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45話
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「ルア、僕の部屋に行こう?」
「かしこまりました」
ルアと手を繋いだまま階段を上っていく。
それを止めるものは誰もいなかった。
部屋の扉を閉めると2人は同時に笑い出す。
「ルア!すごかったな!あんな啖呵を切って!」
「ふふ、貴方こそ。ルークス様?」
「んー?ふふっ」
「私はただ貴方様が大好きだからそう言っただけ、当たり前のことを言ったまでです。それよりも・・・ルークスのあの言葉がどんなに嬉しかったか」
ルアは心から嬉しそうに笑うと、ルークスの頬に自分のそれをぴたりと当てた。
「僕もだよ、ルア」
2人が笑いあう中、ふと、パチン、という音が近くで聞こえた気がした。
なんだ?とルークスが顔を上げかけたとき。
突然2人の足下がぐらりと揺れた。
「うわっ!?」
咄嗟にルアが支えてくれなければ間抜けに床に転げていただろう。
立っていられる程度ではあるが足下、というか空間全体がぐわんぐわんと揺れている。
「な、なんだ!?」
何とか少し体勢を立て直したルークスは、すぐルアのことを心配し顔を見上げた。
「ルア!・・・・・・え?」
「ああ、ルークス。驚かせてしまってすみません」
予想を裏切り、ルアは花の咲くような晴れやかな笑顔のままだった。そしてこのセリフ・・・
「これ・・・ルアの仕業?」
恐る恐るといったルークスの質問に返ってきたのは、力強い頷きだった。
「この屋敷に残る理由はもはやありませんでしょう。私が準備していた家にこのまま転移します」
「え?転移ってそんな簡単にできることなの?というか家って何?待って待って待って!」
「ふふふ、ルークスの家だと思って寛いでくださいね」
そう言ってルアがルークスを抱きしめれば、次の瞬間にはもうそこは見慣れぬ森の中だった。
「これが・・・転移?」
「はい」
「すごい…」
「ふふ」
ルアにとってみれば大したことはないようだったが、初めての体験のルークスは目を丸くしてきょろきょろと辺りを見回すばかりだ。
ルアもルークスが落ち着くためならと、それを見守っていた。
しばらくの間そうして過ごしていた2人だったが、ルークスがハッと顔を上げてルアに話しかけた。
「そういえば家って・・・
「ンナァッ」
ルークスの声を遮るように足元から鳴き声がした。
見下ろすと、耳の短めなうさぎのような動物が2人を見上げている。ただし3ツ目だし尻尾は花弁のように5つに裂けている。魔物で間違いないだろう。
「ああ。ほら」
魔物の存在を認識したルアが指をさしだす。すると魔物がそれに飛びつき勢いよく咥えこんだ。
「えっ」
「魔力を分け与えてるんです。ご安心を」
魔物は案外すぐにルアの指から離れ地面に降り立った。
小さな体の周りをキラキラとした光が包み、やがて吸い込まれるように輝きが落ち着く。
「先程の転移はこの魔物の能力です。私が出来たら良かったのですが、こういった特異な能力はそれに特化した魔物の方が確実なので」
「そ、そうなんだ」
随分ルアに飼い慣らされているようで、彼の足元を歩き回っていた魔物はルアの指先の動きひとつで森の奥へと消えていった。
「さ、お待たせしました。参りましょうか、私たちの家へ」
そう言ってルアはルークスの手を取る。
ルークスはそれに応えるように強く握り返した。
「うん!」
「かしこまりました」
ルアと手を繋いだまま階段を上っていく。
それを止めるものは誰もいなかった。
部屋の扉を閉めると2人は同時に笑い出す。
「ルア!すごかったな!あんな啖呵を切って!」
「ふふ、貴方こそ。ルークス様?」
「んー?ふふっ」
「私はただ貴方様が大好きだからそう言っただけ、当たり前のことを言ったまでです。それよりも・・・ルークスのあの言葉がどんなに嬉しかったか」
ルアは心から嬉しそうに笑うと、ルークスの頬に自分のそれをぴたりと当てた。
「僕もだよ、ルア」
2人が笑いあう中、ふと、パチン、という音が近くで聞こえた気がした。
なんだ?とルークスが顔を上げかけたとき。
突然2人の足下がぐらりと揺れた。
「うわっ!?」
咄嗟にルアが支えてくれなければ間抜けに床に転げていただろう。
立っていられる程度ではあるが足下、というか空間全体がぐわんぐわんと揺れている。
「な、なんだ!?」
何とか少し体勢を立て直したルークスは、すぐルアのことを心配し顔を見上げた。
「ルア!・・・・・・え?」
「ああ、ルークス。驚かせてしまってすみません」
予想を裏切り、ルアは花の咲くような晴れやかな笑顔のままだった。そしてこのセリフ・・・
「これ・・・ルアの仕業?」
恐る恐るといったルークスの質問に返ってきたのは、力強い頷きだった。
「この屋敷に残る理由はもはやありませんでしょう。私が準備していた家にこのまま転移します」
「え?転移ってそんな簡単にできることなの?というか家って何?待って待って待って!」
「ふふふ、ルークスの家だと思って寛いでくださいね」
そう言ってルアがルークスを抱きしめれば、次の瞬間にはもうそこは見慣れぬ森の中だった。
「これが・・・転移?」
「はい」
「すごい…」
「ふふ」
ルアにとってみれば大したことはないようだったが、初めての体験のルークスは目を丸くしてきょろきょろと辺りを見回すばかりだ。
ルアもルークスが落ち着くためならと、それを見守っていた。
しばらくの間そうして過ごしていた2人だったが、ルークスがハッと顔を上げてルアに話しかけた。
「そういえば家って・・・
「ンナァッ」
ルークスの声を遮るように足元から鳴き声がした。
見下ろすと、耳の短めなうさぎのような動物が2人を見上げている。ただし3ツ目だし尻尾は花弁のように5つに裂けている。魔物で間違いないだろう。
「ああ。ほら」
魔物の存在を認識したルアが指をさしだす。すると魔物がそれに飛びつき勢いよく咥えこんだ。
「えっ」
「魔力を分け与えてるんです。ご安心を」
魔物は案外すぐにルアの指から離れ地面に降り立った。
小さな体の周りをキラキラとした光が包み、やがて吸い込まれるように輝きが落ち着く。
「先程の転移はこの魔物の能力です。私が出来たら良かったのですが、こういった特異な能力はそれに特化した魔物の方が確実なので」
「そ、そうなんだ」
随分ルアに飼い慣らされているようで、彼の足元を歩き回っていた魔物はルアの指先の動きひとつで森の奥へと消えていった。
「さ、お待たせしました。参りましょうか、私たちの家へ」
そう言ってルアはルークスの手を取る。
ルークスはそれに応えるように強く握り返した。
「うん!」
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