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第15話 告白
しおりを挟む「――――ゴ!! ショーゴ!!」
必死に俺を呼ぶライルの声が聞こえた。薄っすらと目を開けると、超絶美形の顔を歪ませながら泣いているライルがいた。
「ハハ、色男が台無し」
「ショーゴ!!」
美形は泣いてようがかっこいいもんなんだな、とぼんやりライルを見詰めた。そしてライルの顔に手を伸ばし、涙に触れる。その手をライルに掴まれ、思い切り握り締められた。
そしてぼんやりとしたまま、前回瘴気に侵されたときのように深く口付けをされたのだ。しかし今回俺は戸惑うことはない。ライルの気持ちも心配もそのまま受け入れる。このキスにはライルの想いが詰まっている気がしたから。
ライルが俺をどう思っているのか、そんなことはもうどうでもいい。言葉がなくともライルは俺を大切に想ってくれているのは分かるから。
深く唇を合わせ、ライルの唾液が流れ込み、魔力が送られてくる。
温かい……優しく温かい魔力に泣きそうになる。ライルの想いの乗った温かい魔力。
ちゅ、くちゅ、と音を立て、舌を絡め、舌を甘噛みされ、ちゅぽっと唇を離すと、お互い荒い息で鼻先を合わせる。次第にはっきりとしてくる頭。鼻先を合わせ、ライルの綺麗な青い瞳と間近で目を合わせる。
いまだに涙が滲むライルの瞳はまるで海のように見えた。「綺麗だ」とぼんやり考えながら、ライルの頬を両手で包み、親指でポロリと零れた涙を拭った。
「ライル……」
子供のように涙を浮かべるライルが愛おしく、微笑んで見せた。うっとりとそんな時間に浸っていると背後から遠慮がちに声がかけられる。
「あ、あの……すまん、邪魔をして……ショーゴは大丈夫なんだな?」
!!
ビクッとし、グギギと背後に振り向くと、全員顔を赤らめ、横を向く者、まじまじとこちらを見る者、驚愕の顔の者、そしてレオンはガシガシと頭を掻き気まずそうだった……。
ぎゃぁぁぁあああ!!!! そ、そうだった!!!! 皆いたんだった!!!! ひぃぃぃいいい!!!! 恥ずかしすぎる!!!!
ガチーン!! と固まってしまった俺に代わり、ライルが平然としたままレオンを睨んだ。さも邪魔するな、みたいな顔だ。
「ショーゴはなんとか意識は取り戻したが、まだ完全には回復していない。このまま宿に戻って休ませる」
「え、あ、あぁ、そ、そうだな」
そう言ってライルは俺を抱き上げ、颯爽と歩き出し、レオンは呆気に取られながらも、なんとか頭を働かせ団員たちに指示を出した。
俺はというと恥ずかし過ぎて、ライルに抱かれながらも反抗出来る心の余裕もなく、固まったまま顔を両手で隠すので精一杯だった……。
ダウバに戻ると早々に、ライルは茫然とするレオンや団員たちを放置し、俺を抱きかかえ宿の部屋へと直行した。
そしてベッドに座らされると、その横に腰を下ろしたライルはすぐさま唇を合わせてきた。
肩を抱き、片手は俺の手を握り締め唇を合わせる。優しく壊れ物でも扱うかのようにそっと唇を重ねる。魔力が少しずつ労わるように送られてくるのが分かる。
いつものような激しさはない。必死に耐えて、俺の回復を優先してくれているのが分かる。そっと撫でられるように舌を動かされると、もどかしいような、しかしいつも以上に意識がそこに向かいぞわぞわと変な気分になってしまう。
ライルの必死の治癒のための口付けに、俺自身もなんとか声を出さずに堪える。そんな自分に少しおかしくなってしまい、思わずクスッと笑みがこぼれる。
「? どうした?」
「ううん、死ななくて良かった、と思って」
ライルとこうして唇を重ねることを喜んでいる自分がいることに、もっとライルが欲しいと思ってしまうことに、笑ってしまったのだ。
何度となく暇さえあればライルからのキスを受け、なんとか回復をした。しかしライルは回復してからも俺から離れようとしなかった。最初は俺自身も喜んで受け入れていた。酷く心配をかけたと俺も反省しているから受け入れていたのものある。
だからそれは良かったのだが……なんせしつこく何度もキスをされる……そろそろ唇が腫れてくるんじゃないかと思ってしまうほどだ。
いい加減そろそろ落ち着いてくれないだろうか、とベッドから腰を上げると、腰に思い切り抱き付かれて引き戻された。そしてまたキスを!!
