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FILE 01 女学園バラバラ死体事件
FILE01 女学園バラバラ死体事件-6
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俺達が一旦自宅に戻ると、移動中に組織に頼んでおいたゲーム機がすでにセットアップされていた。
仕事が早い。
俺は早速、ゲーム機を立ち上げた。
「ゲームなんてしてる場合じゃないでしょ!」
腰に手を当てて怒るミカをたしなめつつ、天ヶ崎のアカウントにフレンド申請をする。
申請はすぐに受理された。
「これで天ヶ崎が自宅にいるかがすぐわかる」
「え……?
あっ! そうか!
アカウント交換ってこのためだったんだ。そこまで考えてたのね」
「彼はゲームをしていないときは、本体の電源を落とすタイプだった。
これで彼が部屋にいるかどうかがわかる。
ゲームさえしてくれていれば、居留守を使われることはないってわけだ」
「居留守を使われる可能性があるっってこと?
あなたたち、仲良くなったように見えたけど」
「彼は気づいてるよ。
次に俺たちが訪ねていくときは、何かしら自分にまずいことが起きるってな」
奴はああ見えて、相当頭の良い男だ。
魔王時代なら、即スカウトしていただろう。
その時、ミカのスマホに主任から電話がかかってきた。
「わかりました。愁斗にも伝えます。
え? 彼に代われ?」
ミカへの要件は、おそらく被害者の手術後についてだろう。
あえて俺に直接話すことはないと思うが……。
「なんでしょう、主任」
「これまでの捜査経過については報告を受けている。
手術跡についても、写真だけでよく気付いたものだ。
やはり、君は極めて優秀な男なようだな。
しかも、まだ何か隠し玉を持っている。
事件を一発で解決してしまうような。
違うかな?」
「ご明察です」
チャームや記憶操作などの搦手系魔術は、専門の部下に任せていたので得意じゃない。
だが、手段を選ばなければ、それ以外にも事件を解決する方法はいくつかある。
それこそ、怪しい人間全員に攻撃と脅しをかけ、その反応と反撃方法を見極める、とかな。
さすがに問題がありすぎるので、最後の手段としても使いたくないが。
「できればその隠し玉は使わずに捜査を進めてほしい」
「意外ですね。てっきり手段を選ぶなと言ってくるかと」
「本音は、奴らをすぐにでも根絶やしにしたいさ。
だが、プランダラー達は世界中に散らばっている。
元を断つ手段が見つかっていない以上、対処できる人材を育てねばならん」
「なるほど……。
俺にミカの教育係をしろってことですね」
記憶の消えない人間がよほど貴重なのか。
いや、それだけじゃないな。
主任はミカと何か……色恋の話ではないようだが……いや、今はいいだろう。
「話が早くて助かる。
このままでは、ミカは近いうちに死ぬ」
「ミカは現場ではどれくらいの評価なのですか?」
俺は彼女と主任、あとは運転手以外の人材を見たことがない。
死ぬのを心配するというのが、優秀だから失いたくないのか、弱すぎて死にそうなのか。
隣りではミカが「なんの話をしてるの」と口を尖らせているが、無視させてもらう。
「彼女は現場担当の中でもかなり優秀な方だ。
だが、彼女くらいの力量の者が一番危ない」
「自信過剰な駆け出しの頃と並んで、一番ムチャをしやすい時期ですね」
「その若さで、そんなコメントができるのか……すごいな。
とにかく、そもそも『記憶が消えない』という条件でふるいにかけられた中で、優秀な人材を確保することはとても難しいのだ。
申し訳ないが、よろしく頼む」
語られた以外にも、ミカを気にかける理由はありそうだ。
彼の言葉には、上司として以外の彼女に対する思いやりが感じられる。
その理由は今は聞かないでおこう。
おそらく答えたくないことのはずだ。
だからこそ、俺は引き受けようと思う。
しかし、新入りの俺にこんなことを頼むとは相当だ。
「わかりました。お引き受けします」
「ありがとう。感謝する」
「彼女をそこまで気にかける理由については、そのうち聞かせてください」
「……本当にかなわんな。時が来たら話す」
