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仕立て上げられた証人
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悦子はとある人物の病室にいたのだが、容態が急変し、帰らぬ人となってしまい、彼女の胸中には何とも言えないモヤモヤが残された。
話は1週間前に戻る。
悦子は、同級生であるA子から内密に聞いて欲しい話があるからと、放課後、校舎裏に呼び出された。
A子は生徒会に関わり、成績も優秀、スポーツも全国大会で活躍、出自も実業家のお嬢様と申し分の無い人物であったが、そんな彼女から悦子はある告白を受けることになった。
数日前、A子はB夫から呼び出しを受け、やはり放課後、誰もいない教室で2人だけで会っていた。
B夫はもじもじしていたが、A子が優しく、どうしたの?と尋ねると、ゆっくりと話し始めた。
早い話がA子のことを好きになったので、付き合ってくれないか?という愛の告白だったのだが、A子は断ったという。
B夫は真面目ではあったものの、イケメンでは無く、面食いのA子のお眼鏡にはかなわなかったのだろうが、A子には別に好きな男子がいたとのことで、B夫が撃沈したのは、ごく自然な成り行きではあった。
ところが、B夫は諦めようとせず、しつこくA子に言い寄り、遂には乱暴を働こうとしたそうだ。
悦子はA子が泣く泣くめくった学生服のそで下の腕に数本の引っ掻き傷を見て、痛々しく感じた。
そして、B夫の動きはヒートアップし、A子の服は引き裂かれそうになったため、A子は満身の力を込めて、B夫からの逃亡を試みたが、B夫はA子をはがいじめにしたので、無我夢中で暴れ、格闘の末、B夫は開いていた窓から落ちそうになり、事実、B夫の体は窓外に放り出されたが、間一髪、A子がB夫の両手を掴んだ。
しかし、B夫はA子よりもかなり大柄だったので、A子は力尽き、手を離した結果、B夫は転落し、複雑骨折を負い、意識不明となり、病院に運ばれた。
現に、校庭で運動をしていた生徒が、A子がB夫の手を掴んでいた光景を目にしていて、A子は警察に事情を聞かれ、悦子に話したことと同じことを語った。
A子は悦子の前でしくしくと涙を流したが、A子の気持ちがかなり複雑であることは確かだっただろう。
…自分が誘いを拒否しなければ、結果、B夫は無事だっただろうし、さらに、その日、B夫は大学進学の関係で、父親に紹介され、とある有名大学OBと会う予定だったらしく、B夫に済まないことをしたと、A子は後悔しきりだった。
悦子はA子を可哀想に感じたが、A子は髪を派手に染めており、耳にも同じく派手なピアスをし、爪にはきらびやかなネイルがほどこしてあり、イケイケギャル風のA子に対し、憐憫の情を持つのは違和感も覚えた。
最後にA子はこの件をぜひ解決して欲しいと頼み、悦子の両手をしっかりと掴んだのだが、A子の派手な手を見ると、また何とも言えない不思議な気持ちを持った。
やがて2人は別れたが、やはり何とも言えないモヤモヤを抱くことになった悦子であった。
話は現在に進み、悦子はお見舞いに来ていたB夫が意識不明のまま亡くなり、沈鬱な思いを抱くことになったのだ。
そして、色々と脳裏に浮かんだが、やはりA子に話しておくべきだと決心した。
「…あ、急に呼び出してごめんね…実は、きちんと話しておいたほうが良いと思ってね…先日、あなたが私に頼んだ件、私なりに解決したんだけど、聞いて貰える?…あのね、これはあくまでも私の推理なんだけど、亡くなったB夫君があなたを襲おうとしたとのことだけど、本当だったのかしら?…あなたに見せて貰った引っ掻き傷がね、私の頭に引っ掛かったのよ…あの日、確かB夫君は受験のため、お父さんのお知り合いの大学のかたと会う予定だったらしいけど、そんな大事な時に、あんな傷を負わすほど、爪をのばしておくものかしらと疑問に感じたのよ…それでもって、あなたの爪を見たら、立派な爪よね…それなので、もしかしたら、あなた自身の手で自分の腕に傷をつけたんじゃないかと考えたのよ…そうなってくると、あなたがB夫君に襲われたのは嘘だったんじゃないかと思えて来たの…それで、実は逆だったんじゃないかしら?…つまり、あなたがB夫君を好きになって、告白したけど、彼はあなたを振った…でもあなたは彼を諦めきれずに、しつこく迫った…彼は逃げようとして、あなたと揉み合いになり、窓から落ちそうになったけど、彼はあなたの腕を掴んだ…でもあなたは彼が憎くなって、腕を振り解いた…あくまでも想像よ、想像…残念ながら、B夫君は亡くなってしまったから、どうしようも無いけど、もし、私の話が正しかったとしたら、何故、あなたは私に嘘をついたのかしら?…これも想像だけど、あなたが窓から落ちそうになったB夫君の腕を掴んだ光景を他の人に見られたから、念のため私に嘘の話をしておいて、何かの時に役立たせようとしたんじゃない?…となると、さしずめ私は仕立て上げられた証人ていうところかしらね…あ、そうだ、あなたの傷、まだ治っていなかったら、警察でDNA鑑定して貰ってみない?…そうすれば、あなたの言ってることが本当かどうか、分かるわよ…あら、顔が青くなったけど、大丈夫?…あ、このファミレスからすぐの所に警察署があるから、これから行ってみようか?」
