上 下
33 / 216
三人の精霊と光の精霊の書

嬉しい・友達・大好き

しおりを挟む

「メルルが騎士なんて意外だったな。そんな風には全然みえなかったよ」

 アーサーは少し意表をつかれ疑い深くメルルをマジマジと見ていた。

(普通に可愛い猫だが・・・おっと、首絞められる)

 ムッとした顔つきでルナが噛みついた。

「メルルは、ウチの王国の最強騎士なんだからレインブーツ イン キャットと言われて今の国王を王座に導いたのもメルルなのよ」

「そうなのか。ところで何故、ウチの国に来たの? 他にも国は沢山あるのに」

「それは、同じ規模で城と呼ぶには小さな王宮で城下町があるだけの小規模な国の地形が我々が暮らすホーエンハイムと似ていたからにゃん。敵に攻められた時の対処法など参考にしようと来たのですにゃん」

「そして今、ホーエンハイムは今のメルルの話したとおり戦火にあり、今ある敵に狙われているのよ」

「ある敵?」

「新聖教団クルセイダーズの部隊、薔薇十字軍に狙われているのにゃん」

「魔女狩りを行い魔法王国クリスタルパレスを壊滅させた悪魔教団よ」

「何故そんな奴らがメルルたちの国に」

「私の元パートナーが愛して命がけで守った本物の魔女 リリスがいるからよ!」

「魔女・・・」

「その元パートナーこそメルルが登りつめさせた国王の息子 アクセル王子よ」

「元というのは?契約が切れたということなのか?」

「さっきも言った通りよ。リリスを守って亡くなったわ。 正確に言うとリリスを救う為に私と契約したのよ」

 アーサーは、聞かなくても良いことを聞いてしまったかな?と複雑な気持ちだった。

「敵に攻められてるのに、こんなにゆっくりしてて大丈夫なのか? メルルは最強の騎士なんだろ」

「貴方なかなか鋭い質問するわね。彼の命と引き換えに私と彼である禁呪の呪文を使ったのよ。それは擬似召喚魔法・大天使マリアを召喚させホーエンハイム全体に天の加護を貼ったのよ。そのおかげで魔族や邪悪な魔力を持った者の進入は出来なくなっているの」

「それなら安心じゃないか」

「それが、そうでもないのよ・・・」

 ルナが悲しそうで困ったような複雑な表情を浮かべている。

「大天使マリアの効果が消えかけてきているのにゃん。アクセルとルナの愛のチカラが弱まってるのですにゃ」

「私は今でも愛してる・・・ただ亡くなった人は何も言ってくれないし何もしてくれない・・・私一人の想いだけではもう維持出来ない」

 ルナは目にいっぱいの涙を浮かべている。

「そこで、ホーエンハイムに応援をお願いしたくきたのにゃん」

ルナは下を向いて涙を浮かべたまま勇気を振り絞り覚悟を決めた。

「こんな私が言うのも失礼かもしれないけど・・・リサ、エルザ、シルフィー私と一緒にホーエンハイムに来てほしい・・・今までーー」

「ルナ!!」

 ルナが話を最後までしようとした時に、リサが話しに割って入った。

ルナは目を丸くしてリサを見る。

「私達は友達でしょ? 友達は困ってる時に助け合う為にいるんだよ。ルナがずっと苦しかったの私達は知ってる。あの時の私達はそんなルナを助けてあげられなかった。 うんん、見て見ないフリをしてたのかも知れない。自分に自信が無かったから、ルナの心の痛みや悲しみを癒してあげることが出来ないと決めつけてた」

「今なら言えるの。ルナはひとりじゃなの」

「私達が居ますわ。一人で悩むことなんてないですし友達を頼って下さい」

「ルナ、友達に遠慮なんかしなくていいんだよ」

 三人の精霊は、立ち上がり目を輝かせてルナを見つめる。 

 ルナの消えないと思っていた十字架は今やっと消えた。

 ルナのずっと抱えてきた思いも、止まっていた時間も再び動き出した。

「ありがとう・・・ 嬉しい・・・そして ごめんね」

 ルナの目から一筋の雫がゆっくりと流れ落ちた・・・。

「うんん。私たちもずっと言えなかった。苦しかった・・・だから・・・ごめんね」

 四人は、恥ずかしいほど涙が止まらず流れ続けた。こんなに嬉しくて泣いたのは初めてだった。

「嬉しい時も、涙って出るんだね」

四人は泣きながら微笑んだ。

やっと言えた、ごめんねとありがとうを胸にしまって・・・。


「ルナ、良い友達をもったにゃん」

「うん。大好きな大切な友達よ」


ーー ありがとう 友達 ーー
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

いや、あんたらアホでしょ

青太郎
恋愛
約束は3年。 3年経ったら離縁する手筈だったのに… 彼らはそれを忘れてしまったのだろうか。 全7話程の短編です。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

処理中です...