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24話
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「君、名前はなんていうの?」
「ルークスだよ。ルークス・ステッラェ」
「ルークスか!ルークス、いきなりで悪いんだけど教科書を見せてくれないかな?まだ用意できてなくて」
「もちろんいいよ」
ラディオス・マークルは意外にも話しやすい男だった。聞けばなんと隣国の貴族らしい。交換留学で本来は高等部からヘルメシアにやってくる予定だったが、本人の強い希望でこの時期の転入になったのだという。
隣国はヘルメシアよりずっと国土が広く大きな国だ。けれど彼は変に偉ぶることなく誰に対してもフランクに接した。
ルークスに対しても、だ。
彼の明るい金髪やヘルメシア人とは違う彫りの深い顔立ちはとても目を引く。
当然のように転入初日から彼はあっちへこっちへと引っ張りだこだった。
多くの人と接すれば、それだけルークスの色んな噂を耳にすることだろう。
彼の最初のあの屈託ない笑顔を見れなくなることをほんの少しだけ残念に思いつつ、ルークスは早々に諦めていた。
「ルークス!一緒に昼飯を食べよう!」
それなのに、数日経っても1週間経ってもラディオスはルークスに構ってくる。
ルークスは思わず直接彼に尋ねた。
「ラディオス、君聞かなかったのか?僕の色んな噂。変なやつだとかなんとか」
「ああ。そういえば色んな奴が君のことを話してたよ」
ラディオスは唐揚げを頬張りながらなんでもないように言う。
付け合せの野菜を素早くルークスの皿に移すのでその手の甲を叩いておいた。
「うちの国には『陰口は雲より軽い』ってことわざがあるんだ。陰口ってのは信用するに値しないって意味」
「へぇ」
「それにしても、あんなに色んな所で君の話を聞くなんて。ルークスは随分人気者だな」
茶化すようにラディオスは片目をパチン、と瞑って見せる。
ルークスは思わず口を大きく開けて笑った。
「ルークス、見て見て」
「ん?なに、ラディオス・・・ぶふっ」
ラディオスは結構奔放な男だった。
授業中、教科書の隅にくだらない落書きをしては、嬉々としてルークスに見せてくる。
思惑通り笑わされたルークスは悔し紛れにラディオスの背を叩いた。
「いって!」と言いながらも彼も楽しそうに笑う。
ルークスはこのくだらない時間に、経験したことの無いこの気持ちに、心が躍るのを感じていた。
「ルークスだよ。ルークス・ステッラェ」
「ルークスか!ルークス、いきなりで悪いんだけど教科書を見せてくれないかな?まだ用意できてなくて」
「もちろんいいよ」
ラディオス・マークルは意外にも話しやすい男だった。聞けばなんと隣国の貴族らしい。交換留学で本来は高等部からヘルメシアにやってくる予定だったが、本人の強い希望でこの時期の転入になったのだという。
隣国はヘルメシアよりずっと国土が広く大きな国だ。けれど彼は変に偉ぶることなく誰に対してもフランクに接した。
ルークスに対しても、だ。
彼の明るい金髪やヘルメシア人とは違う彫りの深い顔立ちはとても目を引く。
当然のように転入初日から彼はあっちへこっちへと引っ張りだこだった。
多くの人と接すれば、それだけルークスの色んな噂を耳にすることだろう。
彼の最初のあの屈託ない笑顔を見れなくなることをほんの少しだけ残念に思いつつ、ルークスは早々に諦めていた。
「ルークス!一緒に昼飯を食べよう!」
それなのに、数日経っても1週間経ってもラディオスはルークスに構ってくる。
ルークスは思わず直接彼に尋ねた。
「ラディオス、君聞かなかったのか?僕の色んな噂。変なやつだとかなんとか」
「ああ。そういえば色んな奴が君のことを話してたよ」
ラディオスは唐揚げを頬張りながらなんでもないように言う。
付け合せの野菜を素早くルークスの皿に移すのでその手の甲を叩いておいた。
「うちの国には『陰口は雲より軽い』ってことわざがあるんだ。陰口ってのは信用するに値しないって意味」
「へぇ」
「それにしても、あんなに色んな所で君の話を聞くなんて。ルークスは随分人気者だな」
茶化すようにラディオスは片目をパチン、と瞑って見せる。
ルークスは思わず口を大きく開けて笑った。
「ルークス、見て見て」
「ん?なに、ラディオス・・・ぶふっ」
ラディオスは結構奔放な男だった。
授業中、教科書の隅にくだらない落書きをしては、嬉々としてルークスに見せてくる。
思惑通り笑わされたルークスは悔し紛れにラディオスの背を叩いた。
「いって!」と言いながらも彼も楽しそうに笑う。
ルークスはこのくだらない時間に、経験したことの無いこの気持ちに、心が躍るのを感じていた。
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