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2章:触手と姫騎士
2章:触手と姫騎士(7)
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司令室のプレートがかかった部屋に、職員がなだれ込んでいく。
部屋の正面には大型モニター。それと向かい合うようにして、30台ほどのPCが並んでいる。
映画で見たNASAの管制室にイメージが近いか。
『次が出ただと?』
大型モニターに偉そうなスーツ姿のおっさんが映し出された。
「どこかで見たことのある人ですね」
小声で真白さんに聞いてみる。
「本部長は国務大臣が兼務するからね。高校生には馴染みがないかもしれないけど、ニュースにもよく出てくる有名な政治家よ」
あのおっさんが、害異対のトップか。
「こんな大役を任されるのだからすごい人なんでしょうね」
「本人は貧乏くじを引いたと思ってるかもしれないけどね」
たしかに、どんなにうまくやってもプラマイゼロの仕事だしなあ。
『聞こえているぞ、穴井殲滅部長状況』
真白さんの役職、あらためて聞くと物騒な名前である。
「申し訳ありません」
しれっと謝る真白さん。
僕なら慌ててしまいそうな場面だけど、随分と肝が据わっている……というより、慣れている感じだ。
『それで、状況は?』
本部長の支持に従い、オペレーターらしきお兄さんがコンソールを操作する。
「害異は20分前に岩手県南部に出現。時速10kmで南下を続けています」
『岩手南部? 青森ではないのか?』
「はい、ダムレイの討伐地点と、第2害異の出現地点が一致します。衛星映像来ます!」
本部長の顔がモニターの隅においやられ、画面に映ったのは巨大な……ええと……。
「イソギンチャク?」
「そう見えるわね……」
となりで真白さんが難しそうな顔をしている。
対象物が樹木しかないので大きさはよくわからないが、ビル4~5階くらいの高さはあるんじゃないだろうか。
巨大なイソギンチャクが、なめくじのようにゆっくり移動をしている。
イソギンチャクが通過した跡は、木々も岩さえも溶け、大きな溝になっている。
「燃料気化爆弾、投下されます!」
オペレーターの声とともに、画面をミサイルが横切っていく。
『何も聞いておらんぞ! ええい、こんな時だけ判断が早い! 一発使うごとに奴らに金が――』
本部長がグチるのと、ミサイルが害異に着弾したのはほぼ同時だった。
閃光、そして土煙。
それらが収まった跡には、上部1割ほどが削れた害異がいた。
『効いた!? それはそれで、防衛大臣のニヤケ顔が目に浮かぶ……』
目元をピクつかせる本部長。
政治家には色々あるのだろう。
「防衛省が2発目の発射を決定したそうです!」
『今回、我々の出番はなしか』
本部長はそう言うと、モニターから消えた。
「いいえ……そんなに甘くないわ。ジュン君、出るわよ! 赤石さんは!? 誰か彼女を呼んできて!」
真白さんが僕の手を取り、司令室を出る。
「爆弾が効いてたみたいですけど、僕らも行くんですか?」
「おそらく心臓は破壊できないわ。なにより、私には効果があったようには見えなかった」
「それってどういう……」
「詳しいことは機内で!」
機内って……今回は新幹線じゃないってこと?
部屋の正面には大型モニター。それと向かい合うようにして、30台ほどのPCが並んでいる。
映画で見たNASAの管制室にイメージが近いか。
『次が出ただと?』
大型モニターに偉そうなスーツ姿のおっさんが映し出された。
「どこかで見たことのある人ですね」
小声で真白さんに聞いてみる。
「本部長は国務大臣が兼務するからね。高校生には馴染みがないかもしれないけど、ニュースにもよく出てくる有名な政治家よ」
あのおっさんが、害異対のトップか。
「こんな大役を任されるのだからすごい人なんでしょうね」
「本人は貧乏くじを引いたと思ってるかもしれないけどね」
たしかに、どんなにうまくやってもプラマイゼロの仕事だしなあ。
『聞こえているぞ、穴井殲滅部長状況』
真白さんの役職、あらためて聞くと物騒な名前である。
「申し訳ありません」
しれっと謝る真白さん。
僕なら慌ててしまいそうな場面だけど、随分と肝が据わっている……というより、慣れている感じだ。
『それで、状況は?』
本部長の支持に従い、オペレーターらしきお兄さんがコンソールを操作する。
「害異は20分前に岩手県南部に出現。時速10kmで南下を続けています」
『岩手南部? 青森ではないのか?』
「はい、ダムレイの討伐地点と、第2害異の出現地点が一致します。衛星映像来ます!」
本部長の顔がモニターの隅においやられ、画面に映ったのは巨大な……ええと……。
「イソギンチャク?」
「そう見えるわね……」
となりで真白さんが難しそうな顔をしている。
対象物が樹木しかないので大きさはよくわからないが、ビル4~5階くらいの高さはあるんじゃないだろうか。
巨大なイソギンチャクが、なめくじのようにゆっくり移動をしている。
イソギンチャクが通過した跡は、木々も岩さえも溶け、大きな溝になっている。
「燃料気化爆弾、投下されます!」
オペレーターの声とともに、画面をミサイルが横切っていく。
『何も聞いておらんぞ! ええい、こんな時だけ判断が早い! 一発使うごとに奴らに金が――』
本部長がグチるのと、ミサイルが害異に着弾したのはほぼ同時だった。
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『効いた!? それはそれで、防衛大臣のニヤケ顔が目に浮かぶ……』
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政治家には色々あるのだろう。
「防衛省が2発目の発射を決定したそうです!」
『今回、我々の出番はなしか』
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「いいえ……そんなに甘くないわ。ジュン君、出るわよ! 赤石さんは!? 誰か彼女を呼んできて!」
真白さんが僕の手を取り、司令室を出る。
「爆弾が効いてたみたいですけど、僕らも行くんですか?」
「おそらく心臓は破壊できないわ。なにより、私には効果があったようには見えなかった」
「それってどういう……」
「詳しいことは機内で!」
機内って……今回は新幹線じゃないってこと?
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