上 下
13 / 91

十二話 レイアはアホだった

しおりを挟む
俺は、レイアをギルド長室に一旦放置して、エリスを呼びに行く。

受付の方まで出てくると、受付の近くにエリスが座っているのが見えた。

「エリス、ちょっといいか」

「あ、リョウタ」

エリスは俺に気がつくと、すぐに駆け寄ってきた。

「話は終わったの?」

「ああ、それよりも頼みたいことがある」

「頼みたいこと?」

「ああ、実はなーーー」

俺は、レイアと何があったかを簡単に話した。

「王女様が、私達の依頼に同行!?リョウタ何考えてるの!?危険すぎるでしょ!」

これは、エリスが俺の話を聞いた後に、最初に発した言葉だ。

俺もそう思うんだが、レイアが許してくれない。エリスの言う通りどんな危険があるかも分からない場所に王女様を連れていくのは全く気乗りしない。万が一怪我でもしたらどうなる事やら。俺たちが。
とはいっても決まってしまったものは仕方がないしなんとか納得してもらうしかない。

「仕方がなかったんだ。王女様からの命令だぞ?」

「うぅ」

エリスは小さく唸る。まあ、誰でもそうなるよな。責任が重すぎるし。

だが、王女様の『命令』というのが効いたのか、エリスは仕方なく納得して、人払いを開始してくれた。
俺はその様子を見て、レイアを連れてきて大丈夫そうだなと思い、ギルド長室へと戻る。

周りで誰が聞いているかわからないので、一応ノックをして、名を名乗ってから扉を開ける。

「涼太です」

「どうぞ」

扉を開けて、レイアに準備が終わったことを伝える。

「そうですか、ありがとうございます」

レイアはお得意の笑顔でにっこりと笑う。
だが、俺には瑞希がいるのでそんなものは効かない。
...まあ、悪い気はしないが。

さて、そんなことは置いておいて、ギルド長室を出る。
もうそろそろ通れるようにはなっているだろう。


受付の方へ出ると、エリスが人払いを終えて待機していた。

「エリス、お疲れ」

「うん、所でさ、依頼は何受けるの?」

あ、完全に忘れてた。
何を受けようかな。簡単なのにした方がいいよな、なんてことを考えていると後ろから大きな声が聞こえてくる。

「え、え、エリスさん!?」

俺の後ろにいるのはもちろんレイアだ。そんなに叫ぶほどのことなのだろうか。

「リョウタさん、エリスさんとパーティーを組んでるんですか!?」

レイアは俺に詰め寄って質問してきた。
かなり近い。これは瑞希一筋の俺でも少しきついな...。

と、そんなことよりもレイアが叫んだからか、先程まで静かだった遠巻きがザワザワとし始めた。
これはあまり良くないな。

王女様がここにいることがバレるかもしれない。そしたら大騒ぎになり、必然的に俺が目立つ。

それは本当に良くない。エリスの事は後で説明するとして、さっさと依頼を受けて外に出るか。

俺達は急いで依頼を見に行く。
さて、何を受けるか。
さっきも言ったが、レイアがいるからあまり難しいダンジョンはダメだ。

できるだけ簡単で、それでいてやる意味のあるもの。

そう考えて依頼を探していると、隣でレイアが見つけましたー、と叫んだ。

「何を見つけたんだ?」

「依頼です」

嫌な予感がするが、一応聞いておこう。

「どんなのだ?」

「ヒュドラの討伐です」

予想的中だ。このアホレイアは適正ランクBの依頼を持ってきやがった。

いくらSランクがいるからって王女様をBランクの討伐依頼につれて行けるわけないだろう。

俺が頭の中でそう考えていると、エリスが何を思ったのか、ヒュドラ討伐の依頼を受けに行こうとしていた。

「ちょっと待てー!」

俺は思わず叫んだ。こいつらは馬鹿なのか?

「どうしたの?リョウタ」

「なんで受けようとしてんだよ!」

「王女様が受けたいとおっしゃったからだよ?」

エリスはさも当然かのように言った。そして、当たり前でしょ?みたいな目で俺を見てきた。

「いや、王女様が言ったからと言って、Bランクの討伐依頼に連れていくのは危険すぎないか?」

「でも、王女様が受けたいとおっしゃったから...」

あぁ、もうダメだこれは。
仕方ない、受けるしかないか。

「わかった、受けよう」

「うん、依頼受けてくるね」

俺は大きくため息をついた。
その様子を見ていたレイアが俺に話しかけてきた。

「溜息をつくと、幸せが逃げちゃいますよ?」

レイアのせいだろ!とツッコミたかったのだが、周りの目があるので、何とかこらえる。
俺ってこんなキャラだっけ?

まあ、そこは気にしたら負けか。
俺がもう一度そこでため息をつくと、エリスが依頼を受けて戻ってきた。

「依頼受けたから、早速行こっか」

「あぁ、そうだな...」

こうして俺は、ヒュドラの討伐に向かったのだった───。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一人だけ竜が宿っていた説。~異世界召喚されてすぐに逃げました~

十本スイ
ファンタジー
ある日、異世界に召喚された主人公――大森星馬は、自身の中に何かが宿っていることに気づく。驚くことにその正体は神とも呼ばれた竜だった。そのせいか絶大な力を持つことになった星馬は、召喚した者たちに好き勝手に使われるのが嫌で、自由を求めて一人その場から逃げたのである。そうして異世界を満喫しようと、自分に憑依した竜と楽しく会話しつつ旅をする。しかし世の中は乱世を迎えており、星馬も徐々に巻き込まれていくが……。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

異世界召喚に巻き込まれたおばあちゃん

夏本ゆのす(香柚)
ファンタジー
高校生たちの異世界召喚にまきこまれましたが、関係ないので森に引きこもります。 のんびり余生をすごすつもりでしたが、何故か魔法が使えるようなので少しだけ頑張って生きてみようと思います。

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい

兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

異世界巻き込まれ転移譚~無能の烙印押されましたが、勇者の力持ってます~

影茸
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれ異世界に転移することになった僕、羽島翔。 けれども相手の不手際で異世界に転移することになったにも関わらず、僕は巻き込まれた無能と罵られ勇者に嘲笑され、城から追い出されることになる。 けれども僕の人生は、巻き込まれたはずなのに勇者の力を使えることに気づいたその瞬間大きく変わり始める。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

7個のチート能力は貰いますが、6個は別に必要ありません

ひむよ
ファンタジー
「お詫びとしてどんな力でも与えてやろう」 目が覚めると目の前のおっさんにいきなりそんな言葉をかけられた藤城 皐月。 この言葉の意味を説明され、結果皐月は7個の能力を手に入れた。 だが、皐月にとってはこの内6個はおまけに過ぎない。皐月にとって最も必要なのは自分で考えたスキルだけだ。 だが、皐月は貰えるものはもらうという精神一応7個貰った。 そんな皐月が異世界を安全に楽しむ物語。 人気ランキング2位に載っていました。 hotランキング1位に載っていました。 ありがとうございます。

処理中です...