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隼人の家の前で車を停め、後部座席を振り返る。
「ありゃ、寝てら。」
天使のようなその寝顔に自然と自分の表情が緩むのが分かる。
理央も隼人も間違いなく美形だが系統が全くちがう。
理央がお人形のようだとしたら、隼人は人気漫画の中のヒーローだ。戦隊もののレッドでもいいかもしれない。
おれはそんな西邑隼人という男に心底惚れている。
もちろんマネージメントするモデルとしてであり恋愛感情などはないが
それこそ理央と付き合い始めた当初は疑われ続けて正直面倒くさかった。
隼人と出会ったのは今から5年前でお互い20歳のときだった。
おれは19で叔母が経営する芸能事務所に社員として入り、今の今まで働かせてもらっているわけだが、そこへ町でスカウトを受けた隼人がやってきたのだ。
小さな事務所であるが故に怪しさ満点だったであろううちのスカウトについてきてくれた隼人を見た瞬間に衝撃を受けた。
早い話、顔がどタイプだった。
あの日ほどスカウトにあたっていた山崎(同期社員)に感謝したことは無い。
顔はまさに正統派のイケメン。
服装は今どきの若者といった感じだったが、そこかしこにセンスの良さが感じられた。
明るい茶髪も片耳のピアスも下品さは全くない。
話してみれば分かるその快活な性格もおれをベタ惚れさせるには十分すぎた。
すぐに社長である叔母に直談判。
隼人は即採用でおれはそのマネージャーの座を勝ち取った。
うちの事務所はひとりの社員が複数のタレントを受け持つ。
おれも例外ではないから、タレント間で不平等が生まれることは決してしないようにしている。
隼人に対してもいくらベタ惚れといっても過剰に世話を焼いたり仕事を回したりはしなかった。
だが彼は己の実力で
着々とたくさんの仕事をとってくるようになった。
明るくてお日様のようなヒーローのような隼人。
けれどその裏で自分磨きにも人脈作りにも必死で取り組む努力家であることを知っている。
仕事仲間として心の底から尊敬しているし
共に仕事ができるということがこの上なく幸せに思う
だから、隼人と初めて喧嘩した時
おれの事をこれ以上ない相棒だと思っていると、そう言われて自分でもびっくりするほど涙が溢れた。嬉しすぎて。
何より彼の恥とならないような1番の相棒であろうと思った。
隼人の仕事が増えるにつれ、おれもほぼ隼人専属のようになってきたので
力の限り全力でサポートするのみだ。
とまあ、いつまでもしんみりとしている訳にはいかないので出来る限り優しく隼人を揺り起こす。
「んぁ……ごめん、寝ちゃってた…」
「気にすんな~でも身体痛めたらあれだからちゃんとベッドで寝な。家着いたから。」
「ありがと~」
いまだ眠そうな目をしながらも荷物をまとめる彼を見ながら
そういえば隼人がいなけりゃ理央とも出会ってすらいなかったんだろうなあ、なんて考える。
元々彼は隼人の友達だったことで繋がったから。
もしかしたらあいつは、
そうじゃなくても絶対俺はゆきを見つけてる!
とか言うのかもしれないけれど。
でもやっぱりおれにとって大切な大切な縁だから。
「ねえ、隼人」
「ん?」
「おれと出会って、ずーっと一緒に仕事してくれてありがとう。」
隼人はビックリしたような顔をしてから微笑んで
「こちらこそだよ!
もちろんこれからもよろしくね!」
胸が熱くなる。
「おうよ!」
無事に家に入ったのを見届けて車を発進させる。
「んーー!!!明日からも頑張るぞお!」
大きい独り言を乗せて、愛車は事務所まで走り出した。
「……あ、理央が連絡するって言ってなかったけか」
携帯みんの、忘れてた。
「ありゃ、寝てら。」
天使のようなその寝顔に自然と自分の表情が緩むのが分かる。
理央も隼人も間違いなく美形だが系統が全くちがう。
理央がお人形のようだとしたら、隼人は人気漫画の中のヒーローだ。戦隊もののレッドでもいいかもしれない。
おれはそんな西邑隼人という男に心底惚れている。
もちろんマネージメントするモデルとしてであり恋愛感情などはないが
それこそ理央と付き合い始めた当初は疑われ続けて正直面倒くさかった。
隼人と出会ったのは今から5年前でお互い20歳のときだった。
おれは19で叔母が経営する芸能事務所に社員として入り、今の今まで働かせてもらっているわけだが、そこへ町でスカウトを受けた隼人がやってきたのだ。
小さな事務所であるが故に怪しさ満点だったであろううちのスカウトについてきてくれた隼人を見た瞬間に衝撃を受けた。
早い話、顔がどタイプだった。
あの日ほどスカウトにあたっていた山崎(同期社員)に感謝したことは無い。
顔はまさに正統派のイケメン。
服装は今どきの若者といった感じだったが、そこかしこにセンスの良さが感じられた。
明るい茶髪も片耳のピアスも下品さは全くない。
話してみれば分かるその快活な性格もおれをベタ惚れさせるには十分すぎた。
すぐに社長である叔母に直談判。
隼人は即採用でおれはそのマネージャーの座を勝ち取った。
うちの事務所はひとりの社員が複数のタレントを受け持つ。
おれも例外ではないから、タレント間で不平等が生まれることは決してしないようにしている。
隼人に対してもいくらベタ惚れといっても過剰に世話を焼いたり仕事を回したりはしなかった。
だが彼は己の実力で
着々とたくさんの仕事をとってくるようになった。
明るくてお日様のようなヒーローのような隼人。
けれどその裏で自分磨きにも人脈作りにも必死で取り組む努力家であることを知っている。
仕事仲間として心の底から尊敬しているし
共に仕事ができるということがこの上なく幸せに思う
だから、隼人と初めて喧嘩した時
おれの事をこれ以上ない相棒だと思っていると、そう言われて自分でもびっくりするほど涙が溢れた。嬉しすぎて。
何より彼の恥とならないような1番の相棒であろうと思った。
隼人の仕事が増えるにつれ、おれもほぼ隼人専属のようになってきたので
力の限り全力でサポートするのみだ。
とまあ、いつまでもしんみりとしている訳にはいかないので出来る限り優しく隼人を揺り起こす。
「んぁ……ごめん、寝ちゃってた…」
「気にすんな~でも身体痛めたらあれだからちゃんとベッドで寝な。家着いたから。」
「ありがと~」
いまだ眠そうな目をしながらも荷物をまとめる彼を見ながら
そういえば隼人がいなけりゃ理央とも出会ってすらいなかったんだろうなあ、なんて考える。
元々彼は隼人の友達だったことで繋がったから。
もしかしたらあいつは、
そうじゃなくても絶対俺はゆきを見つけてる!
とか言うのかもしれないけれど。
でもやっぱりおれにとって大切な大切な縁だから。
「ねえ、隼人」
「ん?」
「おれと出会って、ずーっと一緒に仕事してくれてありがとう。」
隼人はビックリしたような顔をしてから微笑んで
「こちらこそだよ!
もちろんこれからもよろしくね!」
胸が熱くなる。
「おうよ!」
無事に家に入ったのを見届けて車を発進させる。
「んーー!!!明日からも頑張るぞお!」
大きい独り言を乗せて、愛車は事務所まで走り出した。
「……あ、理央が連絡するって言ってなかったけか」
携帯みんの、忘れてた。
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