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第2章: 三人の精霊と俺の魔導書【グリモワール】
魔導書の使い手
しおりを挟む世界でまだ数冊しか発見されていない禁断の魔法書ーーグリモワールーーその余りに強すぎる魔力で悪魔ですら手を触れないと言われている。
かつて世界を司ってきた神々もその禁断の魔導書を危険視してきた。
人間が神をも殺しかねない禁断の書物。
ーーーしかし、
近年、力の弱ってきた帝国は圧倒的な力が欲しかった。
各国も軒並み帝国に対抗できる軍事力を手に入れてきた事により帝国の支配下を断るようになってきたのだ。
その背景にあるのは、反帝国軍バンディッツだ。
反帝国を掲げる幾つのも国々が連携を取り帝国に対抗してきたのだ。
その為、帝国は徐々に力を無くしてきていたーー
そこで帝国は、他国に報復させる手段として選んだのがグリモワールだった。
世界新聞社に多額の報酬を出し探させたのだ。
☆
ここにグリモワールを使いこなす人間がいる。
帝国宮廷魔術師 エレンシア・セフィーナ
見た目は完全に金髪の幼女である。
実年齢は、二十歳と言われているが誰も真実を知らない。難しい性格をしているので誰も彼女には近づかない、その為ほとんど一人で研究室にこもっている。
唯一彼女と話が出来るのは妹のミレニアだけだ。彼女は、帝国のメイドとして主に姉のお手伝いとして特別に雇われている。
彼女たちは数年前に連れてこられたのだ。
彼女たちは親に多額の報酬で帝国に売られた。
貧しい貧しい田舎の村で、その多額の報酬があれば村の人々の暮らしは豊かになる。
彼女たちは、何も言わずそのまま帝国に囚われることになったのだ。
エレンシアが大事に抱えている書物こそグリモワール。
彼女の見た目が十歳から変わらないのはその魔力の副作用とも言われているが真相は分からない。
帝国兵が本物のグリモワールかどうか確認しようと書物に触れて瞬間に体が蒸発するようにこの世から消えてしまった。
「安易に触れない方がいいわよ。これは姉さんにしか扱えない物よ」
その言葉にまわりの兵士たちは後退りした。
その中でただ一人、ヴィル・クランチェのみが不敵な笑みを浮かべていた。
☆
グリモワールを脅し文句に再び力を手に入れた帝国。
グリモワールを信じない国にはエレンシアを連れて行き神の鉄槌を下した。
エレンシアは人間兵器化していたーー
「エレンシア出番だ! 出てこい」
研究室のドアを叩く兵士、それは乱暴にドアが壊れてしまうんではないかと思うほどだ。
「・・・・・・」
研究室からは返事はない。
「エレンシアァァ!!出て来い!」
再び大声を上げる兵士。
そこに一つの影が写る。
「姉さんはもう戦場には行きませんよ」
ミレニアがそっと姿を現した。
「あ? 何言ってやがる。お前ら何のために帝国に雇われてると思ってんだ?」
「姉さんは、人殺しの兵器になるのつもりはないし、私もそんな姉さんを見てるのは辛いのよ!!」
「ふざけんな! それ以外にお前らに何の価値があるんだ!」
ミレニアの頬に拳を殴りつける兵士。
「ーーーー!」
吹き飛び廊下に倒れこむミレニア。
スッ、と研究室のドアが開いた。
「エレンシアやっと出て、 ーーーーっ!!」
下を向き表情こそ見えないが彼女は禍々しい魔力のオーラを身に纏っていた。
「妹にこれ以上手を出すな・・・」
「え、え、エレンシアこれにはーー」
「・・・コロス」
「待ってくれ、エレンシア俺はおれは」
「ーーーーー!!!」
兵士は姿形なくこの世から消滅した。
「ね、姉さん・・・」
地面に座り込んで目を点にしているミレニア。
「もう大丈夫よ。これからは姉さんがあなたのそばに居て守ってあげるからね」
ミレニアに近づき頭を撫でるエレンシア。
「姉さん?」
「あなたは何も心配しなくていいのよ」
それから彼女は他の者との接触を一切拒み研究室にこもっているのだった。
ミレニアも一度も入ったことのない研究室、彼女はそこで何をしているのか・・・。
☆
研究室の前の冷たく長い廊下に足音が響く。
研究室の前を過ぎた時、小さな喋り声が廊下に木霊した。
「ヴィル、あの部屋は何の部屋なの?」
「あの部屋は魔法や魔術などの研究室だ」
「あの部屋にヤバい感じの魔力を感じたわよ。それも二つね」
「ほお、グリモワール以外にも・・・」
想像もしてない答えに少し驚いたヴィル。
「ぐりもわーる?」
顎に人差し指を当て首を傾げた。
ミリアのあどけない仕草に思わず笑みを浮かべたヴィル。
「ふふ、知らなくても良いこともあるんだよ」
「ふーん。 まっ、あの部屋には近づかない事ね。私みたいな下等級悪魔や精霊そして人間なんかは一瞬で蒸発して消えちゃうわ」
ミリアは両手を広げ首を左右に振るような仕草を見せた。
「ああ、覚えておこう」
どこまでも続く長い廊下の闇の向こうにヴィルとミリアは消えって行ったーー
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