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15話
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「ちなみに、僕を抱えて飛ぶとかはできないのか?ここまで歩いてきて疲れたんだ」
『図々しい。地でも這ってろ』
進路を邪魔する枝を押しのけながら、ルークスは森の奥へと進んでいく。
ネブラが器用にふわふわと枝を避けて飛ぶのをうらやましそうに見つめながら。
「ずいぶん奥に住んでるんだな、その魔物は」
『まあな。人間嫌いで人間を警戒しているンだ』
「ふうん?それなのに人間を攫うのか」
『そんなことより、お前がさっき言っていた「ハッピーエンド」とは何のことだ』
「なんだ、気になるのか…うぶっ」
ルークスはニヤニヤとからかうような笑みでネブラを見やった。しかしすぐに目の前にあった枝に顔を強打する。
ネブラはそんなルークスを指さし腹を抱えて笑った。
『ぎゃはは!人間のくせによそ見をするからだ!』
「うるさいなあ、もう…」
ルークスは赤くなった額を摩りながら唇を尖らす。
ネブラはルークスの肩にまとわりつき、話の続きをねだった。
『お前のけがなどどうでもいい。先の話を話せ』
「どうでもいいって…。そうだなア、まず僕には大事な奴がいるんだけど。すごくいい奴なんだ、僕なんかの従者をしてくれてて、かっこよくてさ、優しくて」
『なんだ色恋話か。人間は本当に好きだな。そいつと結ばれるためとでも…』
「僕、そいつと心中したんだけど」
『待て、話が変わってきたぞ』
ネブラはいかにもドン引きした、という顔でルークスから離れる。
長い袖で口を覆いながら『では今ここにいるお前は何なんだ』と問うた。
「僕もわかんないんだよなあ。気づいたら時間が巻き戻ってたんだ。広義では心中のきっかけとなる事件の前までね。だからそれを防ぐために原因となりそうなやつをつぶしてるってわけ」
道中拾ったいい枝を振り回しながら、ルークスは授業さながらにそう解説する。ネブラは指を顎に当てて感心したように声を上げた。
『ほー。珍妙な話だな。魔物のなかでもそのような強力な力を持つ者はなかなかいねえぞ』
「時が戻った原因はこの際どうでもいいんだよ。重要なのはいかにアイツを巻き込まないようにするってこと」
『どうでもいいのか。珍妙な奴だな…。というとなんだ、例の魔物がその原因とやらなのか』
ネブラの言葉にルークスは苦い顔をする。
「それが良くは分からないんだ。でも可能性はつぶしておくに越したことはないだろ?」
『物騒なやつだな…。そんな理由で倒される例の魔物に少々同情する』
「倒しやしないよ。誘拐はやめてくれーってお話しするのさ」
ネブラは途端に大きなため息をつく。
そして人差し指を立ててビシッとルークスを指さした。
『バカの極みか、お前は。ハナシが通じるわけはないだろう』
「わかんないだろ~。それにもしものために色々持ってきてはいるんだ」
ルークスはポンポンとバッグを叩いた。
このバッグの中には、レディ・リリィをはじめとした知り合いの魔物たちが集めてくれた魔物に効く便利グッズが詰まっているのだ。
誇らしげな顔をするルークスに反して、ネブラは『よよよ…』とわざとらしい泣きまねを披露して空中でへたり込んだ。
『今夜我らの森で人間が死ぬとは…なんということか』
「勝手に殺すなよ」
『せっかく面白いものを見つけたかと思ったのに、こんな阿呆だったとは』
「うるさいなあ、もう。それよりまだ着かないのか?大分歩いたぞ」
『もうすぐだ。ほら、あの木々の向こうに大岩が見えるだろう。あれが棲み処だ』
ネブラの言う通り、木々の向こうにはごつごつとした大岩の頭が見える。
ルークスにはどこか禍々しいオーラをまとっているように見えた。
『図々しい。地でも這ってろ』
進路を邪魔する枝を押しのけながら、ルークスは森の奥へと進んでいく。
ネブラが器用にふわふわと枝を避けて飛ぶのをうらやましそうに見つめながら。
「ずいぶん奥に住んでるんだな、その魔物は」
『まあな。人間嫌いで人間を警戒しているンだ』
「ふうん?それなのに人間を攫うのか」
『そんなことより、お前がさっき言っていた「ハッピーエンド」とは何のことだ』
「なんだ、気になるのか…うぶっ」
ルークスはニヤニヤとからかうような笑みでネブラを見やった。しかしすぐに目の前にあった枝に顔を強打する。
ネブラはそんなルークスを指さし腹を抱えて笑った。
『ぎゃはは!人間のくせによそ見をするからだ!』
「うるさいなあ、もう…」
ルークスは赤くなった額を摩りながら唇を尖らす。
ネブラはルークスの肩にまとわりつき、話の続きをねだった。
『お前のけがなどどうでもいい。先の話を話せ』
「どうでもいいって…。そうだなア、まず僕には大事な奴がいるんだけど。すごくいい奴なんだ、僕なんかの従者をしてくれてて、かっこよくてさ、優しくて」
『なんだ色恋話か。人間は本当に好きだな。そいつと結ばれるためとでも…』
「僕、そいつと心中したんだけど」
『待て、話が変わってきたぞ』
ネブラはいかにもドン引きした、という顔でルークスから離れる。
長い袖で口を覆いながら『では今ここにいるお前は何なんだ』と問うた。
「僕もわかんないんだよなあ。気づいたら時間が巻き戻ってたんだ。広義では心中のきっかけとなる事件の前までね。だからそれを防ぐために原因となりそうなやつをつぶしてるってわけ」
道中拾ったいい枝を振り回しながら、ルークスは授業さながらにそう解説する。ネブラは指を顎に当てて感心したように声を上げた。
『ほー。珍妙な話だな。魔物のなかでもそのような強力な力を持つ者はなかなかいねえぞ』
「時が戻った原因はこの際どうでもいいんだよ。重要なのはいかにアイツを巻き込まないようにするってこと」
『どうでもいいのか。珍妙な奴だな…。というとなんだ、例の魔物がその原因とやらなのか』
ネブラの言葉にルークスは苦い顔をする。
「それが良くは分からないんだ。でも可能性はつぶしておくに越したことはないだろ?」
『物騒なやつだな…。そんな理由で倒される例の魔物に少々同情する』
「倒しやしないよ。誘拐はやめてくれーってお話しするのさ」
ネブラは途端に大きなため息をつく。
そして人差し指を立ててビシッとルークスを指さした。
『バカの極みか、お前は。ハナシが通じるわけはないだろう』
「わかんないだろ~。それにもしものために色々持ってきてはいるんだ」
ルークスはポンポンとバッグを叩いた。
このバッグの中には、レディ・リリィをはじめとした知り合いの魔物たちが集めてくれた魔物に効く便利グッズが詰まっているのだ。
誇らしげな顔をするルークスに反して、ネブラは『よよよ…』とわざとらしい泣きまねを披露して空中でへたり込んだ。
『今夜我らの森で人間が死ぬとは…なんということか』
「勝手に殺すなよ」
『せっかく面白いものを見つけたかと思ったのに、こんな阿呆だったとは』
「うるさいなあ、もう。それよりまだ着かないのか?大分歩いたぞ」
『もうすぐだ。ほら、あの木々の向こうに大岩が見えるだろう。あれが棲み処だ』
ネブラの言う通り、木々の向こうにはごつごつとした大岩の頭が見える。
ルークスにはどこか禍々しいオーラをまとっているように見えた。
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