11 / 51
10話
しおりを挟む
「ルークス」
ルアと話をしながら夕食のために食堂に向かっていると、背後から聞き覚えのある声がかかった。
「兄上」
ルークスが身体ごと振り向くとルアは1歩引いてルークスの後ろにつく。
ルベリオの傍には見慣れた侍女が控えていて、ルークスに対して軽く礼をするので頷きで返した。
「具合は良くなった?ここ数日食事が一緒にとれなかったから寂しかったよ」
「うん。もう大丈夫」
「今日は一緒に食べれるんだね!父上や母上も寂しがってたから喜ぶよ」
それは嘘だろ。と思いながらも顔には出さず笑って頷く。
ルークスの表情を見てほっとしたようにルベリオは笑って、弟の肩に右手を置いた。
「そんな風に父上も母上もルークスを思ってるんだから、そろそろ反抗期は終わりにしなくちゃ」
「......え、っと」
「俺もあったから分かるよ。でも今ならそんなことして確かめなくても父上たちはちゃんと俺らを愛してくれてるって分かるんだ」
「兄上」
「俺らももう18だよ?ステッラェ家の跡継ぎとして大人にならなきゃな!」
ニカッと笑う笑顔が眩しい。
ルークスは珍味を食べてしまったような何とも言えない顔をしかけたが、表情を引き締めて「そうだね」と答えた。
ルベリオはその答えに気を良くしたらしくさらにいい募ろうとする。
「それに、」
「ルベリオ様、そろそろ。当主様と奥様をお待たせしてしまいます」
「あ!それもそうだねルア!行こう、ルークス」
「うん」
ルンルンと歩いていく兄達に着いていきつつ、少し歩く速度を落として距離をとる。
「...怒るなよ、ルア」
「怒ってはいません」
仏頂面のルアにルークスはくすくすと笑う。
助け舟は確かに助かったが、兄の言葉は気にしてるわけではない。
「悪気はないんだよ、兄上には」
「悪気がない方が始末が悪い場合もあります」
「まぁそれは...あるな」
兄の先の言葉は心の底から、嘘偽りなく、本気で発されたものだ。
ルベリオは両親と弟の間の固い空気は察していながらも、年頃の弟が一方的に父母を避けているのだと思っているらしい。
そしてそれがいつか解消されるものだと信じて疑わないのだ。
絶妙に鈍いのか、純粋なのか...。
「そこが兄上のいいところだよ」
「.........」
ルークスは兄のことが嫌いではなかった。
関わりは薄いとはいえ、実の兄弟。それに彼の存在がなければこの家の空気は地獄と化していただろう。
あの人の人柄や性格があってこそ、この家の平和は保たれているのだ。その生まれ持った才能に感心することはあれ憎むことは無い。
兄の失踪によりあの10年間があったとしても、兄を恨む気にはなれなかった。
実際兄上悪くないしな。
「さ、俺たちも早く行こう。今日のメニュー楽しみだ」
「はい、ルークス様」
ルアと話をしながら夕食のために食堂に向かっていると、背後から聞き覚えのある声がかかった。
「兄上」
ルークスが身体ごと振り向くとルアは1歩引いてルークスの後ろにつく。
ルベリオの傍には見慣れた侍女が控えていて、ルークスに対して軽く礼をするので頷きで返した。
「具合は良くなった?ここ数日食事が一緒にとれなかったから寂しかったよ」
「うん。もう大丈夫」
「今日は一緒に食べれるんだね!父上や母上も寂しがってたから喜ぶよ」
それは嘘だろ。と思いながらも顔には出さず笑って頷く。
ルークスの表情を見てほっとしたようにルベリオは笑って、弟の肩に右手を置いた。
「そんな風に父上も母上もルークスを思ってるんだから、そろそろ反抗期は終わりにしなくちゃ」
「......え、っと」
「俺もあったから分かるよ。でも今ならそんなことして確かめなくても父上たちはちゃんと俺らを愛してくれてるって分かるんだ」
「兄上」
「俺らももう18だよ?ステッラェ家の跡継ぎとして大人にならなきゃな!」
ニカッと笑う笑顔が眩しい。
ルークスは珍味を食べてしまったような何とも言えない顔をしかけたが、表情を引き締めて「そうだね」と答えた。
ルベリオはその答えに気を良くしたらしくさらにいい募ろうとする。
「それに、」
「ルベリオ様、そろそろ。当主様と奥様をお待たせしてしまいます」
「あ!それもそうだねルア!行こう、ルークス」
「うん」
ルンルンと歩いていく兄達に着いていきつつ、少し歩く速度を落として距離をとる。
「...怒るなよ、ルア」
「怒ってはいません」
仏頂面のルアにルークスはくすくすと笑う。
助け舟は確かに助かったが、兄の言葉は気にしてるわけではない。
「悪気はないんだよ、兄上には」
「悪気がない方が始末が悪い場合もあります」
「まぁそれは...あるな」
兄の先の言葉は心の底から、嘘偽りなく、本気で発されたものだ。
ルベリオは両親と弟の間の固い空気は察していながらも、年頃の弟が一方的に父母を避けているのだと思っているらしい。
そしてそれがいつか解消されるものだと信じて疑わないのだ。
絶妙に鈍いのか、純粋なのか...。
「そこが兄上のいいところだよ」
「.........」
ルークスは兄のことが嫌いではなかった。
関わりは薄いとはいえ、実の兄弟。それに彼の存在がなければこの家の空気は地獄と化していただろう。
あの人の人柄や性格があってこそ、この家の平和は保たれているのだ。その生まれ持った才能に感心することはあれ憎むことは無い。
兄の失踪によりあの10年間があったとしても、兄を恨む気にはなれなかった。
実際兄上悪くないしな。
「さ、俺たちも早く行こう。今日のメニュー楽しみだ」
「はい、ルークス様」
23
お気に入りに追加
161
あなたにおすすめの小説


【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜
車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第2の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?


【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる