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五十三話 ダンジョンの最高記録者は軟弱者だった(改稿します)

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スピードを上げて進んでいるが、さすがはスピード型だけあって、霧月姉は余裕でついてきている。そのお陰もあってか、一階層毎にかかる時間が今までより断然短くなっている。結果、40階層には30分程でついた。
まあ、この時間になるためには、前提として幸運をしっかりと発揮しなければいけないんだけどな。

そう言えばこの階層のコンセプトを言っていなかったな。今回は洞窟?だ。なので敵は蝙蝠や、洞窟蜘蛛だ。蜘蛛が出てきた時の瑞希はすごい慌て様で、ずっと俺に抱きついていた。あの時の事を思い出すと...ふふふ。

そろそろやばい奴みたいに思われるからやめておいて、話を戻そう。確か...階層主の話だったか?まあ取り敢えずその話をするか。

階層主がいる階層は今回も相変わらずの一本道だった。俺達はいつも通り部屋に入る。
今回の敵は蛇だった。蛇は太さが2m、全長20m程あり、かなり巨大だった。身体は紫色をしており、いかにも毒を吐きそうだ。
歯は鋭く尖っており、光が反射するほど綺麗だ。近づかれたらかなり危険だろう。

なので瑞希達が先制攻撃をする。最初にいつものファイアバレットを靉麗が撃つ。その後、靉麗はファイボールを数発打ち込む。
だが鱗が硬いのか、今まで貫通していたファイアバレットが貫通せず、全ての攻撃を無傷で防がれた。敵は攻撃されたことに怒ったのか、凄い勢いで近づいてくる。ついでに尻尾を振り回し、床や壁を砕いていく。
その頃瑞希はというと、近づいてきている敵に左手を向けて魔法名を呟く。


『エクスプロージョン』

直後、蛇の近くが白く光る。前に俺が使った時は気づいたら敵が倒れていたという感じで、どんな魔法だったか分からなかったが、今回は離れた場所で魔法が使用されたので一部始終を見ることが出来た。
光った場所を爆心地として、大きな爆発が起きる。その爆発は光を伴うもので、蛇は光に包まれて見えなくなった。そこまで確認したところで、俺の元に風と熱が届く。敵の姿は爆風によって舞い上がった砂煙のせいで未だに確認出来ない。熱風がおさまると、砂煙が晴れて、敵の姿が確認できるようになった。敵の身体は所々抉れており、満身創痍な姿となっている。


『シャーーーー!』

低く、何かが擦れているような不愉快な声で蛇が鳴く。だが敵は鳴くことしか出来ないようだ。瑞希のエクスプロージョンでほとんどの体力を持っていかれたのだろう、瑞希が霧月姉に最後の攻撃をさせる前に敵は倒れてしまった。そしていつも通り何かがドロップした。なんか、今回はすごく真面目に戦闘してたな。まあ、取り敢えず瑞希達のところに行くか。
俺が瑞希の元へ行くと、またもや霧月姉に謝っていたが、今回も霧月姉に止められていた。さて、適当に瑞希を元気づけてから次の階層へと行くか!

俺達は瑞希を元気づけてから、今回も進むスピードを少しあげて次の階層主の場所を目指す。今回の階層のコンセプトは天国だ。
地面は雲のような形をしており、敵が天使だ。天使を倒すのか?とか思うかもしれないが、まあいつも通り見た目があれなのだ。
完全に堕天使だ。勿論瑞希は躊躇なく倒していきました。

さて今回は20分ほどで45階層へと着くことが出来た。今は相変わらずの一本道を通り過ぎて、既に階層主の部屋へと入っています。
敵は天使だ。

まあ今までの階層を見てたからなんとなく予想はしてたけど。だが今までとは違って、今回は堕天使ではなく普通の天使だ。だが、俺達に攻撃してくるので天使でも堕天使でもあまり変わらないようだ。
なので瑞希達も躊躇うことなく攻撃している。戦闘はもう何度も話したからいならないよな?
言えることはいつも通りという事だな。

さて次の階層だ。次の階層主で、最高記録の50階層だ。瑞希が今日はそこまで行って終わりにすると言っていた。今日は今までに比べると、かなり長い時間ダンジョンに潜っていたな。それに進んだ階層数もダントツで多い。なんと言ったって50階層を1日で進むことになるんだからな。
さて、少し進むスピードをあげて進むか!

今回の階層のコンセプトは地獄のようだ。
この地獄は少し不思議で、日本人がよく想像する地獄だった。そして敵も鬼だった。
鬼が出てくるって完璧日本人関連してるよなこのダンジョン...。いや、中国の可能性もあるのか?

