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女子高生探偵悦子の推理〜大きな事件〜
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今回はいつもよりシリアスな話になる。
学校のとある昼休み、他のクラスの同級生である郁夫が皮膚科に行ったことを、自分と同じクラスで、隣の席に座る親友の国子から悦子は聞いた。
郁夫は生徒会長であり、かつイケメン、また、裕福な家の一人息子である。
郁夫は無遅刻無欠席だったのだが、初めて休んだ理由が皮膚科受診だったので、ちょっとした話題となっていた。
「それで、何故、皮膚科へ行ったのか、知ってる?」
悦子の質問に国子はコソコソと話した。
「手が腫れて、痛みがあるらしいんだけど、どうも何かが刺さったらしいのよ。バラの棘かも」
悦子は首をひねった。
「素人が言い切れることではないけど、今まで全く休まなかった郁夫君がバラの棘に刺されて、来なくなるかしらね?」
国子はさぁという顔をした。
「でもさ、刺されたと聞くと、バラの棘じゃない?」
悦子は首をかしげた。
「どうしてバラと言い切れるの?棘があるのはバラだけじゃ……」
と言いかけて、悦子は目を輝かせた。
「そうか、彼の家は評判のバラ屋敷よね。なるほどね」
国子は少し偉そうな態度になった。
「でしょう?だからバラの棘じゃないかと思ったのよ」
悦子は国子の様子を無視して、頭を巡らせた。
前述したように、郁夫は金持ちの子どもなので、自宅も大きければ、庭も広い。
その庭には沢山のバラが咲いており、バラ屋敷の異名を取っていた。
だが、また悦子はいぶかしがった。
「と言っても、やっぱり、バラの棘かしら……」
すると、午後の授業のチャイムが鳴ったので、また話すことにした。
翌日の昼休み、悦子はまた国子から情報を得ることになった。
国子はまたコソコソと話し出した。
「あんたが考えていた通り、郁夫君の休んだ理由はバラの棘に刺されたんじゃないみたいよ」
悦子はそれみなさいという気持ちを抑えながら、親友に語りかけた。
「国子は情報通ね。で、何だったの?」
国子はさらに声をひそめた。
「多分、他の皆んなも知っていると思うんだけど、蜂に刺されたらしいわ」
悦子は口を開いた。
「もしかしてと思ったけど、そうだったのね。気の毒に……やっぱり自宅の庭で刺されたのかな?」
国子は首を横に振った。
「そうじゃないらしいわ。ほら、彼って、真面目な生徒会長だから、皆んなより早く登校して、雑務をこなしてるじゃない。どうやら蜂に刺された日も学校には来たらしいの。でも、学校の裏庭で蜂に刺されて、早々に帰ったみたい」
悦子は少し考えて、国子に質問した。
「じゃあ、どうして裏庭に行ったのか、分かる?生徒会の仕事の関係でかしら?」
国子はまた否定した。
「どうも誰かに呼び出されたらしいの。一緒にいた副会長から聞いたのだから、間違いないわ。下駄箱に紙が入っていて、それを読んで、行ったらしいんだけど、副会長、その文面を見たらしく、そこには「大木の下で待つ」って書いてあったそうよ……ほら、裏庭に大木があるじゃない。あの木のことだと思うんだけど、どうもそこに蜂の巣があったらしく、用務員さんが郁夫君が刺された朝に見つけたようなの。それで、先生に話が行き、早く登校していた郁夫君にも伝わったんじゃない?それで、蜂の巣がある裏庭に人が行くのは危ないと思い、生徒会としても見過ごせなかったので、郁夫君はそっと見に行ったんじゃないかな?」
悦子は否定的な顔をした。
「でも、郁夫君は誰かに呼び出されたんでしょ?それに、先生から裏庭に行くなと言われたと思うし、いくら彼が責任感の強い人間だからといって、わざわざ自分から危険な場所に行くとは思えないわ。と言うことは……」
悦子は頭を巡らせながら、言った。
「郁夫君は蜂の巣のことを知らなかったんじゃないかな。それで、先生から話を聞く前に、誰かに呼び出されて、裏庭に行ったと思うのよ。となると、断定は出来ないけど、その誰かは、大木に蜂の巣があることを知っていて、郁夫君を誘い出したのかも知れないわね。郁夫君と副会長が来る前、また、用務員さんが蜂の巣を見つける前に、すでに蜂の巣の存在を知っていて、郁夫君を呼び出した……」
国子は驚いた。
「じゃあ、まるで郁夫君が蜂に刺されるように仕向けたみたいに聞こえるけど、それが本当だとすると、これは事故じゃなくて、事件と言うこと?」
悦子は真剣な顔をして、頷いた。
「その可能性はあるわね」
国子は信じられないという顔をした。
その後、副会長に証人になって貰い、悦子と国子は先生に一部始終を話した。
先生も驚いたが、調査し、後日、ある人物が殺人未遂で逮捕された。
その人物が誰かは伏せるが、金銭トラブルで郁夫の親類に恨みを持っていて、富める親族である郁夫に矛先を向けたらしかった。
どうやら、その人物は、実際は違ったが、蜂は蜂でもスズメ蜂の巣だと思い込み、郁夫をたいへんな目に遭わせようと画策したとのことだ。
悦子と国子は、もしかしたら大事件に発展していたかも知れないと思い、身震いした。