話は1週間前に戻る。
悦子は、同級生であるA子から内密に聞いて欲しい話があるからと、放課後、校舎裏に呼び出された。
A子は生徒会に関わり、成績も優秀、スポーツも全国大会で活躍、出自も実業家のお嬢様と申し分の無い人物であったが、そんな彼女から悦子はある告白を受けることになった。
数日前、A子はB夫から呼び出しを受け、やはり放課後、誰もいない教室で2人だけで会っていた。
B夫はもじもじしていたが、A子が優しく、どうしたの?と尋ねると、ゆっくりと話し始めた。
早い話がA子のことを好きになったので、付き合ってくれないか?という愛の告白だったのだが、A子は断ったという。
B夫は真面目ではあったものの、イケメンでは無く、面食いのA子のお眼鏡にはかなわなかったのだろうが、A子には別に好きな男子がいたとのことで、B夫が撃沈したのは、ごく自然な成り行きではあった。
ところが、B夫は諦めようとせず、しつこくA子に言い寄り、遂には乱暴を働こうとしたそうだ。
悦子はA子が泣く泣くめくった学生服のそで下の腕に数本の引っ掻き傷を見て、痛々しく感じた。
そして、B夫の動きはヒートアップし、A子の服は引き裂かれそうになったため、A子は満身の力を込めて、B夫からの逃亡を試みたが、B夫はA子をはがいじめにしたので、無我夢中で暴れ、格闘の末、B夫は開いていた窓から落ちそうになり、事実、B夫の体は窓外に放り出されたが、間一髪、A子がB夫の両手を掴んだ。
しかし、B夫はA子よりもかなり大柄だったので、A子は力尽き、手を離した結果、B夫は転落し、複雑骨折を負い、意識不明となり、病院に運ばれた。
現に、校庭で運動をしていた生徒が、A子がB夫の手を掴んでいた光景を目にしていて、A子は警察に事情を聞かれ、悦子に話したことと同じことを語った。
A子は悦子の前でしくしくと涙を流したが、A子の気持ちがかなり複雑であることは確かだっただろう。
…自分が誘いを拒否しなければ、結果、B夫は無事だっただろうし、さらに、その日、B夫は大学進学の関係で、父親に紹介され、とある有名大学OBと会う予定だったらしく、B夫に済まないことをしたと、A子は後悔しきりだった。
悦子はA子を可哀想に感じたが、A子は髪を派手に染めており、耳にも同じく派手なピアスをし、爪にはきらびやかなネイルがほどこしてあり、イケイケギャル風のA子に対し、憐憫の情を持つのは違和感も覚えた。
最後にA子はこの件をぜひ解決して欲しいと頼み、悦子の両手をしっかりと掴んだのだが、A子の派手な手を見ると、また何とも言えない不思議な気持ちを持った。
やがて2人は別れたが、やはり何とも言えないモヤモヤを抱くことになった悦子であった。
話は現在に進み、悦子はお見舞いに来ていたB夫が意識不明のまま亡くなり、沈鬱な思いを抱くことになったのだ。
そして、色々と脳裏に浮かんだが、やはりA子に話しておくべきだと決心した。
「…あ、急に呼び出してごめんね…実は、きちんと話しておいたほうが良いと思ってね…先日、あなたが私に頼んだ件、私なりに解決したんだけど、聞いて貰える?…あのね、これはあくまでも私の推理なんだけど、亡くなったB夫君があなたを襲おうとしたとのことだけど、本当だったのかしら?…あなたに見せて貰った引っ掻き傷がね、私の頭に引っ掛かったのよ…あの日、確かB夫君は受験のため、お父さんのお知り合いの大学のかたと会う予定だったらしいけど、そんな大事な時に、あんな傷を負わすほど、爪をのばしておくものかしらと疑問に感じたのよ…それでもって、あなたの爪を見たら、立派な爪よね…それなので、もしかしたら、あなた自身の手で自分の腕に傷をつけたんじゃないかと考えたのよ…そうなってくると、あなたがB夫君に襲われたのは嘘だったんじゃないかと思えて来たの…それで、実は逆だったんじゃないかしら?…つまり、あなたがB夫君を好きになって、告白したけど、彼はあなたを振った…でもあなたは彼を諦めきれずに、しつこく迫った…彼は逃げようとして、あなたと揉み合いになり、窓から落ちそうになったけど、彼はあなたの腕を掴んだ…でもあなたは彼が憎くなって、腕を振り解いた…あくまでも想像よ、想像…残念ながら、B夫君は亡くなってしまったから、どうしようも無いけど、もし、私の話が正しかったとしたら、何故、あなたは私に嘘をついたのかしら?…これも想像だけど、あなたが窓から落ちそうになったB夫君の腕を掴んだ光景を他の人に見られたから、念のため私に嘘の話をしておいて、何かの時に役立たせようとしたんじゃない?…となると、さしずめ私は仕立て上げられた証人ていうところかしらね…あ、そうだ、あなたの傷、まだ治っていなかったら、警察でDNA鑑定して貰ってみない?…そうすれば、あなたの言ってることが本当かどうか、分かるわよ…あら、顔が青くなったけど、大丈夫?…あ、このファミレスからすぐの所に警察署があるから、これから行ってみようか?」
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