「それでかまいません。それでは」
俺がスマホをミカに返すと、彼女はなんの話だったのかしつこく聞いてきた。
「機密だ」と答えると、それ以上は追求してこなかった。
「それより、主任から被害者の手術跡について、情報が入ったんじゃないか?」
「はっ! そうなの。
彼女の手術をした医者が吐いたわ。
彼女、どうやら左腕に何かのチップを埋め込んだらしいの」
「まるでSFだな」
「手術をしたのは、経営の危なくなった町医者でね。
腕はピカイチと近所で評判だったのだけど、近くに大病院ができて、後は商店街よろしくお決まりのコース。
大病院からスカウトも来ていたけど、断っていたそうよ。
その後はいろいろと嫌がらせも受けていたみたい。
んで、そこそこの金額をもらって対応したそうよ。
手術は、被害者が殺される3日前」
だとすると、その医者はこれ以上何も知らないな。
「犯人の狙いはそのチップか」
「間違いないと思う」
「問題はそのチップが何かだな。
よくあるのは、何の情報が入っているかってところだが、一体何の……」
ピースが足りない。
これは、今考えてもわからないな。
「ヒントになるかわからないけど、被害者と天ヶ崎の通信データを見ていて、不審な点をみつけたの」
「なんだ?」
「被害者から天ヶ崎に、毎日決まった時刻に、会話とは異なるサイズのデータが送られてるの。
やりとりは1ヶ月ほど続いていて、最初の二週間はだんだんデータ量が増えていて、そこからはほぼ横ばい。
データの送信は手術の前日にとぎれてる。
毎日続いていたボイスチャットも、この日を堺になくなってるわ」
「そんなことまでわかるのか」
「組織は、サーバーに残っているあらゆる通信ログを辿れるから。
さすがに会話の内容そのものは無理だけど」
「組織もすごいが、何よりそのデータが怪しいと気付いたことがすごい。
お手柄だぞ!」
「え? そお? 何か役に立ちそう?」
褒められてうっきうきのミカである。
かわいい笑顔だ
「天ヶ崎のところへ戻るぞ!」
「なんだかわかんないけど了解!」
…………
……
天ヶ崎宅へ行く途中、俺は後部座席についているモニターで、いくつかデータをチェックしていた。
一つは被害者と天ヶ崎の、格闘ゲーム対戦リプレイだ。
タイトルにもよるが、彼らがプレイしていたゲームは、ゲーム内で世界中のプレイヤーの対戦リプレイが見られる。
やはり、被害者から送られるデータが増えるにしたがって、彼女のプレイが精彩を欠いている。
弱くなったりスランプというわけではない。ふとした拍子に上の空になり、手癖で行動してしまっているという動きだ。
他には、やたらと普段と違う動きをしている試合がある。
ミカの言っていた『データ』が送られた直後の試合に多い。
新しい戦法を試しているようにも見えるが、何かがおかしい。
これは……キャラクターの動きで会話をしている?
内容は手がかりがなさすぎて読み取れないが、暗号のようなもので会話をしている跡が見られる。
ボイスチャットやテキストチャットで話すことはできなかった機密性の高いものか……?
ハッキングを恐れたのだろうか。
それにしても大胆な方法だ。
どうせハッキングされるなら、見られてもわからない方法で、公開してしまうということか。
もう一つチェックしたのは、被害者のスマホだ。
スマホにはプライベート情報がたっぷりつまっているものだが、不自然なほどにそれらは見られなかった。
いつかスマホを覗かれることを予見していたかのようだ。
その代わりと言ってはなんだが、ソーシャルゲームが大量にインストールされていた。
しかし、そのどれもがチュートリアルを終えて少し進んだあたりで終了している。
楽しんだというよりは、まるでどんなゲームかを確認するためだけに、義務感でプレイしたような痕跡だ。
これらがどういった意味を持つのか。
天ヶ崎に会えばそれがわかるかもしれない。
仕事が早い。
俺は早速、ゲーム機を立ち上げた。
「ゲームなんてしてる場合じゃないでしょ!」
腰に手を当てて怒るミカをたしなめつつ、天ヶ崎のアカウントにフレンド申請をする。
申請はすぐに受理された。
「これで天ヶ崎が自宅にいるかがすぐわかる」
「え……?
