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2-1 異世界から来たイケメン
しおりを挟む「いや、ここはどこだと言われても、こっちが聞いてんだけど……」
「…………ふむ」
ふむ、って! なんでそんな落ち着いてんだ!
「すまないが、ここがどこか教えてくれないか?」
「え、あ、あぁ……」
意外とまともなやつだった……。にじり寄っていたジウシードは布団の上に正座をした。外人さんて正座出来るんだな。とか、またアホな思考が。今そんなことどうでもいいわ。そんなときふとジウシードの正座を見て気付く。
「あぁぁあ!!」
俺が声を張り上げるとジウシードはビクッとした。
「な、なんだ!?」
「お前!! 靴を脱げー!!」
「は?」
は? じゃねー!! 騎士コスプレ衣装のまま、ブーツまでしっかり履き込んでベッドの上に乗り上げやがって!!
「家では靴を脱ぐもんなんだよ!! 外人でもそこは日本に合わせろ!!」
キョトーンとしたジウシードのブーツを剥ぎ取るように脱がせ、玄関に持って行かせる。俺の部屋は家の一番奥のため、縁側に伸びる廊下をしばらく歩いていく。
俺の家は一軒家の平屋だ。しかもキッチンダイニングとリビング以外に部屋は四部屋あって、それなりに広い。独身ですけどね。モテないから結婚を諦めて戸建てを買った痛いやつではない! 断じて!
実家な訳ですよ。三十一にもなって親のスネかじりとか言わないで。違うから!
俺の両親はすでに他界。弟が一人いるが、お互い成人し、弟は仕事の都合で遠方に引越し、最近は音沙汰すらない。
俺はこの家を相続し、そのまま暮らしている。売ったりも考えたが、駅から離れていて立地はあまりよくない上に、家も古民家と思われそうなくらいに古い。さらにはそこそこ古い街で昔ながらの住人が多いため、若い人間が寄り付くとも思えない。そのためそれほど高くも売れないだろう、と、両親が死んだときにそのまま俺が住むこととなった。
まあ俺自身は実家であるということを置いておいても、この縁側が気に入ってたりする。
それなりに広い庭は手入れが大変だが、春は近所の桜を見ながら花見が出来るし、夏は地元の花火大会が遠目にだが見える。秋には庭の木が紅葉し、冬は雪が積もる。それらの景色を見ながら、のんびり縁側で日向ぼっこをしたり、酒を飲んだりするのが最高なのだ。
最近仕事が忙しいと帰って寝るだけになってしまっているのだが。それでも日曜日にはそうやってのんびり過ごせるように時間を作る。
と、まあ家を語り出しても仕方がないのでこの辺で。だから、家族用のこの家は古いがそれなりに広いのだ。
ジウシードを玄関まで案内すると、大人しくブーツを手に後に続き、玄関に丁寧にブーツを置いている姿に思わず噴き出しそうになった。
しかし、立っている姿を改めて見ると、なんじゃこら。
日本家屋だから余計目立つのだろうが、ジウシードの身長がとんでもないな。鴨居に頭を打ちそうな勢いだ。百九十くらいの身長があるのだろうか。
身体付きもなんかがっしりしていて、服の上からでも大層立派な筋肉を持っているのだろう、ということが容易に想像がつく。
それでもってあの超絶美形の顔面。服装にツッコミを入れたいところだが、まあそれは置いておいても、こいつ絶対モテるだろうな、と、思わず自分と見比べてしまう。
三十一の良い年したおっさんだが、それなりに鍛えていたつもりではあった。だがしかし、このイケメンの前では月とスッポン! 貧相なおっさん! いや、自分で言って悲しくなるからやめよう……。なんか頑張って若作りしてるのがアホらしくなるな……。シクシク。
玄関に靴を置いた後は、リビングに行きソファにジウシードを座らせ、少し距離を取り座る。するとジウシードは怪訝な顔。
「なぜそんなに離れて座る?」
「当たり前だろうが。名前は聞いたが、お前は見知らぬ人間。追い出されないだけ感謝してもらいたいくらいだ」
「…………仕方ないな」
いや、仕方ないってなんでそんな上から目線なんだよ。
「で、ここはどこなんだ?」
あ、そういえばそんな話だったな。土足でベッドに上がられていた衝撃ですっかり忘れていた。
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