上 下
80 / 216
三人の精霊と悪魔教団の書・魔導武闘会編

アーサー登場

しおりを挟む

予選は波乱もなく順調に円卓の魔導士たちが勝ち上がっていく展開だ。

魔法騎士団を夢見てアヴァロンまでわざわざ出向いた人たちにとっては今回のこのサプライズゲストは予想外以外の不運な展開だ。

Dグループは円卓の魔導士が唯一いないグループ。 気合の入る選手たちここでの注目選手はアーサーではなく白馬の騎士と呼ばれている魔法騎士団に一番近いと言われているトマス・モルドレッド。

トマスは金髪のイケメン騎士で女性に大人気だ。

いつもファンの女性に囲まれている。

当然ーーDグループの断トツ人気で勝ち抜け候補だ。

「ランスロットは流石だな。 無傷で余裕の予選突破で誰一人傷つけずに勝つのは圧巻だな」

観客もランスロットの圧巻の戦いの余韻に浸っている。

「お待たせしました! 再び実況はマイアです。宜しくネ」

選手以上に人気者の実況のもふもふ姉妹。

「Dグループの注目選手はトマス選手ですね。 今回から解説をお呼びしております。円卓の魔導士の一人メイザースさんにお越しくださっております。 トマス選手に対抗出来そうな選手はDグループにいるでしょうか?」

「そうですねえ、 いると言えばいるのだよ。楽しみにしていましょう」

意味深のある言い方をするメイザース。

「ーーでは、Dグループ試合開始!!」

バァァンとドラの音が会場に響きわたったーー

★  ★  ★

アーサーは精霊たちを体内に隠している。

エンペラーアイを使っている間はルナも体内に入れてリンクテレパシーも使えるのだ。

Dグループの選手たちはトマスに夢中になりアーサーには眼中にない様子だった。

「あんなにデカデカとアーサー・ペンドラゴンと選手名が出てるのに無視とはーー」

キルケーは首を傾げる。

「無理も無いわよ、トマスのあの人気は異常だからね」

トマスコールが地響きにように会場を後押しするーー 女性の悲鳴にも似た声援を受けてトマスは次々に相手を倒していくーー

「どこがカッコイイのか私には分からん」

キルケーは呆れ顔で会場を見つめる。

「私も全然興味ないわ。あんな女みたいなモヤシ男ーー」

メーディアも目を細くして興味なさそうに会場を見つめている。

アーサーはステージの隅で未だボーッと立っている。

「アーサー様、全然相手戦って来ませんね」

リサがリンクテレパシーで話しかけてきた。

「ああ、完全に無視された感じだな。 まあ、これはこれでこっちも都合が良いな」

「暇なの」

「この程度の相手なら一撃で仕留められますわ」

エルザ、ルナもヤル気満々だ。

「出来れば手の内を見せずに勝ちたいと言うのがアーサー様の考えですね」

シルフィーが悟った。

「その通りだね。 徐々に少なくなってきたよ」

アーサーも少し身構えて戦況を見守っている。

「さあ、Dグループも大詰めになって来ました! トマス選手が次々に攻めてくる選手たちを倒してついに残り選手も僅かになって来ました。解説のメイザースさんここまでの戦いにいかがでしょうか? 」

