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六十二話 俺はクズだった

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俺はステータスを読んだ後、朝食を食べるために食堂に向かった。こうしてみんな(エリスを除く)で食べられるのは今日が最後だ。ゆっくりと、楽しみながら食べよう、と心に決めて扉を開けて中に入る。
食堂に入るとみんなが座っており、俺のことを待っていた。俺は急いで席に座る。

「お待たせしました」

「いや、大丈夫だ」

国王様がそう答えたあと、みんなで一斉に食べ始める。今日はこの1週間で一番豪華な朝食が並んでいる。そして相変わらず全てが美味しい。俺はよく噛み、味わいながら食べていく。


暫くして、みんなが食べ終わったところで国王様が口を開いた。

「リョウタ殿、今日でギルドへの依頼は終わったがどうするのだ?」

「どうするとは?」

「ミズキ殿に聞いたのだが、リョウタ殿はすごく強くなっているらしいのでな、魔王討伐に一緒に行ってはどうかと思ってな」

確かに、俺は強くなったし、魔王討伐に加われるだろう。だが、もう少し異世界を楽しみたい(クズである)。
瑞希は絶対に危険になることもないだろうし、何の心配もないからな。だが、もしもということもある。どうしようか...。取り敢えず、来週には大会があるから、1度城を離れるのは確実なんだけどな。
取り敢えず、言い訳をして、魔王討伐にはついて行かない方針でいいか。

「今は魔王討伐に一緒に行くつもりはありません」

「何故だ?」

「ステータスが低いからです」

俺がそう返事を返すと、国王様がよくわからないと言った表情で俺を見てくる。

「ミズキ殿は、自分以上に強いと言っておったのだが...」

「いえ、そんな事ありません」

「そうなのか?ミズキ殿」

国王様は近くにいる瑞希に問いかける。
俺は瑞希の方を見てみると少し困ったような顔をしていた。

「ステータスを見る限りでは、私より低かったです...。ですが、私が倒せなかった敵を涼太は倒してました!」

瑞希は最初の方はだんだんと声が小さくなっていたが、最後は少し叫び気味に答えた。
確かに、俺のステータスはすごい低いのに、瑞希ですら倒せない敵を簡単に倒したなんて、言うかどうか困るよな。言われても困るし。

「うーん、どうしたものか...」

国王様は呻くように呟いた。
すると、その隣にいた王女様が国王に耳打ちで何かを伝えていた。その伝言を伝え終えたあと、直ぐに国王がまた話し始めた。

「リョウタ殿にはできる限り自由に過ごしてもらいたい。そしてミズキ殿にもできる限り自由に過ごしてもらいたい。だから、ミズキ殿はリョウタ殿と共に行動してくれ」

「「え?」」

俺と瑞希は声を合わせて、素っ頓狂な声を上げた。

「リョウタ殿と一緒に居れば、エリス殿とも一緒に過ごせる。ということは、Sランク冒険者と一緒に行動ができるということだ。ならば、練習をサボることはないだろう。...まあ、ミズキ殿がサボるなんてことあるわけがないだろうが」

国王は付け足すようにそう言った。だが、俺の頭の中にはそんな話は全く入ってこない。なぜなら瑞希と一緒に行動できるという嬉しさで埋め尽くされているからだ。
これで瑞希さえ断らなければーーー

「いいんですか、国王様!」

俺がそんなことを考えていると瑞希が大きな声でそう叫んだ。
これは、瑞希と一緒に行動できるということか?まじか!やった!

「ああ、しっかりと楽しみながら、しっかりと訓練してくれ」

「はい!」

瑞希はすごく可愛い笑顔で返事をした。
ほんと、異世界最高だな!やっぱり。
俺がそんなふうに喜んでいると、国王様はまだ話があると言った感じで俺を見てきた。俺は少し姿勢を正して国王様の方を見る。

「リョウタ殿もミズキ殿が一緒でも大丈夫か?」

「はい全然大丈夫です」

「それでは決まりだな、そこでなんだが、一応のためにエーレンを一緒に連れて行って欲しいのだが...」

「一応のためとは?」

よくわからない言葉が聞こえたので国王様に質問してみた。すると国王様は少し言いにくそうに話し始めた。

「多分ないと思うのだが、訓練をサボっていたりした時のためと考えてくれていい」

「そういう事ですか、全然大丈夫ですよ。エリスさえ良ければ」

俺はそういった後、多分大丈夫ですけど、と付け足しておいた。

「そうか、それはよかった。それではここら辺で私は仕事に向かうとする」

「わかりました。今までありがとうございました」

「いや、これからも来てくれて構わんよ」

本当に優しく、かっこいい国王様だ。
国王様は話を終えたからか、部屋を出ていーーーけなかった。待ったの声がかかったのだ。

「国王様!私達も一緒に行ってもいいですか!」

これは珍しく、靉麗が大きな声で言った言葉だ。その声に、国王様はゆっくりと振り返った。

「すまないが、ソナタ達は城に残ってもらいたい」

「え?」

「ソナタ達は召喚されたばかりだから、説明をしたり、スキルを伝授したりと、色々することがあるのでな。すまない」

「そうですか...」

靉麗はすごく悲しそうな顔をしていた。
俺も悲しいよ...。悲しいと思うなら城にいてあげろよという批判の声は受け付けていません。
まあ、靉麗達も俺達もしたければいけないことがあるから、仕方ないと思ってほしい。

国王様はもう一度すまない、と言って部屋を出ていった。その後、俺達も朝食を食べ終えているので、部屋を出て城を出る準備をする。

俺はほとんど荷物はないが、瑞希はかなりあるそうで、少し時間がかかった。
エーレンはというと俺より少なかった。
理由は荷物が多くては邪魔になるかもしれないから、だそうだ。
別にそんなことはないのだが、本人がこれでいいというので、俺があれこれ言うべきではないだろう。
しばらくして、瑞希が準備を終えて俺のところに来たので俺達は城を出た。


俺はこうして、瑞希とエーレンと一緒に、さらに楽しくなりそうな異世界生活を謳歌することになったのだった───。
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