性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万

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これから俺達は戦争をする

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 仕事部屋。

 チェルシーが俺の机に座っている。
 イライラしているのか貧乏ゆすりをしていた。

「あの泥棒猫の出産はいつだって? もう少しじゃねぇーのか?」
 と猫が言った。

 泥棒猫、というのはイライアのことである。

「もう少しだ」と俺は答えた。

「なんでソビラトに魔王イライアを行かせるんだよ? お前、自分の子どもが心配じゃねぇーのかよ?」

「心配だよ」と俺は言った。

 もう彼女のお腹は大きい。
 確実にイライアのお腹の中には赤ちゃんがいた。彼女のお腹を蹴ったり叩いたりするのだ。
 お腹の中で赤ちゃんは元気に育っている。

「ミナミの子どもなんだぞ」
 とチェルシーが言った。

 イライアのお腹にいるのはミナミと俺の子どもだった。

「つーことは俺は叔父さんになるのか?」

「ならねぇーよ。猫と血の繋がりなんてねぇーよ」と俺が言う。

「俺にとっては姪っ子か、甥っ子みたいなもんなんだよ。ネズミの捕まえ方をレクチャーしてあげてぇーんだよ」
 とチェルシー。

「それはやめてくれ」

「ソラビトに向かうっていうのは、どういう事なんだよ」
 とチェルシーがキレていた。

 イライアはソラビトに向かった。
 魔王としての最後の仕事である。
 
 イライアのお腹に防御魔法を、これでもかというぐらいに俺はかけてあげた。
 それでも何かあったらと思うと不安で仕方がない。
 妊婦さんであることがバレないように偽装魔法もかけている。

 俺はチェルシーを抱いて、机から退かせた。
 机の上には地図がある。

「ソビラトとエジーが現在戦っている」
 と俺は言った。

「知ってる」とチェルシー。

「先日、ソビラトの爆弾が俺の国に落ちた」

「俺がソビラトに行って、ソビラトの武器で爆弾を落としなヤツな」
 とチェルシーが言う。

 他の国から見て攻撃しても仕方がないよね、と思えるほどの理由がほしかった。

「たまたま負傷者は1人も出なかったが、これ以上の戦争を続けていると、アクセプトも巻き込まれる恐れがある」
 と俺は言った。
「そんな時にたまたま魔王イライアがソビラトに出現して混乱を招くことになった。このチャンスにアクセプトはソビラトに攻撃をしかける」

「時期をズラせよ。出産してからでも良かっただろう?」

「エジーが敗戦して戦争が終わりそうだったんだよ。今しかないんだ」
 と俺が言う。

 俺だって妊婦さんを戦争に行かせたくない。だから今日まで行かすことができなかった。

 本来なら魔王の手札は使うべきではない。だけど戦争とは別に目的があったのだ。
 彼女は指名手配されている魔王である。生きているだけで勇者がやって来て討伐されるのだ。
 だから俺の国に彼女を招くことはできない。
 もし魔王を匿《かくま》っていることがバレると俺の国が世界中から攻撃される。
 もしかしたら俺も魔王認定されるかもしれない。
 だからイライアは死ななければいけなかった。勇者に討伐されなければいけなかった。それが魔王イライアの最後の仕事だった。
 
 彼女が俺の妻になる時は、もう魔王ではない。

「子どもに何かあったらお前のせいだからな」とチェルシーが言った。

「あぁ」と俺は頷く。

「エジーはちゃんと俺達の思惑に乗ってくれるんだよな?」とチェルシーが言う。

「たぶん」と俺は言った。

 エジーとしては俺達と一緒にソラビトを倒しに向かうしかない。

 仮に敗戦ギリギリのエジーがおかしな動きをしたら作戦は変更する。敵がどう動くのか? それを考えて何十個もプランは考ていた。
 
 エジーはバビリニアの傀儡《かいらい》である。
 バビリニア先輩がアクセプトを攻めろ、って言えば、エジーは俺達に攻撃してくる。

 星のカケラを俺は持っている。どこかで情報が漏れて俺達の国が攻められる可能性だってあるのだ。
 
「俺達は勝てるんだよな?」
 とチェルシーが不安そうに尋ねた。

「勝つんじゃねぇーよ。負けないように戦うんだ」と俺は言った。

「つーか、俺達の国、弱くねぇーか?」
 とチェルシー。

 色んな国を見て来たから猫は、そう思ったんだろう。

「弱い」と俺が言う。

 俺の国は生まれたばかりの赤ちゃんである。
 戦力だって勇者が1人、それに禿げたドワーフが1人、それに軍とも呼べないような騎士団の寄せ集めしかいないのだ。
 騎士団はソビラト側とエジー側に配置はしていた。
 だけど攻められたら俺達の軍は簡単に負けてしまう。

「もしエジーが攻めて来たら、どうするんだよ?」とチェルシーが尋ねた。

「ちゃんと準備している」と俺は言った。

 バビロニアのスパイである中年のおっさんから巨大になる実がある場所を教えてもらっていた。そして大量の巨大になる実を確保していた。
 ちなみにおっさんは解放はしてない。もしこのおっさんを解放してしまったら、それこそ本当に俺が星のカケラを持っているという事がバビロニア先輩にバレてしまう。あの先輩超絶に怖ぇーんだよ。

 イライアには魔物の手懐け方を教えて貰っていた。エジーの誰も入っていないようなダンジョンを攻略して、魔物を手懐けている。

 エジーが俺達の国を攻めて来た時はダンジョンで手懐けた魔物達を巨大にさせてエジーの国で暴れ回ることになる。

 その事を俺はチェルシーに説明した。

「そんな事までやってたのかよ」

「エジーが俺達を攻めてくる可能性は少ない。だけど少しでもその可能性があるなら対策は打つんだよ」

「ココまでやってるんだったら勝ったも当然だな。ミナミも蘇らすことができるな」とチェルシーが言う。

 俺は首を横に振った。

「撤退《てったい》しなくてはいけない局面も存在してる」と俺が言う。

「なんだよ?」とチェルシーが尋ねた。

「バビリニアがソビラト側につく場合だよ」と俺は言った。

「ありえねぇー。だってエジーに戦争をしかけさせたのはバビリニアだぞ」とチェルシー。

「ありえるんだよ」と俺が言う。
「バビリニアの目的は、ソビラトが持っている星のカケラを手にいれることだぞ。逆に言えばバビリニアは星のカケラさえ手に入れば、それでいいんだよ。『どうかコレでワシの国を守ってけれぇー』とバビリニア先輩にソビラトが泣きつく可能性があんだよ。そうなった場合は撤退しかないんだ」と俺は言った。

「大丈夫だよな?」
 とチェルシーが不安そうに言った。

「心配するな。ミナミは必ず取り戻す」
 と俺が言う。

 どんな道筋を辿ってもミナミは絶対に蘇らせる。

「これから俺達は戦争をする」と俺は言った。「ミナミを取り戻すために」
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