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お嬢様探偵絢子の誕生!
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悦子は、仕事の問題により自殺未遂に至ったものの、奇跡的に回復した、妻を亡くしている実業家の一人娘である絢(あや)子と仲良くなった。
いわゆるお嬢様である絢子は知性に溢れており、気品ある彫りの深い顔立ちはフランス人形を思い出させ、悦子と同様、大きな瞳は他の者を惹きつけたが、屈託の無い性格なので、嫌味を抱く者は無かった。
絢子の父は事業を再開し、絢子の献身的な支えもあり、軌道に乗った頃、絢子は悦子を父に紹介すると、絢子を介し、とんでもない提案をされた。
「…絢ちゃん、探偵事務所って、本当?」
悦子は絢子とともに常連となっていた、絢子と初めて会ったファミレスでドリンクを口にし、驚いた。
日本人離れした表情の絢子はニコニコ笑いながら、悦子と同様、ドリンクを少し飲んだ。
「…ええ、えっちゃんさえ良ければ、父が開いてみないかと言ってくれているの…ほら、駅前に空き店舗があるじゃない?あそこなんかいいんじゃないかって言うのよ…そうしたら、えっちゃんが所長で、私は所員にさせて頂くわ…今の世の中、何が起こるか分からないから、若いうちから探偵としての素養を育てておけば、いつしか何がしか役に立つはずだと父が熱弁してね…私も今回、父の件では本当、何が起こるか分からないと思い知ったし…えっちゃん、駄目かしら?」
悦子は満面の笑みをたたえながらもキリリとした表情を持つ絢子を見つめ、やはり笑顔になり、頷いた。
「…絢ちゃんのお父様がそう言って下さるなら、私に異論は無いわ…むしろ大歓迎よ!…だって、私、探偵になりたくて仕方ないんだもん…でも、私が所長にはなれないわよ…やっぱり所長は絢ちゃんで決まり!」
絢子は少し顔を赤くしながら、大きく首を振った。
「…ノンノン!…あ、ごめんなさい、いえいえ、それはいけないわ!…所長はえっちゃんよ!…私はえっちゃんには感服しているし、ぜひあなたから色々と習いたいの…お願いします!」
絢子が顔に似合わない黒々としたロングヘアーを軽くなびかせながら頭を下げたので、悦子は慌てたが、承知した。
「…分かったわ、有難う、絢ちゃん!…じゃあね、実は絢ちゃんに協力して貰いたいことがあって…私の知り合いの女性から頼まれたんだけど…」
絢子は悦子の話に俄然興味を持った。
悦子の知人のとある女性は夫が浮気をしているのではないかと疑っていた。
夫は度々海外に出張するのだが、実は国内に住む愛人がいて、そこに通っているのではないかと思っていたのだ。
何故、そのように考え始めたか…一番初めにおかしいと思ったのは、夫が持ち帰った洗濯物を見た時だった…そこには…。
「…日本の温泉宿の手拭いがあったらしいの…漢字で温泉の名前が印字されていたらしいのよ…その知り合いの女性がね、ワイシャツや下着、靴下、ハンカチなどを用意して、ボストンバッグの中に入れてあげたらしいんだけど、行く時には確かに無かったはずの温泉のタオルが何故、外国に行ったのに入っていたのかって不思議がってね…旦那さんに尋ねたら、お前、俺を疑うのかって、逆ギレされたらしいの…絢ちゃんは外国には何度も行っていると思ったので、何か分からないかなって考えたんだけど…」
悦子の話を頷きながら真剣に聞いていた絢子は目を閉じながら頭を巡らせると、やがて何か閃いたかのようにパッと見開いた。
「…えっちゃん、その旦那さん、パスポートは持ってるのかしら?」
悦子は残念そうな顔をした。
「…そこは抜かりないらしいわ、ちゃんと所持してるって…」
絢子も肩を落としたが、続けた。
「…じゃあ、その人って、どんな人かしら…英語は喋れるのかな?」
悦子はまたもや暗い表情になった。
「…ペラペラらしいわよ…絢ちゃんも確か英語やフランス語、ドイツ語も喋れるらしいわよね…その旦那さんもね、何ヶ国語か話せるみたい…」
絢子は少し悔しそうな顔をしたが、今度は悦子が続けた。
「…それでね、やたらと紳士的な面も持っていてね、いつも高価なお土産を買って来るそうよ…」
紳士、高価なお土産…絢子はそれだ!と直感した。
やはり悦子の知人女性の夫は浮気をしていた。
絢子は紳士的な人物が逆ギレしたと言うところに違和感を覚え、何か他におかしな点はないかと考えた。
そこで、高価なお土産と聞き、きっと海外のブランド品だろうと思い、悦子に知人女性から借りて来て貰った。
すると、そこに現れたるブランド物のバッグなどはお嬢様たる絢子でも騙されそうになるほどの精巧な偽物ばかりであったが、ブランド品を沢山持つ絢子が見たからこそ分かる謎解きでもあった。
悦子は絢子の「仕事」に満足した。
「…絢ちゃん、あのさ…」
「…ん、どうかしたの?」
「…いや、何でもない…」
金持ちのお嬢様である絢子が大衆的なファミレスでドリンクを美味しそうに飲むのを見て、この子は本当にお嬢様なのだろうかと思った悦子の頭には、それなら以前買ったブランド品が本物かどうか鑑定して貰うのはどうかとよぎったが、万一辛い結果を告げられたらどうすると不安になり、やめようと決めたのだった。
