！！！

「！！！？」

　鈍い音が響き、ジウシードは後ろに仰け反り倒れ、俺はというと前のめりに倒れ込み蹲った。

　しばしお互い悶絶。ちーん。

　静まり返った部屋では蹲る男が二人。そしてしばらくすると、痛みが落ち着いたのかジウシードが「プッ」と噴き出した。

「クククッ……」

　蹲りながら身体を震わせ笑ってやがる。

「おい」

　額に手を当てたまま涙目でジウシードを睨むと、ジウシードは笑いながらむくりと身体を起こした。

「ブフッ。お、お前……頭突きって……ククッ……嫌だったにしても頭突きって……ブフフ」

　なにやらツボに入ったのか、笑いが止まらなくなったらしい。必死に堪えようとしているが、笑いが漏れ出ている……。

「な、なんだよ。仕方ないだろ……」

　なんだか拗ねた子供のような言い訳になってしまった……な、情けない……。

「くそっ。笑うな！！」
「アハハ」

　ジウシードのその笑う姿が、最初の印象よりも幼く見え、なんだか可愛いな、と思ってしまった。い、いやいや、こんなことでは絆されねーぞ。そうは思ったが、なんだか俺も笑い出してしまったのだった。