(*Prologueに投稿したものを加筆など、多少修正し、再投稿したものです)
学校のとある昼休み、他のクラスの同級生である郁夫が皮膚科に行ったことを、自分と同じクラスで、隣の席に座る親友の国子から悦子は聞いた。
郁夫は生徒会長であり、かつイケメン、また、裕福な家の一人息子である。
郁夫は無遅刻無欠席だったのだが、初めて休んだ理由が皮膚科受診だったので、ちょっとした話題となっていた。
「それで、何故、皮膚科へ行ったのか、知ってる?」
悦子の質問に国子はコソコソと話した。
「手が腫れて、痛みがあるらしいんだけど、どうも何かが刺さったらしいのよ。バラの棘かも」
悦子は首をひねった。
「素人が言い切れることではないけど、今まで全く休まなかった郁夫君がバラの棘に刺されて、来なくなるかしらね?」
国子はさぁという顔をした。
「でもさ、刺されたと聞くと、バラの棘じゃない?」
悦子は首をかしげた。
「どうしてバラと言い切れるの?棘があるのはバラだけじゃ……」
と言いかけて、悦子は目を輝かせた。
「そうか、彼の家は評判のバラ屋敷よね。なるほどね」
国子は少し偉そうな態度になった。
「でしょう?だからバラの棘じゃないかと思ったのよ」
悦子は国子の様子を無視して、頭を巡らせた。
前述したように、郁夫は金持ちの子どもなので、自宅も大きければ、庭も広い。
その庭には沢山のバラが咲いており、バラ屋敷の異名を取っていた。
だが、また悦子はいぶかしがった。
「と言っても、やっぱり、バラの棘かしら……」
すると、午後の授業のチャイムが鳴ったので、また話すことにした。
翌日の昼休み、悦子はまた国子から情報を得ることになった。
国子はまたコソコソと話し出した。
「あんたが考えていた通り、郁夫君の休んだ理由はバラの棘に刺されたんじゃないみたいよ」
悦子はそれみなさいという気持ちを抑えながら、親友に語りかけた。
「国子は情報通ね。で、何だったの?」
国子はさらに声をひそめた。
「多分、他の皆んなも知っていると思うんだけど、蜂に刺されたらしいわ」
悦子は口を開いた。
「もしかしてと思ったけど、そうだったのね。気の毒に……やっぱり自宅の庭で刺されたのかな?」
国子は首を横に振った。
「そうじゃないらしいわ。ほら、彼って、真面目な生徒会長だから、皆んなより早く登校して、雑務をこなしてるじゃない。どうやら蜂に刺された日も学校には来たらしいの。でも、学校の裏庭で蜂に刺されて、早々に帰ったみたい」
悦子は少し考えて、国子に質問した。
「じゃあ、どうして裏庭に行ったのか、分かる?生徒会の仕事の関係でかしら?」
国子はまた否定した。
「どうも誰かに呼び出されたらしいの。一緒にいた副会長から聞いたのだから、間違いないわ。下駄箱に紙が入っていて、それを読んで、行ったらしいんだけど、副会長、その文面を見たらしく、そこには「大木の下で待つ」って書いてあったそうよ……ほら、裏庭に大木があるじゃない。あの木のことだと思うんだけど、どうもそこに蜂の巣があったらしく、用務員さんが郁夫君が刺された朝に見つけたようなの。それで、先生に話が行き、早く登校していた郁夫君にも伝わったんじゃない?それで、蜂の巣がある裏庭に人が行くのは危ないと思い、生徒会としても見過ごせなかったので、郁夫君はそっと見に行ったんじゃないかな?」
悦子は否定的な顔をした。
「でも、郁夫君は誰かに呼び出されたんでしょ?それに、先生から裏庭に行くなと言われたと思うし、いくら彼が責任感の強い人間だからといって、わざわざ自分から危険な場所に行くとは思えないわ。と言うことは……」
悦子は頭を巡らせながら、言った。
「郁夫君は蜂の巣のことを知らなかったんじゃないかな。それで、先生から話を聞く前に、誰かに呼び出されて、裏庭に行ったと思うのよ。となると、断定は出来ないけど、その誰かは、大木に蜂の巣があることを知っていて、郁夫君を誘い出したのかも知れないわね。郁夫君と副会長が来る前、また、用務員さんが蜂の巣を見つける前に、すでに蜂の巣の存在を知っていて、郁夫君を呼び出した……」
国子は驚いた。
「じゃあ、まるで郁夫君が蜂に刺されるように仕向けたみたいに聞こえるけど、それが本当だとすると、これは事故じゃなくて、事件と言うこと?」
悦子は真剣な顔をして、頷いた。
「その可能性はあるわね」
国子は信じられないという顔をした。
その後、副会長に証人になって貰い、悦子と国子は先生に一部始終を話した。
先生も驚いたが、調査し、後日、ある人物が殺人未遂で逮捕された。
その人物が誰かは伏せるが、金銭トラブルで郁夫の親類に恨みを持っていて、富める親族である郁夫に矛先を向けたらしかった。
どうやら、その人物は、実際は違ったが、蜂は蜂でもスズメ蜂の巣だと思い込み、郁夫をたいへんな目に遭わせようと画策したとのことだ。
悦子と国子は、もしかしたら大事件に発展していたかも知れないと思い、身震いした。
(*Prologueに投稿したものを加筆など、多少修正し、再投稿したものです)
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