あっ! そうか!
アカウント交換ってこのためだったんだ。そこまで考えてたのね」
「彼はゲームをしていないときは、本体の電源を落とすタイプだった。
これで彼が部屋にいるかどうかがわかる。
ゲームさえしてくれていれば、居留守を使われることはないってわけだ」
「居留守を使われる可能性があるっってこと?
あなたたち、仲良くなったように見えたけど」
「彼は気づいてるよ。
次に俺たちが訪ねていくときは、何かしら自分にまずいことが起きるってな」
奴はああ見えて、相当頭の良い男だ。
魔王時代なら、即スカウトしていただろう。
その時、ミカのスマホに主任から電話がかかってきた。
「わかりました。愁斗にも伝えます。
え? 彼に代われ?」
ミカへの要件は、おそらく被害者の手術後についてだろう。
あえて俺に直接話すことはないと思うが……。
「なんでしょう、主任」
「これまでの捜査経過については報告を受けている。
手術跡についても、写真だけでよく気付いたものだ。
やはり、君は極めて優秀な男なようだな。
しかも、まだ何か隠し玉を持っている。
事件を一発で解決してしまうような。
違うかな?」
「ご明察です」
チャームや記憶操作などの搦手系魔術は、専門の部下に任せていたので得意じゃない。
だが、手段を選ばなければ、それ以外にも事件を解決する方法はいくつかある。
それこそ、怪しい人間全員に攻撃と脅しをかけ、その反応と反撃方法を見極める、とかな。
さすがに問題がありすぎるので、最後の手段としても使いたくないが。
「できればその隠し玉は使わずに捜査を進めてほしい」
「意外ですね。てっきり手段を選ぶなと言ってくるかと」
「本音は、奴らをすぐにでも根絶やしにしたいさ。
だが、プランダラー達は世界中に散らばっている。
元を断つ手段が見つかっていない以上、対処できる人材を育てねばならん」
「なるほど……。
俺にミカの教育係をしろってことですね」
記憶の消えない人間がよほど貴重なのか。
いや、それだけじゃないな。
主任はミカと何か……色恋の話ではないようだが……いや、今はいいだろう。
「話が早くて助かる。
このままでは、ミカは近いうちに死ぬ」
「ミカは現場ではどれくらいの評価なのですか?」
俺は彼女と主任、あとは運転手以外の人材を見たことがない。
死ぬのを心配するというのが、優秀だから失いたくないのか、弱すぎて死にそうなのか。
隣りではミカが「なんの話をしてるの」と口を尖らせているが、無視させてもらう。
「彼女は現場担当の中でもかなり優秀な方だ。
だが、彼女くらいの力量の者が一番危ない」
「自信過剰な駆け出しの頃と並んで、一番ムチャをしやすい時期ですね」
「その若さで、そんなコメントができるのか……すごいな。
とにかく、そもそも『記憶が消えない』という条件でふるいにかけられた中で、優秀な人材を確保することはとても難しいのだ。
申し訳ないが、よろしく頼む」
語られた以外にも、ミカを気にかける理由はありそうだ。
彼の言葉には、上司として以外の彼女に対する思いやりが感じられる。
その理由は今は聞かないでおこう。
おそらく答えたくないことのはずだ。
だからこそ、俺は引き受けようと思う。
しかし、新入りの俺にこんなことを頼むとは相当だ。
「わかりました。お引き受けします」
「ありがとう。感謝する」
「彼女をそこまで気にかける理由については、そのうち聞かせてください」
「……本当にかなわんな。時が来たら話す」
「それでかまいません。それでは」
俺がスマホをミカに返すと、彼女はなんの話だったのかしつこく聞いてきた。
「機密だ」と答えると、それ以上は追求してこなかった。
