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Message03: 鏡面戦線(終幕)
優梨奈誘拐事件⑤乙姫の暴走
しおりを挟む私、自宅警備警備なったの。それでね、適性検査でランクAだったんだよ。
可憐は才能あるんだな、凄いな。
今日はね、初めて社会ゾンビ倒したの、凄いでしょ?
可憐は凄いな、よかったな!
今日はね、同じ支部の双子の姉妹とお友達になったの。
よかったな、友達が出来て。
今日はねーーーー
お前、楽しそうでいいな・・・
俺はこんなとこに居るのにな。
お前は俺が居なくても平気なんだろ?
しょうちゃん何でそんな事言うの?
犯罪者の今後の人生なんて目に見えてるここを出ても仕事なんてない。
結局俺はお前のお荷物になるだけさ。
そんな事ないよ、私はしょうちゃんとーー
もうウンザリなんだよ。
お前のリアルの外の話なんて聞きたくないんだよ。
私はしょうちゃんの為に・・・
俺のためとか重いんだよ。
悪けどもうここに来なくていいからーー
しょうちゃん、何で?
私、また一人になっちゃうよ。
そんなこと言わないでよ。
しょうちゃん・・・行かないで・・・
私の幸せはあなたと一緒に過ごすこと、それを思い描くだけでどんな事も頑張れたし耐えてこれたの。
あなたを失ったら私はこれからどうやって過ごして行けばいいの。
しょうちゃん・・・
この指輪は嘘だったの?
私のこと嫌いになったの?
私は今でもこれからもあなたのことをーー
ごめん、可憐。
お前は俺じゃなくてもっと良い人と出逢って幸せになってくれ。
何年もお前を待たせるのが辛いんだ。
何もしてあげれない自分が虚しい。
こんなに頑張って自分のことを大切に思ってくれる人は他にはいない、俺には勿体無い位だ。
可憐、俺のことは忘れていいからな・・・
乙姫可憐の心の亀裂ーー
最後の翔太の言葉は可憐の耳には届いていない。
不安定な精神を保つ為に可憐は傍若無人に振る舞う。誰かに命令や暴言を吐き捨てることでストレスを発散してきた。
ただ、自分の思い通りにならなくなった瞬間に思い浮かぶのは翔太の姿。
彼を想うことで可憐は今まで頑張って来れたのだからーー
翔太の言葉が心の亀裂を産み、精神を崩壊させる。
『俺のためとか重いんだよ。
悪けどもうここに来なくていいから』
その言葉が耳から離れない。
「しょうちゃん何で? しょうちゃん何で?しょうちゃん何で? しょうちゃん、しょうちゃん、しょうちゃん、しょうちゃん、しょうちゃん、しょうちゃん、しょうちゃん、
何でよ!!」
乙姫可憐の精神暴走が始まったーー
ランクA底無しの魔導力が尽きるまで暴れまわる、敵味方の識別が出来ないため、誰彼構わず攻撃し続け、破壊し続ける。
今の乙姫可憐は無双状態だ。
★ ★ ★
テレポートした先は公園敷地内を出たところだった。
「ーー助かったよ、ありがとう優梨奈」
「う、うん。 お兄ちゃんのためだもん」
顔を紅くする優梨奈。それを見たエリカは微妙な表情を浮かべて目を細める。
「第九支部厄介な相手だぞ神崎。 双子を分裂させないとあの攻撃はなかなか防げない」
「ーーっだな」
カケルとキーが考え込んでいると、
「・・・keyくん? だよね」
「ーーーーちいちゃん?」
初めての対面だったーー
「やっと会えたね、嬉しい」
千夏は目をうるうるさせて見つめる。
「うん。 俺も会いたいとずっと思ってた。思ってた通りのちいちゃんだよ」
頬を掻きながら照れ臭そうにするキー。
「・・・私、可愛くないから残念だった?」
「そんなことないよ! ーーかわ・・・いいよ」
千夏の頭に撫でながら明後日を向いているキー。
千夏は顔を真っ赤にして嬉しそうに微笑んでいた。
「良いっすね、青春っスね」
柊はそんな二人の光景を指をくわえて羨ましそうに眺めていた。
「柊さんも彼女欲しいんですか?」
「俺は誰の者でもない! 全ての女子の男だ」
カイトは一歩退いた。
カケルとキーが第九支部との交戦に備えて話していると、感知能力に長けているエリカがいち早く異変に気付くーー
「カケちゃん、乙姫可憐の魔導力が凄い勢いで上昇中よ」
「ーーどういうことだ? 誰かと戦っているのか」
「そういう訳でもなさそうなのよ。ただ、魔導力はどんどん大きく膨れあがってるわよ」
エリカは焦る??
優梨奈と千夏はそっと公園内を覗くと第九支部のメンバーと早坂姉妹が魔導障壁を貼っているのが目に映った。
「魔導障壁?」
首を傾げる優梨奈。
「あそこ、ジャングルジムの前ーー」
千夏の指を指す方向には今にも暴れ出しそうなほどもがき苦しむ乙姫の姿が見えた。
「乙姫可憐・・・」
魔導力感知出来ない優梨奈でも圧倒的な威圧感が伝わってくるのが分かる。
もし標的にでもされたらまず勝ち目はないのが目に見えてわかるほどだ。
「お兄ちゃんに報告をーー」
優梨奈が動き出した瞬間、乙姫が動き出した。
声にならない奇声を上げこちらに向かってくる。
「優梨奈!!みんな衝撃に備えてーー」
千夏は魔導障壁をとっさに貼るーー
優梨奈はその場に伏せた。
千夏の言葉に第十二支部のメンバー達も身構える。
乙姫は巨大な衝撃波を放つーー余りの威力に少し離れた第九メンバーの魔導障壁ごと吹き飛ばす。
凄まじい衝撃音が周辺一帯にひびきわたる。
公園内の四分の一が吹き飛んだ。
剥き出しになった公園、周りを囲っていた、木々や花壇は跡形も無く消え去った。
第九支部のメンバーは公園からかなり吹き飛ばされ道路に散り散りに倒れ込んでいる。少なからず魔導障壁で直撃は避けられたようだ。
第十二支部のメンバーは少し吹き飛んだが千夏のエリアウォールでそこまでのダメージは無かったようだ。
「ーー姫ちゃん」
「・・・ダメよ、ゆず行ってはいけないわ」
「姫ちゃん・・・」
吹き飛んだ衝撃で倒れている早坂姉妹、柚葉が立ち上がり乙姫の元に向かおうと起き上がる。
彼女達が吹き飛んだそのすぐ側には第十二支部のメンバーたちの姿がーー
「ーー!! 神崎カケル・・・」
その声にカケルが振り返る。
「早坂・・・」
混じり合う視線の先には暴走する乙姫の姿が。
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