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第1章 幼なじみの転生は気付けない(3) SIDE マリ

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SIDE マリ


 私は幼なじみのケンが好きだ。
 それは物心ついた時からずっと。
 彼のことが好きだということが、当たり前の人生だった。

 彼もまた私のこと好いてくれていると思うのだけど、私が彼を好きになった方が絶対に早い。

 でもいつからだろう。
 彼と話す機会がどんどん少なくなっていった。

 母に相談すると、思春期の男の子はしょうがないと言っていた。

 でも一度離れてしまった距離感がもとに戻ることはなかった。

 彼の第一志望と同じ大学を受けたけれど、彼が受かったのは滑り止めだけだった。

 別々の大学に通うことになったのが、疎遠になる決定的な原因だった。

 それでも私は彼を忘れることができず、毎週のように男子達からされる告白を全て断ってきた。
 我ながらバカだなと思うけど、どうしても彼を忘れることができなかったのだからしかたない。

 親友にそのことを話したら、異星人でも見るような顔であきれられたけど。

 そんな私も、今日だけは覚悟を決めてやってきた。

 私の親友から彼の友人につないでもらい、ケンが同窓会に来るようしむけてもらった。

 彼となにも進展させることができなければ、彼のことはあきらめようと思ったのだ。

 でも逆に、そんな想いが私を緊張の糸でがんじがらめにした。

 同窓会中、彼と何度も目が合ったのに、お互い話すことができなかったのだ。

 それでも私は、同窓会が終わったあと、勇気をふりしぼって彼に話しかけた。
 自然に見えた……はずだ。
 こっそり手は震えていたけど。

 数年ぶりに聞いた彼の声は、私の脳をしびれさせた。

 他の女の子達は、彼なんかのどこが良いのと言うけれど、やっぱり好きだ。
 好きなものは好きだ。

 すっかり舞い上がっていた私は、暴走した車が近づいて来ることに気付けなかった。

 そんな私を彼が庇って……あぁ……なんてことだ……。
 こんなことあっていいはずがない。
 死ぬなら彼ではなく私にしてくれればよかった。

 彼なしでどうやって生きていけばいいのか。

 血がとまらない。
 今すぐ私の血をわけてあげられないのか。
 そんなことを思いつつ、頭の中ではもう彼は助からないとわかってしまっていた。

 イヤだ、そんなのイヤだ。
 イヤだイヤだイヤだ。

 しかしその時――

「マリ! 上!」

 誰かがそう叫んだのに合わせて振り向くと、ビルの2階にかかった看板が落ちてきた。

 やば――

 声を発する間もなく、私の意識は闇に落ちた。
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