ショートショートホラーミステリー小説集

キタさん

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愛する彼女がいれば僕は何でもいい

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寝床の中で、高校生の僕は思っていた…彼女が欲しい…すると、突然、まぶしい光が当たったので、目を閉じ、数秒後、フッと目を開けると、そこは見たことの無い道端…少し離れた先から若い男女が歩いて来たので、僕は反射的に近くの木陰に隠れた。

男は同級生のあいつに凄く似ている…と言うか、顔だけで無く、仕草からもあいつに間違いないが、高校生では無い、明らかに20代だ。

女は、僕だけで無く、男子生徒の憧れの的であるあの子に間違いないが、やはり20代に成長していた。

そうか、ここは未来の世界で、あいつはあの子と付き合っているのか…と、別の方向から歩いて来る男も20代ぽいがやはり見た顔、見た体付き、見た動きをしている…僕だ…大人の僕に間違いない!

そして、僕は膨れているポケットに手を入れると、何故か、折りたたみナイフと覆面が入っていたので、おもむろに僕は覆面をかぶり、そっと男女に近付き、男に踊りかかり、心臓にナイフを突き刺した…女は悲鳴を上げ、僕は逃げたが、また別の木陰に身を潜め、男女をじっと見つめた。

女は血だらけの男の横で膝をつき、泣き叫びながら、携帯電話を取り出した…恐らく救急か警察に掛けているに違いない。

すると、未来の僕が走ってやって来て、女に声を掛けた…大丈夫?とか何とか言っているに違いないが、女はそんな成長した僕を見て、抱き付いた…おお、たまらん!…僕は僕自身がうらやましくて仕方無かった。

やがて、救急隊と警察官が到着…しかし、ここは未来の世界…実際には僕がいるはずの無い世界…僕は男を殺しても捕まらない気がしたため、男を刺し、未来の僕に女を助けさせた…きっと2人は惹かれ合うと確信して!

と、また光が当たり、目を閉じ、再度開けると、元の高校生に戻っていたが、20代の未来の僕に女と付き合えるように工作しても、過去は変わるはずが無いと思った。

僕は夢でも見ている気がしたが、再び床についた。


それから数日後、部屋で勉強していると、またもや光が目を閉じさせ、開けると、先日いた未来の同じ場所に立っており、また近くの木陰に隠れると、遠くから男女が歩いてくる…20代の僕とあの子だ。

ん、別の方向からも誰かが歩いて来る…よく見ると、死んだはずのあいつだった…しかも、顔は青白く、目には生気が無く、服は血だらけだ…もしや、あいつが生き返ったのではないか、ゾンビとなって!

僕はどうしようか迷っていると、近くにライフル銃が転がっている…僕は銃を手に取り、ゾンビの頭を撃った…映画で観たゾンビは体に弾を撃ち込まれて倒れても、また起き上がったが、頭を撃たれると動かなくなったからだ。

案の定、ゾンビは倒れ、これで未来の僕と彼女の仲は守られたと思い、安心したのも束の間、背後から何者かに襲われた…見たことの無い、別のゾンビで、僕は悲鳴を上げたが、体は食いちぎられた。

すると、またもや光が当たり、目を閉じ、再び開けると、勉強机に戻っていた…僕の体は元通りになっていたが、ひどく汗をかいていた。


また数日後、今度は電車に乗っていると、またもやまぶしい光が当たり、目を閉じ、開けると、またまた同じ場所にいた…と、また男女が歩いて来る…未来の僕と彼女に間違いない!

そして、反射的に別方向を見ると、またもや青白い顔の男が歩いて来る…やはりゾンビだ…その直後、僕は目を疑った…ゾンビは僕だった! 

すると、傍らにはやはりライフル銃があり、僕は頭が混乱したが、指を震わせながら、ゾンビとなった僕の頭を撃つと、倒れ、動かなくなったので、人間である僕と彼女の方を見ると、彼女を後ろに隠すようにして、未来の僕は、僕の方を睨んでいた。

僕は未来の自分に愛着を覚え、2人の前に出ていくと、何と未来の僕はいつの間にやらライフル銃を構えていて、僕を狙っていた…僕は自分の体を見た…血だらけの服、青白い手…そう、僕自身がゾンビとなっていたのだ。

また光が輝いた…。


目を開けると、やはり電車の中だった…また汗だらけとなっていた僕はシートに腰掛けていた。

膝に置いていた鞄の中から参考書を取り出し、目を下に向けると、何者かが僕の前に立った…顔を上げると…見たことのある顔が…そこにはゾンビと化した僕が…しかも後ろにはやはりゾンビとなったあの子がいた。

すると、いつの間にか、僕の鞄の中には拳銃が…僕は取り出し、ゾンビ…では無く、僕自身を撃った…。


目を開けると、横には僕の肩にもたれかかり、目を閉じている僕の彼女となったあの子がいて、彼女の顔は青白く、周りの乗客も皆、同様で、生気が全く無かった。

きっと、僕は自分を撃ち殺し、よみがえると、周りの人間を片っ端から食いちぎり、ゾンビにしてしまったのだろうか?…でも、ゾンビでも何でもいい、横には愛おしい彼女がいるのだから…。

そして、車窓の外には人の気配が全く感じられない、荒廃した風景が広がっていた。


(*Prologueに投稿したものを少々修正したものです)
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