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1話

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「…!…クス!ルークス!」
「__へっ!?」

ルークスはハッと目を見開き、すぐにその眩しさに思わず目を細めた。
ここはどこだ。
先ほどまでいたはずの闇との差で目がチカチカする。
僕は崖から身を投げ出したのではなかったのか。そんなルークスの混乱した頭は隣からの声で真っ白になった。

「どうしたの、ルークス。スプーンを落とすなんて珍しいね」

ブリキのおもちゃのように固くぎこちない動きで右を向けば、心配そうな顔でこちらを見る少年。
ルークスは呆然とつぶやいた。

「兄、うえ…?」
「そうだよ?一体どうしたの」

父親譲りの赤髪に、たれ目がちな柔和な顔立ち。まだふくふくとした子供らしい頬。
記憶よりずっと幼い兄_ルベリオがそこにはいた。
なにも理解できないまま周囲を見渡せば、汚らわしいものを見るかのように軽蔑しきった表情でこちらを見る男女…父と母が座っている。
ルークスはいまだぎこちない動きで床に落ちたスプーンを拾い上げた。

ステッラェ家の食事の場には使用人がいないので自分で拾うしかない。そう…父クロードの意向で家族4人しかいなかった。

あまりにも鮮明によみがえった日常の記憶に、ルークスは勢いよく椅子を蹴って立ち上がった。

「…具合がすぐれないので先に失礼します」
「ちょっ、ルークス!?」

・・・・・・・・・

「一ッ目!!」

ルークスは自室の扉を開けるなり叫んだ。
部屋の隅から『んあ~~』と気の抜ける返事が返ってくるのを聞いて、すぐさま

「今は何年の何月だ!?」

と再び叫ぶ。
もよもよと姿を現したのは、流動的な黒い体をした一ツ目の異形。
どこにあるかもわからぬ口からもごもごとルークスの問いに答えた。
ルークスはその答えを聞いて、へたりと腰を抜かして座り込んだ。

「3年前…」

自分のものであるはずなのに明らかに小さな自分の両手を見下ろす。

「時が、戻ったっていうのか…?」
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