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29話
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「・・・っルア!!」
ルークスはそう叫ぶと同時に飛び起きた。
嫌な夢を見た。
ルアが消えてしまう夢。
ルークスは慌てて周囲を見渡す。
「はい、ルークス」
「ルア!」
カーテンを開けたところなのだろう。窓際からルアがにこやかに近寄ってくる。
「ルア、あの」
「さあ、急いで身支度を。今日はいつもよりさらにお寝坊さんでしたから」
「え、あ、うん」
「えっと、ルア」
「忘れ物はないですか?遅刻なさらないようにしてくださいね。さ、いってらっしゃいませ」
「え。いってきます・・・?」
明らかに会話を避けられている。
ルークスは悔しそうに歯ぎしりをした。
だがあの態度で、昨夜の出来事が現実だと確かめられた。正直あれも夢だったのではないかと思っていたのだ。
それにしても、あんなに避けるなんて。
結局ルークスは学校に着くまで悶々と考え込んでいた。
「おはよう・・・ラディオス?」
「ん~」
なんとか始業時間に間に合ったルークスが教室に入って真っ先に見たのは、ぐったりと机に張り付いた友の姿だった。
自分の机にカバンを置きながら、ラディオスに声をかける。
「どうしたんだ、一体」
「ん~」
頭だけを動かしてこちらを見たその表情は胡乱げで、ルークスは少し心配になる。
「ルークス、俺あれかもしれない」
「なに」
「恋煩い」
「は?」
思いのほか冷たい声が出てしまったが、いつものように文句は飛んでこない。
ルークスはいよいよ本気で心配になってしまった。
「恋煩いでそんなになってるっていうのか?」
「そう」
「・・・相手は?学校の子か?」
「たぶん。制服着てるから」
「?名前は?」
「分からない。聞いても教えてくれないんだ」
しゅん、とした友の姿にルークスは内心頭を抱える。あまりにも情報が少なすぎやしないか。
ルークス自身の悩みも広義でいえば恋煩いなのかもしれないが、相手と原因がはっきりしてる分ラディオスよりマシかもしれないとこっそり思う。
「そんな子とどうやって出会ったんだ?」
「裏庭あるだろ。俺登校の時裏庭を通るんだけど」
「うん」
「そこで時々同じ木の根元に座ってるんだ」
「それだけ?」
「すごく可愛いんだよ。それで話しかけて・・・時々話す」
じゃあ最近会えないからそんなにしょげているのかと問いかければ否定が返ってきた。
聞けば今朝会ったばかりだという。
「いつも話してる時はすごく楽しいしドキドキするんだけど、その反動みたいに別れたらどっと身体が重くなるんだ。こんな短時間で恋しくなるなんて俺も重症だよ」
そう言ってラディオスは、ふぅ、と重々しい溜息をつく。
その顔色は土のようだ。
「それにしても顔色が悪いぞ。今日は帰った方がいい」
「でもカバン・・・」
「僕が代わりに受け取っておくから。明日渡す」
「うぅ。・・・それじゃあ頼む」
「1人で帰れるか?」
ラディオスはふらりと立ち上がると、ルークスの問いに片手をあげて応えた。そのまままたふらりふらりと教室の扉へ向かっていく。
いつも元気な分、どうも調子が狂う。
ルークスはいつもよりずっと退屈な1日を過ごした。
ルークスはそう叫ぶと同時に飛び起きた。
嫌な夢を見た。
ルアが消えてしまう夢。
ルークスは慌てて周囲を見渡す。
「はい、ルークス」
「ルア!」
カーテンを開けたところなのだろう。窓際からルアがにこやかに近寄ってくる。
「ルア、あの」
「さあ、急いで身支度を。今日はいつもよりさらにお寝坊さんでしたから」
「え、あ、うん」
「えっと、ルア」
「忘れ物はないですか?遅刻なさらないようにしてくださいね。さ、いってらっしゃいませ」
「え。いってきます・・・?」
明らかに会話を避けられている。
ルークスは悔しそうに歯ぎしりをした。
だがあの態度で、昨夜の出来事が現実だと確かめられた。正直あれも夢だったのではないかと思っていたのだ。
それにしても、あんなに避けるなんて。
結局ルークスは学校に着くまで悶々と考え込んでいた。
「おはよう・・・ラディオス?」
「ん~」
なんとか始業時間に間に合ったルークスが教室に入って真っ先に見たのは、ぐったりと机に張り付いた友の姿だった。
自分の机にカバンを置きながら、ラディオスに声をかける。
「どうしたんだ、一体」
「ん~」
頭だけを動かしてこちらを見たその表情は胡乱げで、ルークスは少し心配になる。
「ルークス、俺あれかもしれない」
「なに」
「恋煩い」
「は?」
思いのほか冷たい声が出てしまったが、いつものように文句は飛んでこない。
ルークスはいよいよ本気で心配になってしまった。
「恋煩いでそんなになってるっていうのか?」
「そう」
「・・・相手は?学校の子か?」
「たぶん。制服着てるから」
「?名前は?」
「分からない。聞いても教えてくれないんだ」
しゅん、とした友の姿にルークスは内心頭を抱える。あまりにも情報が少なすぎやしないか。
ルークス自身の悩みも広義でいえば恋煩いなのかもしれないが、相手と原因がはっきりしてる分ラディオスよりマシかもしれないとこっそり思う。
「そんな子とどうやって出会ったんだ?」
「裏庭あるだろ。俺登校の時裏庭を通るんだけど」
「うん」
「そこで時々同じ木の根元に座ってるんだ」
「それだけ?」
「すごく可愛いんだよ。それで話しかけて・・・時々話す」
じゃあ最近会えないからそんなにしょげているのかと問いかければ否定が返ってきた。
聞けば今朝会ったばかりだという。
「いつも話してる時はすごく楽しいしドキドキするんだけど、その反動みたいに別れたらどっと身体が重くなるんだ。こんな短時間で恋しくなるなんて俺も重症だよ」
そう言ってラディオスは、ふぅ、と重々しい溜息をつく。
その顔色は土のようだ。
「それにしても顔色が悪いぞ。今日は帰った方がいい」
「でもカバン・・・」
「僕が代わりに受け取っておくから。明日渡す」
「うぅ。・・・それじゃあ頼む」
「1人で帰れるか?」
ラディオスはふらりと立ち上がると、ルークスの問いに片手をあげて応えた。そのまままたふらりふらりと教室の扉へ向かっていく。
いつも元気な分、どうも調子が狂う。
ルークスはいつもよりずっと退屈な1日を過ごした。
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