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三十七話 ダンジョンスライムはベタベタだった

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2階層に降りるとそこは1階層と変わらない風景が広がっていた。ただ、道幅が1階層と比べるとかなり広くなっていたので俺達は横に並んで進んでいく。

100mほど歩いたところで、壁がいきなりガラガラと音を立てて崩れ、砂埃が舞った。その後砂埃で少し見えずらかったが壁の中から魔物が出てきたのが確認できた。だが、流石は瑞希とSランク冒険者と言うべきか2階層の罠などに慌てるわけもなく冷静に魔物を対処していた。

こういう罠っていうのは相手を驚かしてから、隙を突いて魔物が攻撃するという罠のはずなのに...相手が悪かったな。
ちなみに、俺が驚かなかった理由はぼーっとしていたから壁から出てきた魔物に反応出来なかっただけなので、すごさも何も無い。

壁が崩れたあたりは砂埃が立ち、俺にはどうなっているのかは確認出来なかった。
俺が一生懸命、砂埃に注意を払っていると、瑞希が落ち着いた声で小さく

「砂埃の中からなにか出てくるよ」

と呟いた。
すると瑞希が言った後、すぐに砂埃の中からスライム10体飛び出してきた出てきた。俺はまたスライムか、と少し落胆したが、もう一度スライムを見てみると本体の色が違った。1階層は灰色だったが、今回は赤色だ。

俺は何が違うのかエリスに聞いてみると見ていたらわかるよ、と言われので俺はスライムに視線を移す。瑞希はスライムが近寄ってきているのに、剣を構えずに手を前に突き出している。そして、小さな声で何かーーーいや、魔法名を呟く。

「ウォーターボール」

すると直後、ウォーターボールがスライムに飛んでいく。そしてスライムに当たるとジュワーと水が蒸発するような音がして、スライムは消えていった。その後、スライムのいた場所に魔石がポトと落ちた。

瑞希は連続でウォーターボールを打っていき、スライムが次々に消滅して、魔石がポトポト落ちていった。
俺はスライムを見ていたが、1階層のスライムと違うことしか分からなかった。

「エリス、このスライムは何なんだ?」

「今の敵はファイアスライムって言って、すごく熱いんだよ。そして水に弱いの」

「なるほど、だから水が蒸発したような音がしたんだな」

「そういうこと」

俺はさっきのスライムがなんなのか分かったので、瑞希が何をしているか確認する。瑞希はただ魔石を拾っていただけだった。
瑞希が魔石を拾い終えたところで、俺達はまた進み始める。

進んだはいいが、この階層にはファイアスライム以外いないらしく、時々出てきては、ウォーターボールで消滅し魔石を落とすだけと、面白いことが何も無かった。
まだまだ護衛の役目はなさそうだな。

しばらく歩いていると今回も30分程で、下に降りるための階段を見つけることが出来た。俺はみつかるのがはやすぎるのではないか、と思いまたもエリスに聞いてみる。
なぜエリスばかりに聞いているかと言うと、一番詳しそうだからだ。つまり何となくです。

「エリス、階段ってこんなに早く見つかるものなのか?」

「たまにそういう事もあるけど、2回連続って言うのはあまり無いよ。まあ、たまたま運が良かったんじゃないかな」

「そうか」

俺はまあたまにはあるのだろう、と思って考えるのをやめた。俺達は見つけた階段から下の階層へ降りる。今回もあまり見た目に変わりはない。だが、幅は少し狭くなっている気がする。

今回は階段を降りてすぐに敵が出てきた。今回の敵もスライムだったが、色が緑色だった。瑞希は緑色のスライムに手を向けてファイアボールを打った。すると緑色のスライムは燃えてから、消えた。そして魔石がポトと落ちる。俺は何となくわかる気がするが、恒例事にするために、エリスに敵の名前を聞いておく。