いわゆるお嬢様である絢子は知性に溢れており、気品ある彫りの深い顔立ちはフランス人形を思い出させ、悦子と同様、大きな瞳は他の者を惹きつけたが、屈託の無い性格なので、嫌味を抱く者は無かった。
絢子の父は事業を再開し、絢子の献身的な支えもあり、軌道に乗った頃、絢子は悦子を父に紹介すると、絢子を介し、とんでもない提案をされた。
「…絢ちゃん、探偵事務所って、本当?」
悦子は絢子とともに常連となっていた、絢子と初めて会ったファミレスでドリンクを口にし、驚いた。
日本人離れした表情の絢子はニコニコ笑いながら、悦子と同様、ドリンクを少し飲んだ。
「…ええ、えっちゃんさえ良ければ、父が開いてみないかと言ってくれているの…ほら、駅前に空き店舗があるじゃない?あそこなんかいいんじゃないかって言うのよ…そうしたら、えっちゃんが所長で、私は所員にさせて頂くわ…今の世の中、何が起こるか分からないから、若いうちから探偵としての素養を育てておけば、いつしか何がしか役に立つはずだと父が熱弁してね…私も今回、父の件では本当、何が起こるか分からないと思い知ったし…えっちゃん、駄目かしら?」
悦子は満面の笑みをたたえながらもキリリとした表情を持つ絢子を見つめ、やはり笑顔になり、頷いた。
「…絢ちゃんのお父様がそう言って下さるなら、私に異論は無いわ…むしろ大歓迎よ!…だって、私、探偵になりたくて仕方ないんだもん…でも、私が所長にはなれないわよ…やっぱり所長は絢ちゃんで決まり!」
絢子は少し顔を赤くしながら、大きく首を振った。
「…ノンノン!…あ、ごめんなさい、いえいえ、それはいけないわ!…所長はえっちゃんよ!…私はえっちゃんには感服しているし、ぜひあなたから色々と習いたいの…お願いします!」
絢子が顔に似合わない黒々としたロングヘアーを軽くなびかせながら頭を下げたので、悦子は慌てたが、承知した。
「…分かったわ、有難う、絢ちゃん!…じゃあね、実は絢ちゃんに協力して貰いたいことがあって…私の知り合いの女性から頼まれたんだけど…」
絢子は悦子の話に俄然興味を持った。
悦子の知人のとある女性は夫が浮気をしているのではないかと疑っていた。
夫は度々海外に出張するのだが、実は国内に住む愛人がいて、そこに通っているのではないかと思っていたのだ。
何故、そのように考え始めたか…一番初めにおかしいと思ったのは、夫が持ち帰った洗濯物を見た時だった…そこには…。
「…日本の温泉宿の手拭いがあったらしいの…漢字で温泉の名前が印字されていたらしいのよ…その知り合いの女性がね、ワイシャツや下着、靴下、ハンカチなどを用意して、ボストンバッグの中に入れてあげたらしいんだけど、行く時には確かに無かったはずの温泉のタオルが何故、外国に行ったのに入っていたのかって不思議がってね…旦那さんに尋ねたら、お前、俺を疑うのかって、逆ギレされたらしいの…絢ちゃんは外国には何度も行っていると思ったので、何か分からないかなって考えたんだけど…」
悦子の話を頷きながら真剣に聞いていた絢子は目を閉じながら頭を巡らせると、やがて何か閃いたかのようにパッと見開いた。
「…えっちゃん、その旦那さん、パスポートは持ってるのかしら?」
悦子は残念そうな顔をした。
「…そこは抜かりないらしいわ、ちゃんと所持してるって…」
絢子も肩を落としたが、続けた。
「…じゃあ、その人って、どんな人かしら…英語は喋れるのかな?」
悦子はまたもや暗い表情になった。
「…ペラペラらしいわよ…絢ちゃんも確か英語やフランス語、ドイツ語も喋れるらしいわよね…その旦那さんもね、何ヶ国語か話せるみたい…」
絢子は少し悔しそうな顔をしたが、今度は悦子が続けた。
「…それでね、やたらと紳士的な面も持っていてね、いつも高価なお土産を買って来るそうよ…」
紳士、高価なお土産…絢子はそれだ!と直感した。
やはり悦子の知人女性の夫は浮気をしていた。
絢子は紳士的な人物が逆ギレしたと言うところに違和感を覚え、何か他におかしな点はないかと考えた。
そこで、高価なお土産と聞き、きっと海外のブランド品だろうと思い、悦子に知人女性から借りて来て貰った。
すると、そこに現れたるブランド物のバッグなどはお嬢様たる絢子でも騙されそうになるほどの精巧な偽物ばかりであったが、ブランド品を沢山持つ絢子が見たからこそ分かる謎解きでもあった。
悦子は絢子の「仕事」に満足した。
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「…ん、どうかしたの?」
「…いや、何でもない…」
金持ちのお嬢様である絢子が大衆的なファミレスでドリンクを美味しそうに飲むのを見て、この子は本当にお嬢様なのだろうかと思った悦子の頭には、それなら以前買ったブランド品が本物かどうか鑑定して貰うのはどうかとよぎったが、万一辛い結果を告げられたらどうすると不安になり、やめようと決めたのだった。
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