2 / 51
1話
しおりを挟む
「…!…クス!ルークス!」
「__へっ!?」
ルークスはハッと目を見開き、すぐにその眩しさに思わず目を細めた。
ここはどこだ。
先ほどまでいたはずの闇との差で目がチカチカする。
僕は崖から身を投げ出したのではなかったのか。そんなルークスの混乱した頭は隣からの声で真っ白になった。
「どうしたの、ルークス。スプーンを落とすなんて珍しいね」
ブリキのおもちゃのように固くぎこちない動きで右を向けば、心配そうな顔でこちらを見る少年。
ルークスは呆然とつぶやいた。
「兄、うえ…?」
「そうだよ?一体どうしたの」
父親譲りの赤髪に、たれ目がちな柔和な顔立ち。まだふくふくとした子供らしい頬。
記憶よりずっと幼い兄_ルベリオがそこにはいた。
なにも理解できないまま周囲を見渡せば、汚らわしいものを見るかのように軽蔑しきった表情でこちらを見る男女…父と母が座っている。
ルークスはいまだぎこちない動きで床に落ちたスプーンを拾い上げた。
ステッラェ家の食事の場には使用人がいないので自分で拾うしかない。そう…父クロードの意向で家族4人しかいなかった。
あまりにも鮮明によみがえった日常の記憶に、ルークスは勢いよく椅子を蹴って立ち上がった。
「…具合がすぐれないので先に失礼します」
「ちょっ、ルークス!?」
・・・・・・・・・
「一ッ目!!」
ルークスは自室の扉を開けるなり叫んだ。
部屋の隅から『んあ~~』と気の抜ける返事が返ってくるのを聞いて、すぐさま
「今は何年の何月だ!?」
と再び叫ぶ。
もよもよと姿を現したのは、流動的な黒い体をした一ツ目の異形。
どこにあるかもわからぬ口からもごもごとルークスの問いに答えた。
ルークスはその答えを聞いて、へたりと腰を抜かして座り込んだ。
「3年前…」
自分のものであるはずなのに明らかに小さな自分の両手を見下ろす。
「時が、戻ったっていうのか…?」
「__へっ!?」
ルークスはハッと目を見開き、すぐにその眩しさに思わず目を細めた。
ここはどこだ。
先ほどまでいたはずの闇との差で目がチカチカする。
僕は崖から身を投げ出したのではなかったのか。そんなルークスの混乱した頭は隣からの声で真っ白になった。
「どうしたの、ルークス。スプーンを落とすなんて珍しいね」
ブリキのおもちゃのように固くぎこちない動きで右を向けば、心配そうな顔でこちらを見る少年。
ルークスは呆然とつぶやいた。
「兄、うえ…?」
「そうだよ?一体どうしたの」
父親譲りの赤髪に、たれ目がちな柔和な顔立ち。まだふくふくとした子供らしい頬。
記憶よりずっと幼い兄_ルベリオがそこにはいた。
なにも理解できないまま周囲を見渡せば、汚らわしいものを見るかのように軽蔑しきった表情でこちらを見る男女…父と母が座っている。
ルークスはいまだぎこちない動きで床に落ちたスプーンを拾い上げた。
ステッラェ家の食事の場には使用人がいないので自分で拾うしかない。そう…父クロードの意向で家族4人しかいなかった。
あまりにも鮮明によみがえった日常の記憶に、ルークスは勢いよく椅子を蹴って立ち上がった。
「…具合がすぐれないので先に失礼します」
「ちょっ、ルークス!?」
・・・・・・・・・
「一ッ目!!」
ルークスは自室の扉を開けるなり叫んだ。
部屋の隅から『んあ~~』と気の抜ける返事が返ってくるのを聞いて、すぐさま
「今は何年の何月だ!?」
と再び叫ぶ。
もよもよと姿を現したのは、流動的な黒い体をした一ツ目の異形。
どこにあるかもわからぬ口からもごもごとルークスの問いに答えた。
ルークスはその答えを聞いて、へたりと腰を抜かして座り込んだ。
「3年前…」
自分のものであるはずなのに明らかに小さな自分の両手を見下ろす。
「時が、戻ったっていうのか…?」
35
お気に入りに追加
160
あなたにおすすめの小説
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたアルフォン伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
アルフォンのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
殺されて退場する筈なのに主人公の愛が重い
春野ゆき
BL
途中で読むのを辞めた小説で弟子である主人公に殺されるキャラクター「アルネ」に転生した「俺」は殺される未来を変える為に主人公に愛情深く接すると決意する。そんな風に接していたら主人公に懐かれ過ぎてしまった。国内はずっと不穏だし、次々と事件が起こるけどシナリオはこれで合ってるのか?
旧題︰悪役だけど暴君主人公を良い子に育てます
攻めの幼少期から始まりますが、幼少期の頃の話はそんなに長くないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる