30 / 37
便利な世の中は死を招く
しおりを挟む
「えーっとね、今や人間の姿をしたロボットが活躍するといったように、全く便利になったものだけど、今年は西暦2×××年だから、まぁ、今は昔ってやつでさ、それもかなり昔、この先に古びた小学校があるんだけどね、その学校に通っていた女の子が縄跳びをしながら帰宅していたら、途中で転んで縄が首に巻きついちゃって、死んじゃったんだって……それでね」
「うわーっ!」
私は飛び退いた。
ここは同じ女子高に通う友人宅で、その友人曰く、まぁ、いわゆる怪談話を聞いていたのだが、本題に入る前に部屋の外から別の友人が大声で入ってきたので、驚いたという訳だ。
実は、外から入ってきた友人は初めから仕込み要員で、ドアに耳をへばりつかせて、私をびっくりさせるタイミングを伺っていたようなのだが、あまりにも早い登場に、家の主たる友人は呆れ果てていた。
「もう、まだ早いわよ!まぁ、彼女、びっくり仰天してくれたから、良しとするけど、何かつまらないなぁ」
私は友人の仏頂面にクスクスと笑ったが、外から入ってきた友人は……真っ青な顔をしていた。
「……私もまだ早いと思ったんだけど、あ、あ、あ……」
キィー……閉まっていたドアがゆっくりと開いたかと思うと、シュッシュっと鳴る音が響き、誰かが縄跳びをしながら入ってきた。
すると、偶然、主人たる友人が大事にしていた洋服ダンスの上に飾ってあった陶器のフランス人形に縄が当たってしまった。
バリーン……見事に人形は落下し、粉々に砕けてしまい、見るも無惨な姿に変貌していた。
縄跳びをしていたのはどうやらおさげ髪のほっぺの赤い女の子らしかった。
女の子は縄が人形に引っかかってしまった拍子に仰向けに倒れたのだが、家の中は薄暗かったので、表情は分からなかったものの、痛い!との怒鳴り声は聞こえた。
突然、謎の女の子が現れたので、肝を潰してしまい、腰が抜けた状態になってしまった部屋に入ってきた友人を私は介抱しようとすると、今まで聞いたことの無い奇声を上げて、主人たる友人が縄跳びの女の子に向かって、罵詈雑言を浴びせかけた。
「ねぇ、このクソガキ!この人形はね、フランスの高名な彫刻家が作った、それは高い値段の品物なのよ!それをよくも壊してくれたわね!弁償しなさいよ!うーん、腹が立つ!エイ、もう、こうしてやる!」
主人たる友人は落ちていた縄をつかんだかと思うと、倒れた女の子の首に巻きつけ、思い切り絞め上げた。
私や部屋に入ってきた友人は女の子よりも怒り心頭の主人たる友人に恐れおののいたが、友人が人形のことを命の次に大事な物と言っていたのを思い出し、仕方ないとも感じた。
グヘッ!
縄で首を絞められた女の子は悲鳴を上げたが、主人たる友人を止めることはまず出来そうになく、私と部屋に入ってきた友人はただただ凝視しているだけだった。
そして、思い切り目を光らせて、大粒の汗をダラダラと垂らしながら、主人たる友人は縄を緩めることは無かった。
やがて、女の子は全く動かなくなり、主人たる友人がやっと手を離したので、縄は解き放たれた。
すると、部屋に入ってきた友人は今度は一目散に部屋から出て行き、私は主人たる友人をじっと見つめた。
私の視線に気付いたのか、主人たる友人はウフフと笑って、再度、床に落ちていた縄をゆっくりと拾い上げた。
そして、倒れている女の子を軽々と片手で起こすと、額にかかる髪の毛をどかし、その下にあるボタンを押したかと思うと、瞬く間に女の子は縮まってしまった。
「彼女、逃げちゃったのね……私の演技も凄かったでしょ?……あなたは縄跳びの女の子がロボットだって気付かなかった?」
私は首を横に振り、逃げ出した友人を可哀想に思っていると、突然、逃げ出した友人が戻ってきて、手には大きな斧が握られていた。
キャーッ!
私と主人たる友人が声を上げたのも虚しく、斧は次々と振り下ろされた。
グヘッ!と私。
グヘッ!と主人たる友人。
そして、私たちは意識を失った。
「あー、こんな遊び、つまらないなぁ!」
そう言って、私は斧で頭がズタズタになった2体のロボットの額ボタンを押し、縮ませた。
様々なシチュエーションを作って、連日私は所有する3体のロボットと戯れていたが、そろそろ飽きてきた。
ちなみに今日の私は、逃げ出した友人役。
他の3体に演じさせたのは、それぞれ女の子と主人たる友人と「私」だった。
そして、晩御飯を食べに、食堂に行くと、お母さんが倒れていた。
あ、いけない、だけど、ロボットって、3体以外にもいたんだっけ?……ん?あらら、ロボットだと思って、トンカチで頭を強く叩いてしまった相手は、何と、本当のお母さん!
まぁ、いいや、ロボットにお母さんに扮して貰えばいい話だから……。
いつからか、ロボットの後頭部の刺し穴に、例えばAという人物の情報の入ったUSBメモリーを挿入すれば、外観も内面もAそっくりなロボットが出来上がるという、便利な技術が開発された。
そして、ロボットは何度壊してもまた再生するから、コストもかからない。
ちなみに、フランス人形が壊れる音と似た音を録音しておいたものを流すように設定し、人形は陶器製に見せかけていたが、実は私が粘土で作ったまがい物だった。
と、私はハッとなり、手を叩くと、部屋に戻り、底の深い机の引き出しを開け、数百はあると思われるUSBメモリーをまさぐり始めた。
そして、ロボットと勘違いして、殺してしまったお母さんの体をバラバラにして山奥に埋めるべく、3体のロボットに私が付き合ってきた3人のマッチョ男子の情報を流し込んだのだった。
お母さん、また会おうね……私はマッチョ君らがせっせとお母さんを解体しているのを見て、お母さんを埋めた後、ロボットにお母さんの情報をすぐインプットさせようと思った。
好きな人間を間違えて殺めてしまっても、またロボットとなってよみがえらせることが出来るし、本当、便利で、心に優しい世界になったものだとしみじみと感じつつ、部屋のベッドの上で横になりながら、じゃあ、誰か殺っちゃおうかとほくそ笑む私がいた。
「うわーっ!」
私は飛び退いた。
ここは同じ女子高に通う友人宅で、その友人曰く、まぁ、いわゆる怪談話を聞いていたのだが、本題に入る前に部屋の外から別の友人が大声で入ってきたので、驚いたという訳だ。
実は、外から入ってきた友人は初めから仕込み要員で、ドアに耳をへばりつかせて、私をびっくりさせるタイミングを伺っていたようなのだが、あまりにも早い登場に、家の主たる友人は呆れ果てていた。
「もう、まだ早いわよ!まぁ、彼女、びっくり仰天してくれたから、良しとするけど、何かつまらないなぁ」
私は友人の仏頂面にクスクスと笑ったが、外から入ってきた友人は……真っ青な顔をしていた。
「……私もまだ早いと思ったんだけど、あ、あ、あ……」
キィー……閉まっていたドアがゆっくりと開いたかと思うと、シュッシュっと鳴る音が響き、誰かが縄跳びをしながら入ってきた。
すると、偶然、主人たる友人が大事にしていた洋服ダンスの上に飾ってあった陶器のフランス人形に縄が当たってしまった。
バリーン……見事に人形は落下し、粉々に砕けてしまい、見るも無惨な姿に変貌していた。
縄跳びをしていたのはどうやらおさげ髪のほっぺの赤い女の子らしかった。
女の子は縄が人形に引っかかってしまった拍子に仰向けに倒れたのだが、家の中は薄暗かったので、表情は分からなかったものの、痛い!との怒鳴り声は聞こえた。
突然、謎の女の子が現れたので、肝を潰してしまい、腰が抜けた状態になってしまった部屋に入ってきた友人を私は介抱しようとすると、今まで聞いたことの無い奇声を上げて、主人たる友人が縄跳びの女の子に向かって、罵詈雑言を浴びせかけた。
「ねぇ、このクソガキ!この人形はね、フランスの高名な彫刻家が作った、それは高い値段の品物なのよ!それをよくも壊してくれたわね!弁償しなさいよ!うーん、腹が立つ!エイ、もう、こうしてやる!」
主人たる友人は落ちていた縄をつかんだかと思うと、倒れた女の子の首に巻きつけ、思い切り絞め上げた。
私や部屋に入ってきた友人は女の子よりも怒り心頭の主人たる友人に恐れおののいたが、友人が人形のことを命の次に大事な物と言っていたのを思い出し、仕方ないとも感じた。
グヘッ!
縄で首を絞められた女の子は悲鳴を上げたが、主人たる友人を止めることはまず出来そうになく、私と部屋に入ってきた友人はただただ凝視しているだけだった。
そして、思い切り目を光らせて、大粒の汗をダラダラと垂らしながら、主人たる友人は縄を緩めることは無かった。
やがて、女の子は全く動かなくなり、主人たる友人がやっと手を離したので、縄は解き放たれた。
すると、部屋に入ってきた友人は今度は一目散に部屋から出て行き、私は主人たる友人をじっと見つめた。
私の視線に気付いたのか、主人たる友人はウフフと笑って、再度、床に落ちていた縄をゆっくりと拾い上げた。
そして、倒れている女の子を軽々と片手で起こすと、額にかかる髪の毛をどかし、その下にあるボタンを押したかと思うと、瞬く間に女の子は縮まってしまった。
「彼女、逃げちゃったのね……私の演技も凄かったでしょ?……あなたは縄跳びの女の子がロボットだって気付かなかった?」
私は首を横に振り、逃げ出した友人を可哀想に思っていると、突然、逃げ出した友人が戻ってきて、手には大きな斧が握られていた。
キャーッ!
私と主人たる友人が声を上げたのも虚しく、斧は次々と振り下ろされた。
グヘッ!と私。
グヘッ!と主人たる友人。
そして、私たちは意識を失った。
「あー、こんな遊び、つまらないなぁ!」
そう言って、私は斧で頭がズタズタになった2体のロボットの額ボタンを押し、縮ませた。
様々なシチュエーションを作って、連日私は所有する3体のロボットと戯れていたが、そろそろ飽きてきた。
ちなみに今日の私は、逃げ出した友人役。
他の3体に演じさせたのは、それぞれ女の子と主人たる友人と「私」だった。
そして、晩御飯を食べに、食堂に行くと、お母さんが倒れていた。
あ、いけない、だけど、ロボットって、3体以外にもいたんだっけ?……ん?あらら、ロボットだと思って、トンカチで頭を強く叩いてしまった相手は、何と、本当のお母さん!
まぁ、いいや、ロボットにお母さんに扮して貰えばいい話だから……。
いつからか、ロボットの後頭部の刺し穴に、例えばAという人物の情報の入ったUSBメモリーを挿入すれば、外観も内面もAそっくりなロボットが出来上がるという、便利な技術が開発された。
そして、ロボットは何度壊してもまた再生するから、コストもかからない。
ちなみに、フランス人形が壊れる音と似た音を録音しておいたものを流すように設定し、人形は陶器製に見せかけていたが、実は私が粘土で作ったまがい物だった。
と、私はハッとなり、手を叩くと、部屋に戻り、底の深い机の引き出しを開け、数百はあると思われるUSBメモリーをまさぐり始めた。
そして、ロボットと勘違いして、殺してしまったお母さんの体をバラバラにして山奥に埋めるべく、3体のロボットに私が付き合ってきた3人のマッチョ男子の情報を流し込んだのだった。
お母さん、また会おうね……私はマッチョ君らがせっせとお母さんを解体しているのを見て、お母さんを埋めた後、ロボットにお母さんの情報をすぐインプットさせようと思った。
好きな人間を間違えて殺めてしまっても、またロボットとなってよみがえらせることが出来るし、本当、便利で、心に優しい世界になったものだとしみじみと感じつつ、部屋のベッドの上で横になりながら、じゃあ、誰か殺っちゃおうかとほくそ笑む私がいた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
【短編】怖い話のけいじばん【体験談】
松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。
スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる