永遠の縁~時間を巻き戻すふたりの物語~

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プロローグ

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 海の近くだから波の音が聞こえるかと思ったけれど、扉と窓を閉めてしまえば絶えることなく繰り返される潮騒はここまで届かなかった。
 それでも、海が近い気配はする。
 慣れないことばかりで、しかも人生で一番幸せな時間を過ごしたヒスイの胸の中には、まだ強い興奮が残っていた。
 だからだろうか。
 夜明けより少し前に目が覚めた。
 薄暗い部屋の向こうに果てしなく広がる水の気配を感じるのと同時に、背中からあたたかい腕に囲われていることに気づき、幸せで頬が緩む。
 後ろから聞こえる寝息は規則正しく、まだ彼が深い眠りの中にいることを伝えてきた。
 起こさないように気をつけながら、そっと態勢を変えて寝顔を覗き込む。善良さと真面目さを形にしたら、きっとこうなるのだろうと思われる清潔な面差しを間近で見つめて、一人悦に入った。
 触りたい。キスしたい。
 でも、起こしたくない。寝顔をもっと見ていたい。
 幸福な葛藤をしばらく味わってから、ふいに生理的な欲求を感じて、彼を起こさないように気をつけながら腕から抜け出した。
 ベッドから床に足をつこうとして、違和感を覚える。
 ベッドが、高く感じた。
 それだけじゃない。
 パジャマ代わりのTシャツの肩が片方、ずるりと落ちた。

 ……え?

 言いようのないザワザワした感覚に、焦りにも似たものが生まれる。
 床に足を付き、壁に埋め込まれた鏡を見て目を疑った。


 昨日よりもずっと幼く、小さくなった自分が呆けたような顔でこちらを見ていた。
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