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44話
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「おい、聞いてるのか!?」
ルアの様子に更に頭に血が上った父がルークスの襟首を掴む。
その腕を横から掴んで止めたのは……母だった。
「……あなた」
そう言って母が父の腕にそっと手を置くと、父は苦虫を噛み潰したような顔で舌打ちをして手を離した。
母はルークスを涙の残った冷たい目で見下ろしながら口を開く。
「お父様とお母様から直々にお話があります。逃げずにお聞きなさい」
両親からの圧に耐えきれず思わず俯いた顔を、ルークスは意地でぐっと上に向けて見せた。
それをまるで汚らわしいものでも見るような目で見ながら母はこう言った。
「私たちはこれ以上お前と関わりたくない。これ以上不幸を呼び込まれるなどごめんなのです」
「だが、我が家から次男を追い出したとなれば家名に傷がつく。それにお前にはルベリオの行方も吐いて貰わなくてはならない。お前は一生自室の中で過ごし私たちに従うように」
父も母に続いてそう言い放つ。
「……かしこまりました」
2人の冷たい目に耐えきれず、ルークスはそう答えることしかできなかった。
「そして、ルア。ルークスには金輪際関わらないよう、お前には別の仕事を与える。お前は優秀だからな。家のために働け」
「は?」
「え……っ!」
父の言葉に反応したルアとルークスの声が重なった。
ルークスは動揺を隠しきれないでいた。
過去はルアがいた。
ルアだけがいてくれた。
それ無しにあの暗い部屋でどれくらい正気を保っていられるだろうか。
ルークスの目の前が真っ暗になる。
「お断りいたします」
場の空気を断ち切るような凛とした声。
それは、他ならぬルークスから発されたものだった。
暗く覚悟の決まった目をしたルークスは居住まいをただし、すっと両親の目を見つめた。
「私からルアを奪うことは何者にもできません。そして私たちはそれを許しません」
今まで大人しくいいなりだった次男の反抗に、両親や屋敷の人間は皆固まってしまい、じりじりと後ずさりする者さえでてきている。
数秒前とは別人のように堂々と立つルークスの肩をルアが支えるようにして隣に立った。
「私はルークス様のお傍にいるためにこの屋敷にやってきた身。どんな手を使ってでもルークス様のお傍を離れることはありません。」
ルアはきっぱりとそう言った。
しかし表情は主人の言葉に骨抜きになっているのが隠しきれていない。
あと少しでうっとりとルークスに垂れ掛かりそうだ。
「…だがお前がそばにいたところでルークスがお前のもとにも不幸を呼ぶだけだろう!金輪際関わらないようにするのが一番良いと思うが」
父のその言葉をルアは鼻で笑った。
「私達が出会ってからもう数年が経ちました」
「は?」
「可愛らしかったルークス様は青年に近づかれご立派に」
「おまえは何を言っているんだ」
「これだけ、誰よりもお傍にいた私はこの屋敷の誰よりも幸せでございます」
そんなルアの答えに呆気にとられた父が間の抜けた声を出す。
そんな父を無視して、ルアはルークスの横にたちそっと手を引く。
「それでは、私どもは失礼いたします」
ルアの様子に更に頭に血が上った父がルークスの襟首を掴む。
その腕を横から掴んで止めたのは……母だった。
「……あなた」
そう言って母が父の腕にそっと手を置くと、父は苦虫を噛み潰したような顔で舌打ちをして手を離した。
母はルークスを涙の残った冷たい目で見下ろしながら口を開く。
「お父様とお母様から直々にお話があります。逃げずにお聞きなさい」
両親からの圧に耐えきれず思わず俯いた顔を、ルークスは意地でぐっと上に向けて見せた。
それをまるで汚らわしいものでも見るような目で見ながら母はこう言った。
「私たちはこれ以上お前と関わりたくない。これ以上不幸を呼び込まれるなどごめんなのです」
「だが、我が家から次男を追い出したとなれば家名に傷がつく。それにお前にはルベリオの行方も吐いて貰わなくてはならない。お前は一生自室の中で過ごし私たちに従うように」
父も母に続いてそう言い放つ。
「……かしこまりました」
2人の冷たい目に耐えきれず、ルークスはそう答えることしかできなかった。
「そして、ルア。ルークスには金輪際関わらないよう、お前には別の仕事を与える。お前は優秀だからな。家のために働け」
「は?」
「え……っ!」
父の言葉に反応したルアとルークスの声が重なった。
ルークスは動揺を隠しきれないでいた。
過去はルアがいた。
ルアだけがいてくれた。
それ無しにあの暗い部屋でどれくらい正気を保っていられるだろうか。
ルークスの目の前が真っ暗になる。
「お断りいたします」
場の空気を断ち切るような凛とした声。
それは、他ならぬルークスから発されたものだった。
暗く覚悟の決まった目をしたルークスは居住まいをただし、すっと両親の目を見つめた。
「私からルアを奪うことは何者にもできません。そして私たちはそれを許しません」
今まで大人しくいいなりだった次男の反抗に、両親や屋敷の人間は皆固まってしまい、じりじりと後ずさりする者さえでてきている。
数秒前とは別人のように堂々と立つルークスの肩をルアが支えるようにして隣に立った。
「私はルークス様のお傍にいるためにこの屋敷にやってきた身。どんな手を使ってでもルークス様のお傍を離れることはありません。」
ルアはきっぱりとそう言った。
しかし表情は主人の言葉に骨抜きになっているのが隠しきれていない。
あと少しでうっとりとルークスに垂れ掛かりそうだ。
「…だがお前がそばにいたところでルークスがお前のもとにも不幸を呼ぶだけだろう!金輪際関わらないようにするのが一番良いと思うが」
父のその言葉をルアは鼻で笑った。
「私達が出会ってからもう数年が経ちました」
「は?」
「可愛らしかったルークス様は青年に近づかれご立派に」
「おまえは何を言っているんだ」
「これだけ、誰よりもお傍にいた私はこの屋敷の誰よりも幸せでございます」
そんなルアの答えに呆気にとられた父が間の抜けた声を出す。
そんな父を無視して、ルアはルークスの横にたちそっと手を引く。
「それでは、私どもは失礼いたします」
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