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「2年か。こう言うと短く感じるなぁ。...あんなに長かったのに」
確かに存在したはずの過去を振り返って、ルークスはかすかに笑った。
あの頃は寝ても覚めても同じ日に閉じ込められているような感覚に陥っていた。徐々に狂って自分に日付を聞くことすら忘れた部屋の主を一ツ目はどんな気持ちで見ていたのだろうか。
「なんてね」
ルークスは身を起こして膝を抱える。
もし本当に時が戻ったというのなら。絶対に同じ道は歩みたくない。
あの2年間を二度と過ごしたくないというのも確かにあるが、何よりも
「あいつを巻き込みたかったわけじゃなかったんだ」
ルア。大切な可哀想なルア。
あの2年はルークスにはルアしかいなかった。でも部屋から出られなかったルークスと違ってルアには自由があって、彼の世界を生きられたはずで。
勝手に依存して、執着して、そして、道連れにした。
「最期の最期まで甘えてしまった」
ルークスは膝の間に顔を埋めると、ウンウンと唸った。
ルアはルークスが13歳の時に屋敷に来た従者だ。時が戻った今の時点で約4年経っているとになる。
『ルークス様の従者になりたい』と主張してのりこんできた怪しい男だったが、『悪魔の子』に付きたがる者がいないことに頭を悩ませていたクロードが即決で採用した。
白髪長身くっきりした目鼻立ちと目立つ容姿のルアはルークスと違う意味で遠巻きに見られていた。ルークスに対する忠誠心はあつく、仕事も出来る。まさに文句のつけ所のない従者だった。
それに反して、きっと自分は最低最悪の主だろうとルークスは思う。ルアの自由を奪い、心を縛り、未来を砕いたのだから。
「......しかもさ、しかもさぁ」
あんな告白ってある?
ルークスは膝を抱えた体勢のままコロンと横に転がった。そして両手で顔を覆うとゴロゴロと左右に転がり続ける。
奇行を眺め続けていた一ツ目は思った。落ち着け、と。
時を戻る前のルークスは崖から飛び降りて、谷底まで落ちていくまさにその最中にルアへ愛を告げた。
「ぬぁぁぁぁ!!!思い出せば思い出すほど有り得ねぇ~!!」
あんまりだ。シチュエーションもタイミングも最悪の極みである。
言い訳をするならば、「そこしか無かった」のだ。なにせ自覚したのが飛び降りるその瞬間だったので。
そもそも、ルアに対する恋情というものは前からあったのだと思う。だがあまりにも環境が悪かったせいで、親愛やら情愛やら執着やらがぐちゃぐちゃに絡み合ってしまった。
だから、方法はともかくとして、よろしくない環境と歪んだ執着から解放された時、その時その瞬間ようやく気付けたのだ。ぽつんと残ったその感情に。
「そもそも従者に対して告白ってどうなんだろう。強制感あるよな...脅迫になったりする?」
ルークスは少なくとも嫌われてはいなかった自信はあったが、果たして向けられていたのが同情だったのか愛情だったのかはイマイチ判断がつかなかった。
特に最後2~3ヶ月は正気でなく記憶が曖昧なので判断材料が足りない。
とはいえ想いを捨てようとか忘れようとはならない。想いや感情というものがそんな簡単に変えたり捨てたりできるものだったらあんな2年送ってない。
ルークスは嫌な経験値を手に入れていた。
「まぁとりあえずは...」
ルークスはベッドからおりると、机の引き出しから雑記帳を取りだした。
そして真新しいその1ページにペンを走らせた。
「ハッピーエンドに導いてみせるよ、ルア」
開かれたページには
『心中エンド絶対回避!!』
の文字が踊っていた。
確かに存在したはずの過去を振り返って、ルークスはかすかに笑った。
あの頃は寝ても覚めても同じ日に閉じ込められているような感覚に陥っていた。徐々に狂って自分に日付を聞くことすら忘れた部屋の主を一ツ目はどんな気持ちで見ていたのだろうか。
「なんてね」
ルークスは身を起こして膝を抱える。
もし本当に時が戻ったというのなら。絶対に同じ道は歩みたくない。
あの2年間を二度と過ごしたくないというのも確かにあるが、何よりも
「あいつを巻き込みたかったわけじゃなかったんだ」
ルア。大切な可哀想なルア。
あの2年はルークスにはルアしかいなかった。でも部屋から出られなかったルークスと違ってルアには自由があって、彼の世界を生きられたはずで。
勝手に依存して、執着して、そして、道連れにした。
「最期の最期まで甘えてしまった」
ルークスは膝の間に顔を埋めると、ウンウンと唸った。
ルアはルークスが13歳の時に屋敷に来た従者だ。時が戻った今の時点で約4年経っているとになる。
『ルークス様の従者になりたい』と主張してのりこんできた怪しい男だったが、『悪魔の子』に付きたがる者がいないことに頭を悩ませていたクロードが即決で採用した。
白髪長身くっきりした目鼻立ちと目立つ容姿のルアはルークスと違う意味で遠巻きに見られていた。ルークスに対する忠誠心はあつく、仕事も出来る。まさに文句のつけ所のない従者だった。
それに反して、きっと自分は最低最悪の主だろうとルークスは思う。ルアの自由を奪い、心を縛り、未来を砕いたのだから。
「......しかもさ、しかもさぁ」
あんな告白ってある?
ルークスは膝を抱えた体勢のままコロンと横に転がった。そして両手で顔を覆うとゴロゴロと左右に転がり続ける。
奇行を眺め続けていた一ツ目は思った。落ち着け、と。
時を戻る前のルークスは崖から飛び降りて、谷底まで落ちていくまさにその最中にルアへ愛を告げた。
「ぬぁぁぁぁ!!!思い出せば思い出すほど有り得ねぇ~!!」
あんまりだ。シチュエーションもタイミングも最悪の極みである。
言い訳をするならば、「そこしか無かった」のだ。なにせ自覚したのが飛び降りるその瞬間だったので。
そもそも、ルアに対する恋情というものは前からあったのだと思う。だがあまりにも環境が悪かったせいで、親愛やら情愛やら執着やらがぐちゃぐちゃに絡み合ってしまった。
だから、方法はともかくとして、よろしくない環境と歪んだ執着から解放された時、その時その瞬間ようやく気付けたのだ。ぽつんと残ったその感情に。
「そもそも従者に対して告白ってどうなんだろう。強制感あるよな...脅迫になったりする?」
ルークスは少なくとも嫌われてはいなかった自信はあったが、果たして向けられていたのが同情だったのか愛情だったのかはイマイチ判断がつかなかった。
特に最後2~3ヶ月は正気でなく記憶が曖昧なので判断材料が足りない。
とはいえ想いを捨てようとか忘れようとはならない。想いや感情というものがそんな簡単に変えたり捨てたりできるものだったらあんな2年送ってない。
ルークスは嫌な経験値を手に入れていた。
「まぁとりあえずは...」
ルークスはベッドからおりると、机の引き出しから雑記帳を取りだした。
そして真新しいその1ページにペンを走らせた。
「ハッピーエンドに導いてみせるよ、ルア」
開かれたページには
『心中エンド絶対回避!!』
の文字が踊っていた。
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