上 下
24 / 30

第24話 ダウバ騎士団

しおりを挟む
 レオンと共にダウバの街までやって来た。レオンの馬に乗せてもらってやって来たが、もう慣れたもので朝から出発し昼過ぎには到着した。

 ライルに初めて連れて来てもらったときには、馬にも慣れず相当疲れたうえにほぼ一日かかっていたな。
 でもあれって、ライル一人なら今日のように半日で着いただろうに、俺に合わせてくれていたんだなぁ。

 あのときなんだか子供みたいな嫌がらせをされて、思わず喧嘩腰でタメ口になったんだっけ。それからライルはキレながら普通に話せって言ったんだよな。ハハ。

 あの日のことを色々思い出して笑ってしまう。そんな俺を見てレオンはなんのことか分からずとも、嬉しそうに聞いた。

「なにか面白いことでもあったのか?」

「ん、ライルと初めてダウバに来た日のことを思い出した。フフ」

 もうライルを思い出しても悲しくはならない。いや、少しは悲しくなるけれど。でもそれ以上に楽しかったこと、嬉しかったこと、ライルと過ごした日々を思い出すと、胸が熱くなる。
 あぁ、俺はやっぱりライルが好きなんだ、と再認識する。
 それを嬉しく思えるようになった。悲しさよりも、悔しさよりも、ずっと……。


 レオンと共に遅めの昼食を取り、まずはダウバ騎士団に聞いてみよう、となった。

 ダウバ騎士団の見張り棟。そこにレオンと共に向かうと、俺の姿を見た団員たちが群がってきた。

「ショーゴ殿! お待ちしておりました! 瘴気の浄化、本当にありがとうございました!」

 多くの団員から労いや感謝の言葉が投げかけられる。

「あ、いえ、そんな……」

 浄化といってもまだ完全に解決していないうえに、ライルの記憶を奪ってしまったという失態もあるため、素直に喜べない。

「今日はライル団長は一緒ではないのですか?」

 一人の団員が聞いた。その言葉にぎくりとしてしまい、レオンが苦笑しながら俺とその団員の間に立った。

「あー、ライルは今騎士団の仕事に戻っていてな。今は俺がショーゴ殿の護衛をしている」

「そうなんですね」

 団員達はこそこそとなにやら話している。漏れ聞こえて来た言葉は「別れちゃったのか?」といったような内容がちらほらと……。
 な、なんでダウバ騎士団の団員たちが俺たちのことをそんな目で見てるんだよ! あのときはまだ付き合ってなかったし! ん? いや、あのとき手を繋いでいたのか……あがっ。

 予想していなかったダウバ騎士団の反応にダメージが……。

「ううん、それでだな……」

 レオンは苦笑しながら大きく咳払いをして話を続けた。

「ちょっと調べたいことがあるんだ」

「調べたいことですか?」

「あぁ、この街で昔のことや瘴気の森について詳しい人物がいたり、文献があったりとかしないか?」

「昔のことや瘴気の森について……」

 皆がうーん、と考え込んでしまった。
 誰もなにも知らないのか!? 誰も分からないならお手上げじゃないか……どうしたら……。
 内心焦っていると、一人の団員が声を上げた。

「あの……詳しい人物や文献は知らないのですが……」

「なんだ?」

 レオンがその団員に声を掛ける。その団員は少し前へ出てくると話を続けた。

「もしかしたら全く関係はないのかもしれないのですが……」

「うん、なんでもいい。少しでも情報が欲しいんだ。話してくれ」

 団員はおずおずと話し出す。

「はい……、街の外れ……というか、外なんですが……いつの時代からあるか分からない墓石のようなものがあるのです」

「墓石……」

「その墓石には誰が埋葬されているのかも分からないのですが、相当古そうだ、ということだけは分かるのです」

「なぜだ?」

「私の父、祖父もその墓石を知っていますが、祖父の父やその祖父もまた知っていたそうです。いつの頃からあるのか知らないが、その墓石を壊したり移動させてはならない、と言われていました」

「移動させてはならない?」

「はい。災いが起きるから、と」

「「災い……」」

 レオンと俺は顔を見合わせた。

「あ、災いといえば……」

 また別の団員が手を上げた。

「なんだ?」

「俺もなんだかそんな感じの昔話を聞いたことがあります」

「どんな話だ?」

「遥か彼方昔、まだこの王国が出来る前、この地に災いがもたらされた。一つの災いが多くの災いを呼び、人間は滅んだ」

「「「あぁ、それなら俺も聞いたことがある」」」

 何人かの団員が声を上げた。

「いわゆる子供に聞かせるお伽噺のようなものですがね。この街に昔から住んでいる人間ならば、なにかしらこのような話は聞いたことがあるのではないかと思います」

「昔話に墓石か……その昔話の災いで死んだ人間の墓石……?」

「その昔話、最終的には聖女の言い伝えに繋がるんですけどね」

「?」

 俺にはさっぱりだが、レオンは「あぁ」と納得したような顔だ。

 レオンは俺に説明するように話す。

「聖女は瘴気が溢れるたびに現れるんだ。それはいつの頃からか分からないほど昔からずっとそうやってきたらしい。瘴気が溢れると聖女が現れて人々を救う、ってな」

「あぁ、そういえばそんな文献を見たような……」

 あれは確か瘴気の森と聖女を調べているときに読み漁った文献のどれかに載っていたはず。遥か彼方昔から災いが瘴気となり溢れかえるころ、聖女が現れ人々を救う。

「うーん、じゃあそれは聖女の言い伝えと同じ話なのか、そうでないのか……」

「とりあえずその墓石を見に行ってみたいな。なにか分かるかもしれない」

 全く関係がなかったにしても、なにも分からないで悶々としているよりも、なにかしら動いていたい。

「そうだな。じゃあ明日にでもその墓石に案内してくれないか?」

 レオンは墓石の話をした団員に交渉した。団員は頷き、明日同行案内してくれることになった。



 その日の晩、レオンが手配してくれた部屋に泊まる。部屋はレオンとは別々だ。なにかあったらすぐに呼べ、と言われ別れた。

 一人で眠るということにいまだに寂しさを覚える。ライルと出逢う前はずっと一人で眠っていたというのに……今やライルのぬくもりが欲しくてたまらない。寂しい。

 悲しさや悔しさ辛さはもう今は感じないが、それでもやはり寂しいものは寂しいんだ。

「ライル……」

 ライルと愛し合った日のことを思い出すと身体が疼いてしまう。ライルが欲しいと身体が求めてしまう。
 男に抱かれたことなど今までなかったくせに、今やライルに愛された日を思い出すと後ろが疼き出し恥ずかしくなる。

 こんなことを考えているなんてライルが知ったらどう思うだろう。笑うだろうか。引くだろうか。それとも、喜ぶだろうか……。

 そんなことを考えているとますますライルが恋しくなり、俺は元気になってしまった自分の分身をなんとか落ち着かせるのに必死になったのだった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~

ゆうきぼし/優輝星
BL
異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。 *マークはR回。(後半になります) ・ご都合主義のなーろっぱです。 ・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。 腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手) ・イラストは青城硝子先生です。

【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい

おだししょうゆ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。 生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。 地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。 転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。 ※含まれる要素 異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛 ※小説家になろうに重複投稿しています

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・不定期

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

処理中です...