まあそんなことは置いておいて、いつもの一本道を通って、階層主の部屋へと入る。ここにいるのが今確認されている中の最後の階層主か。なんとなく予想は出来るが誰が出てくるのだろうか?部屋の明かりがつき、敵の姿を確認できるようになる。そこにはしゃくを持った巨大な人形の罪を裁く神ーーー閻魔がいた。閻魔は大きな顔を足元にいる瑞希達へと向けて大きく、低い声で問う。


『ここへ何しに来た?』

その声に、あの瑞希でさえ少し怯んでいる。
だが、瑞希はしっかりと閻魔に告げる。


「貴方を倒しに来ました」

『ほう?我を倒しに来たとな?それは面白いな。』

「それでは早速行きます!」

瑞希は神に対してだからか、いつもより丁寧に話している。そして、いつもより緊張感があり、全力で戦おうとしている。
まずは閻魔の正面に走っていく。その時に靉麗がいつものファイアバレットを撃つ。だが閻魔の手の1振りで簡単に消えてしまう。
次は霧月姉だ。持ち前の速さで敵に近づき剣を振るう。だが、閻魔には見えていたのか大きな手で簡単に守られてしまう。次は本命と言っちゃ悪いが、一番初めからいる勇者の瑞希だ。あと数歩である攻撃範囲に入るというところで、瑞希が消える。多分短距離転移だろう。そして、予想通り転移しており、閻魔の後頭部近くに現れた。そして剣を思い切り叩きつける。だが、閻魔はもう少しで剣が当たるという所で、素早く避けられてしまう。
瑞希はそのまま地面へと落ちていき、その後一気に後退する。

あれ?50階層になった瞬間に強くなりすぎじゃね?これ勝てるの?
俺はこんな疑問が浮かんできた。今までならそんなことは思わなかったが、さっきの戦闘の様子を見ると、どうも勝てる気がしない。
だが、瑞希に諦めた様子はない。もう一度攻撃を仕掛けるようだ。次は左手を閻魔に向けながら走っている。そして、瑞希は小さく魔法名を呟いた。


『サンダー』

これは確か光属性魔法のLv.4で入手できる魔法だったか?俺がそんなどうでもいいことを考えていると、雲もなく、空も見えないのに、どこからとも無く閻魔に雷が落ちた。
閻魔はその雷を腕で受ける。無傷か?と思ったが今回は少し攻撃が通ったようで、皮膚に火傷ができている。

...いや、だから強すぎだろ!これは本当に勝てる気がしないな。まあ、もしもの時は逃げるか。
というか、最高記録所持者はこれを倒したのだろうか?それとも逃げたのだろうか?まあそんなことは考えてもわからないから、気にしないでおこう。

それよりもだ、瑞希はどうやって勝つつもりなのだろうか?俺は瑞希が使いそうな戦法を考えつつ、瑞希の戦いに注意を戻す。

瑞希はサンダーで火傷を負わせれたことに逆に驚きつつ、敵に切りかかる。今回もあっさり躱されたが、今回はこれで終わりではない。一気に首の根本に転移して、すぐに剣を横にはらう。その剣は無事に首に当たり、少しくい込む。だが、首を飛ばすことは出来なかった、それどころかかすり傷をつけた程度にしか、怪我をしていない。そして閻魔はその怪我を気にした様子もない。


『この程度か...。お前達でここに来たのは3パーティー目になるが、お前達はそのパーティーの中で一番強い』

こんなことを言ったら瑞希達に悪いが、これでか?と思う。なぜなら、まだちょっとの火傷とちょっとの傷しか付けていないからだ。俺がそこら辺を疑問に思っていると、瑞希も同じことを考えていたのか、閻魔に質問する。


「私達は少ししか傷をつけていないのに、これで一番強いのですか?」

『ああ、そうだ。今までの奴らは1度攻撃してきて、攻撃が通らないことがわかるとすぐに逃げていったからな。軟弱者めが』

あ、やっぱり勝ってなかったのか。そらそうだよな、俺もそいつらの立場だったら逃げるわ。無理ゲーにも程がある。


『だから、お前達が一番だ。だから俺のできうる限りの対応でもてなそうと思う』

閻魔はそこで一度言葉を区切り、息を吸い込む。そしてもう一度口を開く。


『我が神聖なる領域、【地獄】へと招待しよう、勇者の諸君。さらばだ』

閻魔はそう言い終えると、大きな手で瑞希達を押しつぶそうとする。お?これは俺の出番か?やっと護衛兼アドバイス役の出番か?
よし!やってやるぜ!
俺はそう思い、閻魔の元へ駆け寄ろうとする。だがその時、瑞希が叫び声をあげる。


「涼太!逃げて!」

いや、逃げれないだろ。というか逃げる訳には行かないだろ。俺は瑞希の声に聞こえないふりをしながら、閻魔の元へと走る。そして閻魔の手を思い切り殴る。すると思ったより断然簡単に閻魔の皮膚を貫通する。

あれ?神ってそんなに弱いの?なんで?
俺は簡単に貫通できたことに、少し動揺したが、攻撃の手は休めない。殴った後は、蹴りだよな。ということで適当な場所を思い切り蹴る。すると今回も思ったより断然簡単に皮膚というより、骨を粉々に粉砕した。
あれ?これ倒せるんじゃね?

よしまずは敵の首元にじゃーんぷ。その後剣で首を横薙ぎに切りつける。
すると、綺麗に首チョンパができた。
そのまま閻魔は倒れて、何かがドロップした。あれ!?閻魔弱すぎない!?閻魔って確か神だよね?神よわ!

ま、まあ、こんなもんなのかな?
気を取り直して、ドロップ品回収だ。
ここまで強い(瑞希基準)のだから、ドロップアイテムもかなり強いのドロップしてるよな?


俺はこんな感じで神を殺した者ーーー神殺しという偉業?を成し遂げたのだった───。
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