「なあ、さっきのスライムはなんだ?」

「あれはウッドスライムっていう魔物よ」

俺はそれを聞いて疑問に思ったことがある。
それはなぜ、スライムの色が赤色なだけで水に弱いのか、同じように緑色なだけで火に弱いのかという事だ。
俺はウッドスライムは木で出来ているのかな?と思い、俺はウッドスライムを触って確認するために、瑞希に次スライムが出た時に1体は残してくれと頼んでおく。

10分ほど歩いていると、ウッドスライムが5体出てきた。瑞希はすぐにファイアボールでウッドスライムを4体倒した。俺は残った1体に近づく。するとウッドスライムは体当たりをしてくるので俺は軽く避ける。そして俺の横を通り抜けようとしたスライムを捕まえる。触り心地はベタベタしていて気持ち悪かった。俺は気持ち悪すぎて、すぐに壁に叩きつける。するとスライムは破裂し、魔石がポトと落ちる。

「ウッドスライムって触り心地はただのスライムなんだな…」

「見たらわかるでしょ」

エリスが呆れたように言ってくる。呆れられてもなあ、試してみたかったんだから仕方ないだろう。それにしっかりと理由もあるしな。

「なんで色が緑色なだけで木みたいに燃えるんだ?」

「さぁ?なんでだろ」

「分からないのか」

「うん、と言うかそんなことすら考えたことがなかった」

「そうなのか」

俺は分からないのなら仕方が無いと思い、考えることをやめる。そして、またダンジョンを進む。
この階層もウッドスライム以外の敵は出てこなかった。今回も何故か30分で下の階層に行く階段が見つかった。

「おい、やっぱりおかしくないか?」

「うん、簡単に見つかりすぎてるね」

「エリスもそう思うよな。なんでだろうな」

俺はそう言って平均的な頭で考える。
涼太は平均的と言っているが、今の涼太の頭は平均的ではない。AGIが上昇すれば、頭の回転の早さも早くなる。その事を涼太が知らないだけで、涼太の頭は異常的である。
その異常な頭をフル回転させると一瞬で答えを見つけることが出来た。

「あ、確か瑞希が幸運って言うの持ってたよな?」

「うん、持ってるよ?」

「その効果で簡単に見つかるようになってるんじゃないか?」

「あー、そうかもね」

瑞希は軽く返事する。あまり興味が無いのだろう。俺は問題が解決出来て、満足した。
俺が満足していると、エリスは全く理解出来ていないらしく

「私まだ、全く問題解決出来てないんですけど!」

と叫んできた。俺は少し面倒だが、瑞希が所持している幸運について話て、納得させる。
エリスが納得したところで、階段を降りるとそこは相変わらず変わりなかった。だが、道の幅はかなり広くなった。
俺はこの階層は敵を発見しやすそうだなー、と思ったがその予想は思わぬ形で外れた。

それは階段から少し歩いたところで起きたことだった。ダンジョンの床を見てみると、そこには水が溜まっていた。俺は何故こんなところに水があるのだろうか、と考えていると瑞希がいきなり水たまりにファイアボールを打ち、水が蒸発した。そして水たまりがあった場所には魔石が落ちていた。俺は何が起こったのかわからずに目を白黒させていると、瑞希が俺の方を見て説明し始める。

「さっき水たまりはウォータースライムだったの。ウォータースライムは名前の通り、水のようになることが出来るから、その知識がないと不意打ちされることがあるのよ」

「なるほど、そうだったのか」

俺は瑞希の説明を聞いて、ふと疑問に思ったことがある。ウォータースライムは水のようになれる。ならば他の階層のスライムはどうなのだろうか、と思い瑞希に質問してみる。
俺の質問に瑞希は元から知っていたようで淡々と説明し始める。

「ダンジョンスライムは普通のスライムだから、この話には関係ないけど、ファイアスライムは熱を発してるよ。ウッドスライムは水を吸収しやくなってるの」

俺は今までの中だったらウォータースライムが1番強いなと思った。だが、それは不意打ちが出来るなら、という前提がある。一度使ってしまえば二度は通用しないであろう技である。対処は簡単だ。


俺はこの階層は楽そうだな、と思い少し飽きつつあるダンジョンをさらに進んでいくのであった───。
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