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女子高生探偵悦子の推理〜律儀な自転車泥棒〜
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悦子は風邪をこじらせて、咳が出るようになり、学校を3日休んでいたのだが、だいぶ良くなったので、明日には登校出来そうだった。
そんな中、のど飴と、悦子の大好きなミルフィーユを持って、親友の国子がお見舞いにやってきた。
「風邪薬、飲んでる?」
「飲んでるよ。咳止めをね。それでも治らないようだったら、お医者さんに行こうと思ってたんだけど、何とかなりそう。有難ね」
「気にしないで。でさ、もしきつくないなら、聞いて欲しいことがあるんだけど……」
「どうしたの?」
「実はもう解決したんだけど、不思議なことがあってね。あんたが休み始めた日に、卓ちゃんから相談を受けてさ」
「あの大人しい卓ちゃんから、珍しいね」
「うん、そうなんだけどさ。卓ちゃんて電車で通学してるじゃん」
「そうね」
「それで、自宅から駅近くの駐輪場まで自転車で行くらしいんだけど、帰りにさ、自転車が無かったんだって」
「あら、たいへん。それでどうしたの?」
「あんたも言ったけど、卓ちゃんて大人しいからさ、騒ぎ立てるのも気が引けたらしく、駅前交番には行かずに歩いて帰ったんだって」
「ふんふん」
「そしたらさ、自宅の自転車置き場に自転車があったそうなのよ」
「えっ、良かったね」
「そうね。でも、盗まれたかも知れない自転車が何で家にあったのか、不思議がっててね」
「確かにね。家族には話したのかしら?」
「うん、でも、誰も知らなかったらしくてさ。じゃあ、誰がって、話なのよ」
「そっか……卓ちゃんの家から駅までどれくらいだっけ?」
「確か、自転車で20分くらいみたい」
「じゃあ、結構歩いたね」
「うん、4、50分って言ってたかな」
「かわいそうに」
「そうね。でもさ、不思議なことがまた起きたのよ」
「どうしたの?」
「次の日、つまり、昨日だけどね。また同じことが起きたんだって」
「えっ、また自転車が消えて、また現れたの?」
「そうなの。帰宅しようとしたら、駐輪場に無くて、家にあったんだって」
「それで?」
「さすがの卓ちゃんも家族に話して、警察に連絡しようか、迷ったらしいのよ」
「なるほど、大人しい卓ちゃんだけど、さすがに2日続くと……って感じかな?」
「さすが、察しがいいわね。それで、次の日、まぁ、今日だけどね、また帰りに自転車が無かったら、交番に行こうと思ってたらしいんだけど、あったって訳なのよ」
「良かったね!だけど、国子、あったって訳って言ったけど、あなたも見たって感じね」
「あんたにはかなわないな。そう、卓ちゃんがさ、気持ち悪いから私に同行してくれって頼んできてね。かわいそうだから、オッケーして、ついて行ったのよ。そしたら、置いてあったんで、卓ちゃん、恐縮してたわ」
「国子は頼りがいがあるから、お願いしたのよ。本当、良かったね。その話もしたくて寄ったのね」
「ばれたか。名探偵のあんたならさ、何か分かるかと思ってさ」
「じゃあ、聞きたいんだけど、卓ちゃんは自転車の件はあなたと家族にしか話してないことで間違いない?」
「うん、そうみたい」
「そっか……卓ちゃんて何人家族だっけ?」
「確か、お父さん、お母さん、それから、お姉さんがいるから、卓ちゃん合わせて、4人よ」
「なるほどね。両親は共働き?」
「おっ、よく分かるね。だけど、それがどうしたの?」
「ちょっと気になってね。お父さん、お母さんは自転車通勤?」
「確か車よ。電車通勤のお父さんをお母さんが車で駅まで乗せて行って、その足でお母さんは自分の職場まで車で行くみたい」
「そうなのね。お姉さんは仕事してるの?」
「えっと、フリーターみたいよ」
「なるほど。ちなみにお姉さんはバイト先まで歩き?」
「確か、駅前のコンビニだから、自転車みたい」
「そう……じゃあ、お姉さんの自転車、最近、壊れたか、盗まれたかした?」
「よく分かるわね。壊れたって、卓ちゃんから聞いたよ」
「そっか……それで、分かってたらでいいんだけど、家族仲はどうなのかしら?」
「うーん、よく分からないけど、卓ちゃんは私たちと同じ歳だし、思春期のお年頃でしょ。しかも物言わぬ人間だから、あまり喋らないかも知れないわよね」
「……となると、多分、お姉さんが犯人よ。自転車が壊れたから、コンビニまで歩いて行ったのよ。お母さんは働いてるから、車の送迎はきついだろうし、お父さんはお母さんに送って貰ってるから関係ないと思うし。で、推察だけど、恐らくバイトで疲れたから、卓ちゃんには内緒で帰りは卓ちゃんの自転車で帰ったのよ。お姉さんだから、何となく卓ちゃんがどこに自転車を止めているかとか、卓ちゃんの自転車も分かっていたんじゃない。でも、卓ちゃんが怖がって警察に言おうとしたから、やめたのよ。お姉さんも疲れていただろうから、責めない方がいいけど、内緒ごとの無いように、姉弟の絆を深めた方がいいかもね」
「凄いわ!やっぱり、あんた名探偵よ」
「いえいえ……でも、一度やってみたかったんだ、アームチェア・ディテクティブと言ってね、私が現場に行かなくても、他の人の話を聞いて、事件を解決するのよ」