「それより、主任から被害者の手術跡について、情報が入ったんじゃないか?」
「はっ! そうなの。
彼女の手術をした医者が吐いたわ。
彼女、どうやら左腕に何かのチップを埋め込んだらしいの」
「まるでSFだな」
「手術をしたのは、経営の危なくなった町医者でね。
腕はピカイチと近所で評判だったのだけど、近くに大病院ができて、後は商店街よろしくお決まりのコース。
大病院からスカウトも来ていたけど、断っていたそうよ。
その後はいろいろと嫌がらせも受けていたみたい。
んで、そこそこの金額をもらって対応したそうよ。
手術は、被害者が殺される3日前」
だとすると、その医者はこれ以上何も知らないな。
「犯人の狙いはそのチップか」
「間違いないと思う」
「問題はそのチップが何かだな。
よくあるのは、何の情報が入っているかってところだが、一体何の……」
ピースが足りない。
これは、今考えてもわからないな。
「ヒントになるかわからないけど、被害者と天ヶ崎の通信データを見ていて、不審な点をみつけたの」
「なんだ?」
「被害者から天ヶ崎に、毎日決まった時刻に、会話とは異なるサイズのデータが送られてるの。
やりとりは1ヶ月ほど続いていて、最初の二週間はだんだんデータ量が増えていて、そこからはほぼ横ばい。
データの送信は手術の前日にとぎれてる。
毎日続いていたボイスチャットも、この日を堺になくなってるわ」
「そんなことまでわかるのか」
「組織は、サーバーに残っているあらゆる通信ログを辿れるから。
さすがに会話の内容そのものは無理だけど」
「組織もすごいが、何よりそのデータが怪しいと気付いたことがすごい。
お手柄だぞ!」
「え? そお? 何か役に立ちそう?」
褒められてうっきうきのミカである。
かわいい笑顔だ
「天ヶ崎のところへ戻るぞ!」
「なんだかわかんないけど了解!」
…………
……
天ヶ崎宅へ行く途中、俺は後部座席についているモニターで、いくつかデータをチェックしていた。
一つは被害者と天ヶ崎の、格闘ゲーム対戦リプレイだ。
タイトルにもよるが、彼らがプレイしていたゲームは、ゲーム内で世界中のプレイヤーの対戦リプレイが見られる。
やはり、被害者から送られるデータが増えるにしたがって、彼女のプレイが精彩を欠いている。
弱くなったりスランプというわけではない。ふとした拍子に上の空になり、手癖で行動してしまっているという動きだ。
他には、やたらと普段と違う動きをしている試合がある。
ミカの言っていた『データ』が送られた直後の試合に多い。
新しい戦法を試しているようにも見えるが、何かがおかしい。
これは……キャラクターの動きで会話をしている?
内容は手がかりがなさすぎて読み取れないが、暗号のようなもので会話をしている跡が見られる。
ボイスチャットやテキストチャットで話すことはできなかった機密性の高いものか……?
ハッキングを恐れたのだろうか。
それにしても大胆な方法だ。
どうせハッキングされるなら、見られてもわからない方法で、公開してしまうということか。
もう一つチェックしたのは、被害者のスマホだ。
スマホにはプライベート情報がたっぷりつまっているものだが、不自然なほどにそれらは見られなかった。
いつかスマホを覗かれることを予見していたかのようだ。
その代わりと言ってはなんだが、ソーシャルゲームが大量にインストールされていた。
しかし、そのどれもがチュートリアルを終えて少し進んだあたりで終了している。
楽しんだというよりは、まるでどんなゲームかを確認するためだけに、義務感でプレイしたような痕跡だ。
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