上 下
4 / 19

消えたカバン

しおりを挟む
悦子と親友の国子は学校帰りにアイスクリーム屋に寄り、買ったアイスクリームを近くの公園で食べることにした。

初めはベンチに座って食べていたが、国子が雀を見つけたため、2人はベンチを離れ、アイスクリームのコーンの部分を少し分けてあげた、

その間、5分くらいだっただろうか、ベンチに戻ると、置いておいた国子のカバンが無くなっていた。

悦子らの高校のカバンは指定されたものとなっていて、色は紺色だった。

悦子のカバンは置いてあったが、国子のものは消えていたので、国子はアレ?と言い、悦子もン?と思い、2人は周辺を探し回ったが、どこにも見当たらなかった。

悦子は誰かが持ち去ったのではないかと思い、周りを見渡してみると、ちょうど高校の帰宅時間だったため、公園内の道を1人だったり、数人の女子高生が固まってワイワイ話しながら歩いているのが見えたが、皆、同じようなカバンを持っていたので、国子のカバンかどうか、判別出来なかった。

悦子は頭の中で色々考えていたが、我に帰ると、国子が半べソをかいていた。

悦子は国子の肩を抱きながら、ベンチに座らせて、ハンカチを取り出し、国子の涙を拭ってあげた。

私たちがベンチを離れたのは、ほんの数分だったから、カバンが羽を生やして飛んでいかない限り、勝手に消えてしまうことは有り得ないので、やはり誰かが盗んだとしか思えない……悦子は国子を介抱しながら、考えていた。

やがて、少し落ち着いた国子は悦子に伴われ、歩き出し、学校に戻ってみようかとも思ったが、警察に行く方が良い気がして、交番に向かうことにした。

ヨロヨロと歩く国子を抱き抱えながら、悦子は親友を苦しめた輩に強い憤りを覚えていたものの、グッと気持ちを抑えて、歩いていると、公園を出た少し先に雑木林があるのだが、悦子は何気無く中を覗いてみた。

すると、林を少し入った所に何かが落ちているのが見え、もしやと思った悦子が、国子とともに近付くと、そこには紛れもない国子のカバンが落ちていた。

国子は目を輝かせ、悦子は良かった!と声に出して歩み寄り、何か盗まれていないか、国子はすぐにカバンの中をあさってみたが、どうやら何も失くなってはいないようだった。

ただ、ファスナーが開いていたのを悦子は見逃さなかった。

悦子は国子と別れて、帰宅し、晩御飯を食べ、風呂に入ると、ベッドの中に潜り込んで、考えていた。

誰かが国子のカバンを持ち去ったことは明白であり、中を見たことは間違いないはずだが、何も盗まれていなかった……悦子は何か引っかかっていた。

やがて、悦子は、自分のカバンの中を見ようとベッドを抜け出した。

国子のカバンのことばかり考えていたので、帰宅しても自身のカバンは放ったままにしていたが、中を見てみると、悦子のカバンの中も特に変化は無かった。

悦子は再びベッドに入ると、また考え始めた。

今日は国子との帰り道では、公園に行く前はアイスクリーム屋へ寄っただけだったが、2人でアイスクリームを選び、買っていた間の10分くらいはアイスクリーム屋の外の表のベンチにカバンを置いておいた。

不用心かと思ったが、国子が放り投げるように置いたので、特別、貴重品が入っていなかったため、悦子も国子のカバンと並べて置いたのだが、その間、アイスクリーム屋には誰も来なかった。

となると、誰にも見られずに、私と国子のカバンに触れることが出来た人物がいたかも知れない、と悦子は推理した。

ただ、国子のカバンは盗まれ、中を物色された形跡があったが、中身に変わりは無かった。

悦子は頭を巡らせていたが、やがて、彼女なりの結論に達した。

犯人はアイスクリーム屋の前に置かれていた国子のカバンの中に何かを入れたが、悦子と国子がアイスクリーム屋を後にしようとした際、それぞれのカバンを持つのを見て、勘違いしたことに気が付いた。

つまり、悦子のカバンに入れようとした何かを、間違えて国子のカバンに入れてしまったのではないか……そして、焦った犯人は悦子たちを尾け、悦子らが公園に寄り、ベンチにカバンを置いたので、これ幸いと思い、国子のカバンから何かを取り出そうとしたが、悦子らが戻って来たので、慌てて、国子のカバンを持って、逃げてしまったのではないか……。

そして、誰にも見られないように、雑木林の中で国子のカバンをあさり、何かを取り出し、カバンを置いて、去ったのではないか……。

しかし、推理が正しいか否か、確かめようが無かったので、悦子は諦めて、ため息をついたのだった。

時を同じくして、悦子や国子のクラスメイトである1人の男子高生が、悦子のものと勘違いして、国子のカバンに入れた便箋をビリビリに破り、大きなため息をついていた。

それは悦子に対する思いの丈を込めた手紙であったのだが、悦子は知る由も無かったのである。


(*Prologueに投稿したものを多少修正し、再投稿したものです)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あなたのサイコパス度が分かる話(短編まとめ)

ミィタソ
ホラー
簡単にサイコパス診断をしてみましょう

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本

しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。 関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください ご自由にお使いください。 イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

シチュボ(女性向け)

身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。 アドリブ、改変、なんでもOKです。 他人を害することだけはお止め下さい。 使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。 Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ

ジャングルジム【意味が分かると怖い話】

怖狩村
ホラー
僕がまだ幼稚園の年少だった頃、同級生で仲良しだったOくんとよく遊んでいた。 僕の家は比較的に裕福で、Oくんの家は貧しそうで、 よく僕のおもちゃを欲しがることがあった。 そんなある日Oくんと幼稚園のジャングルジムで遊んでいた。 一番上までいくと結構な高さで、景色を眺めながら話をしていると、 ちょうど天気も良く温かかったせいか 僕は少しうとうとしてしまった。 近くで「オキロ・・」という声がしたような、、 その時「ドスン」という音が下からした。 見るとO君が下に落ちていて、 腕を押さえながら泣いていた。 O君は先生に、「あいつが押したから落ちた」と言ったらしい。 幸い普段から真面目だった僕のいうことを信じてもらえたが、 いまだにO君がなぜ落ちたのか なぜ僕のせいにしたのか、、 まったく分からない。 解説ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 近くで「オキロ」と言われたとあるが、本当は「オチロ」だったのでは? O君は僕を押そうとしてバランスを崩して落ちたのではないか、、、

処理中です...