「今のところ何もしてませんね」

「はい? 」

キョトンとする解説のマイア。

「私の注目選手はまだ何もしてないってことなのだよ」

マイアはその言葉頂きましたと言わんばかりにマイクを手に取ったーー

「おっと!メイザースさんから爆弾発言が飛び出したあーー何とメイザースさん注目選手が未だ残り選手の中にいるそうです」

湧き上がる会場ーー次第にざわめきが起きてくる。

残り選手の中にペンドラゴンの名ーー

「会場の人たちもようやく気付いたみたいね」

メーディアも少し鼻を高くしたーー

「何だい? 僕に太刀打ち出来る選手がいるってーー」

トマスも解説の声に反応しあたりを見渡した。

しかしーーそんな感じの魔力を持った選手がいる気配は感じなかった。

「面倒だな、炙り出してやるよ! 」

トマスの魔力が高まるーー

「エルザ準備してくれ」

「任せてなの」

トマスの体が光輝くーー女性ファンから溢れんばかりの歓声が上がるーー

星屑の流星ライトニングスターダスト

天空より無数の光の矢が降り注ぐーー次々と倒れる選手たち。

中には障壁を貼るがそれを突き破るトマスの光の矢ーー

注目選手の名は伊達ではなくほぼ勝利とみて拍手が贈られていたーー

濛々と砂けむりが上がり倒れている選手たちーー立っている選手は一人も居ないと確信しているのかトマスは観客に向かって手を振っていた。

しかしーー

「おっと! トマス選手まだ勝利のガッツポーズには早いぞ。 まだ一人余裕で立っている選手がいますーーアーサー・ペンドラゴン選手だあ」

騒然とする会場ーーキルケーやメーディア、リリス、メイザースは当然といった表情で見ていた。

「ーーペンドラゴンだって? 君がかい。全く魔力を感じないんだが」

トマスはイラっとしているーー勝利を確定と勘違いして恥じをかかされたからだ。

「あいにく魔力は全くなく魔法は使えないんだよ」

アーサーは肩をすくめて笑って余裕をみせた。

それを見て更にイラつくトマスーー

「マグレでたまたま生き残ったのに何だその余裕な笑みはーー次で決めてやる!」

トマスの手が輝き魔力が高まるーー

「再びトマス選手が仕掛けるーー アーサー選手太刀打ち出来るのか? 」

熱い実況に応えるように盛り上がる会場ーー

「喰らえーー 光の衝撃波シャイニングフォース

光の輝く特大な流星がまるで隕石のようにアーサーに向かって落下した。

吹き上がる砂けむりと衝撃音に会場は騒然となったーー

「これは決まったかあ? アーサー選手に直撃だ」

「いやいや、全然でしょ。 アーサーきゅんはまだ実力の1パーセントも出してないのだよ」

メイザースは不敵な笑みを浮かべたーー

「少しやり過ぎたかーー悪く思うなよ」

トマスは砂けむりの向こうに向かって呟いたーー

背を向けて去ろうとするとーー

「何がやり過ぎたんだ? 俺は全然無傷だぜ」

「なんだとーー!!」

振り返り砂けむりが晴れたステージを見つめると金色の瞳を輝かせたアーサーが無傷で立っているーー

そしてーー具現化した精霊が四人アーサーの周りで輝きながら浮いていたーー

「何とアーサー選手の周りに精霊が四人!」

騒然となる会場ーー

「ーーさて、こっちから仕掛けさせてもらうよ」

顔を歪めるトマスーー

アーサーがパチンと指を鳴らすとシルフィーが前に出て魔力を高めたーー

「大いなる大地に流れる風の民よ 我にチカラをーー アサルト グリフィン」

  シルフィーから具現化した風の化身の大きな鷹が放たれるーー


「ーーーー!! 」

まさに一撃だったーー

風の鷹に飲まれたトマスは会場の壁にめり込んで気絶したーー

会場から割れんばかりの拍手とトマスへの悲鳴とブーイングなど色んなモノが飛び交ったーー

「Dグループ勝者はアーサー選手です」

アーサーは少し照れ臭そうに頬を掻きながら会場を後にしたーー

会場の中二階から戦況を見ていたマーリン。

金色の瞳エンペラーアイの持ち主、シーサーの息子で間違いわね」

マーリンは納得したような何かを悟ったような表情をして消えて行ったーー

Dグループでの波乱は大きな話題となって会場を大いに盛り上げたーー

そして、アーサーがシーサーの息子だと全員が確信したのだった。


ーー 余裕の予選突破 ーー
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

いや、あんたらアホでしょ

青太郎
恋愛
約束は3年。 3年経ったら離縁する手筈だったのに… 彼らはそれを忘れてしまったのだろうか。 全7話程の短編です。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...