「おみそれしました」
「じゃあ、ミルフィーユ、食べよっか」
(*Prologueに投稿したものを加筆など、多少修正し、再投稿したものです)
そんな中、のど飴と、悦子の大好きなミルフィーユを持って、親友の国子がお見舞いにやってきた。
「風邪薬、飲んでる?」
「飲んでるよ。咳止めをね。それでも治らないようだったら、お医者さんに行こうと思ってたんだけど、何とかなりそう。有難ね」
「気にしないで。でさ、もしきつくないなら、聞いて欲しいことがあるんだけど……」
「どうしたの?」
「実はもう解決したんだけど、不思議なことがあってね。あんたが休み始めた日に、卓ちゃんから相談を受けてさ」
「あの大人しい卓ちゃんから、珍しいね」
「うん、そうなんだけどさ。卓ちゃんて電車で通学してるじゃん」
「そうね」
「それで、自宅から駅近くの駐輪場まで自転車で行くらしいんだけど、帰りにさ、自転車が無かったんだって」
「あら、たいへん。それでどうしたの?」
「あんたも言ったけど、卓ちゃんて大人しいからさ、騒ぎ立てるのも気が引けたらしく、駅前交番には行かずに歩いて帰ったんだって」
「ふんふん」
「そしたらさ、自宅の自転車置き場に自転車があったそうなのよ」
「えっ、良かったね」
「そうね。でも、盗まれたかも知れない自転車が何で家にあったのか、不思議がっててね」
「確かにね。家族には話したのかしら?」
「うん、でも、誰も知らなかったらしくてさ。じゃあ、誰がって、話なのよ」
「そっか……卓ちゃんの家から駅までどれくらいだっけ?」
「確か、自転車で20分くらいみたい」
「じゃあ、結構歩いたね」
「うん、4、50分って言ってたかな」
「かわいそうに」
「そうね。でもさ、不思議なことがまた起きたのよ」
「どうしたの?」
「次の日、つまり、昨日だけどね。また同じことが起きたんだって」
「えっ、また自転車が消えて、また現れたの?」
「そうなの。帰宅しようとしたら、駐輪場に無くて、家にあったんだって」
「それで?」
「さすがの卓ちゃんも家族に話して、警察に連絡しようか、迷ったらしいのよ」
「なるほど、大人しい卓ちゃんだけど、さすがに2日続くと……って感じかな?」
「さすが、察しがいいわね。それで、次の日、まぁ、今日だけどね、また帰りに自転車が無かったら、交番に行こうと思ってたらしいんだけど、あったって訳なのよ」
「良かったね!だけど、国子、あったって訳って言ったけど、あなたも見たって感じね」
「あんたにはかなわないな。そう、卓ちゃんがさ、気持ち悪いから私に同行してくれって頼んできてね。かわいそうだから、オッケーして、ついて行ったのよ。そしたら、置いてあったんで、卓ちゃん、恐縮してたわ」
「国子は頼りがいがあるから、お願いしたのよ。本当、良かったね。その話もしたくて寄ったのね」
「ばれたか。名探偵のあんたならさ、何か分かるかと思ってさ」
「じゃあ、聞きたいんだけど、卓ちゃんは自転車の件はあなたと家族にしか話してないことで間違いない?」
「うん、そうみたい」
「そっか……卓ちゃんて何人家族だっけ?」
「確か、お父さん、お母さん、それから、お姉さんがいるから、卓ちゃん合わせて、4人よ」
「なるほどね。両親は共働き?」
「おっ、よく分かるね。だけど、それがどうしたの?」
「ちょっと気になってね。お父さん、お母さんは自転車通勤?」
「確か車よ。電車通勤のお父さんをお母さんが車で駅まで乗せて行って、その足でお母さんは自分の職場まで車で行くみたい」
「そうなのね。お姉さんは仕事してるの?」
「えっと、フリーターみたいよ」
「なるほど。ちなみにお姉さんはバイト先まで歩き?」
「確か、駅前のコンビニだから、自転車みたい」
「そう……じゃあ、お姉さんの自転車、最近、壊れたか、盗まれたかした?」
「よく分かるわね。壊れたって、卓ちゃんから聞いたよ」
「そっか……それで、分かってたらでいいんだけど、家族仲はどうなのかしら?」
「うーん、よく分からないけど、卓ちゃんは私たちと同じ歳だし、思春期のお年頃でしょ。しかも物言わぬ人間だから、あまり喋らないかも知れないわよね」
「……となると、多分、お姉さんが犯人よ。自転車が壊れたから、コンビニまで歩いて行ったのよ。お母さんは働いてるから、車の送迎はきついだろうし、お父さんはお母さんに送って貰ってるから関係ないと思うし。で、推察だけど、恐らくバイトで疲れたから、卓ちゃんには内緒で帰りは卓ちゃんの自転車で帰ったのよ。お姉さんだから、何となく卓ちゃんがどこに自転車を止めているかとか、卓ちゃんの自転車も分かっていたんじゃない。でも、卓ちゃんが怖がって警察に言おうとしたから、やめたのよ。お姉さんも疲れていただろうから、責めない方がいいけど、内緒ごとの無いように、姉弟の絆を深めた方がいいかもね」
「凄いわ!やっぱり、あんた名探偵よ」
「いえいえ……でも、一度やってみたかったんだ、アームチェア・ディテクティブと言ってね、私が現場に行かなくても、他の人の話を聞いて、事件を解決するのよ」
「おみそれしました」
「じゃあ、ミルフィーユ、食べよっか」
(*Prologueに投稿したものを加筆など、多少修正し、再投稿したものです)
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