「ちょ、そろそろキスはもう!! むぐっ」
「魔力を送るためだ」
そう言いながらライルは唇を重ねる。
「おい! 魔力を送るのは身体の触れ合いだけでも良いんだろ!?」
キスじゃなくても良いだろうが!! それにもう回復もしているはず!! 唇痛い!!
「このほうが早く送れるんだ」
しれっとライルはそう言ったかと思うと再び深く唇を合わせた。
「むぐっ」
ほ、本当かよ!? なんか騙されてる気がするんだが!? 唇が腫れあがっている気がする!!
背中と後頭部をがっしりとホールドされ身動きが取れない。
深く口付けられ、口内に侵入してくる熱い舌が俺の舌に絡められる。
「ん、んん!!」
口を離そうとライルの胸を押すが、基本的に力の差があり過ぎる。細身に見えるのにその身体は屈強で、服の上からでも筋肉が分かるほどだ。今まで勝てた試しがない。
執拗に舌を追われ、まるで追いつめられるようにライルの口内へと誘い込まれる。
食べられるように舌を甘噛みされ身体がビクッとする。
「ん、あ……は、ぁあ……」
今まで回復のために穏やかなキスをされていた。久しぶりの激しいキスに息が上がる。
ダ、ダメだ、魔力が送られてきているからか、ただこいつのキスがエロいからなのか、頭がボーッとしてくる。チュッ、クチュッと卑猥な音と荒い息遣いだけが部屋に響き渡り身体が熱くなる。
ライルの腕が少し緩んだかと思うと、後頭部を支えていた手は俺の身体を這い、下半身へと伸びた。
そして俺の中心をそっと撫でられ、ビクンと身体が跳ねる。
「お、おい!! な、な、なにやってんだよ!!」
魔力を送るだけならキスだけで十分なはずだ。いや、そもそもキスすら必要ないかと思うが。
「な、なんで俺のモノを触ってんだ!! 必要ないだろ!!」
片手しか背中にはないのに、それでもビクともしない屈強さ! そんなところで力を使うな!
まさかの展開に頭はパニックに! ライルのことを好きだと自覚はしたが……自覚したばかりなんだよ! ここまでの展開はまだ予想していなかった!
ライルは俺の問いに答えることなく、再び唇を押し付けながら、ズボンの中にまで手を突っ込んできた。
「お、おい!! んぐっ」
そして少し固さを持ち出していた俺のモノをさわさわと撫で、握ったかと思うと上下に動かし出した。
「あっ……ん! ちょ! んん……」
「ショーゴ」
ライルの美声が耳元をくすぐり、ゾワッとする。
耳を舐められ吐息を吹きかけられ……
「あぁ……あ、……あ……ラ、ライル……」
こ、こんなの耐えられるはずがない!!
「もうむ、無理……無理無理!! 出ちゃうから!! は、離せ!!」
そう訴えてもライルは俺のモノをしごくのを止めない。ガチガチに膨れ上がった俺のモノは限界だった。
ライルの温かく大きな手に気持ちいいとまで思ってしまい、もう何も考えられなかった。
「出すといい」
「あ、あぁ…………!!」
甘く色気のある声で耳元に囁かれ、俺はライルの手の中で果てた。
「あぁぁ…………はぁ、はぁ……」
「お前が好きだ……」
ライルに思い切りしがみついたまま果てた俺は、荒い呼吸を繰り返し、ボーッとする頭のままライルの囁きを聞いた。
「お前を失うかと思った……怖かった。失う恐怖などもう二度と御免だ……」
ライルは震えるように俺を抱き締めた。
あぁ、初めてライルの気持ちを聞いた。涙が出た。俺は……
「俺もライルが好きだ…………心配をかけてごめん。俺はいなくならないから。ライルの傍にずっといるから……」
ライルの瞳を真っ直ぐに見詰めそう言葉にした。
そして俺は自分からライルの唇に唇を重ねたのだった……。
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