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お主の子を産んでやろう、と言っておるのじゃ
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両想いだった。
長谷川はイライアのことを想い、イライアは長谷川のことを想った。
だけど結ばれるのは魔王を倒してからになる。
もしかしたら魔王を倒したら日本に帰れるかも、という期待が関西人勇者の中にあったのかもしれない。だから気持ちを保留にさせていたのかもしれない。恋よりも子どもに天秤は傾いていたんだろう。
子どもは凄い。いつでも会いたいし、いつでも守ってあげたい。自分がいなくては死んでしまいそうなほど脆《もろ》くて、そのくせ元気で一緒にいたら疲れる。
子どもは失うのが世界で一番恐ろしいモノだった。
だから魔王を倒したら帰れるかもしれない、という気持ちがある限りは、長谷川は彼女に手を出さなかった。
イライアは賢者の石のことを長谷川に内緒にしていた。
賢者の石は元の世界に戻すためのアイテム。勇者のためのアイテムである。
黄泉の国から元の世界に戻すのにはコストがかかる。世界中の人間か? それとも大切な人間か? 究極の二択を求められるほどのコスト。
だけど生きている人間を元の世界に戻すのはコストがかからない、とイライアは言っていたような気がする。←詳しくは聞いていなかったけど、そんなことを言っていたような気がする。
この時点で彼女は長谷川を日本に帰すことができたのだ。
だけど彼女は黙っていた。
愛した男がいなくなることを拒んだのだ。
2人は魔王を倒して、関西人勇者を召喚した国に戻った。
長谷川を召喚した国はバビリニアだった。この時代のバビリニアは中小国家だった。
王様に褒められ、大きな家と、それなりの爵位と、領地を勇者は与えられた。
すでに大きな家には執事もメイドもいた。
大きな家の大きな部屋。
その部屋の大きなソファーに長谷川は座った。
「ごっついマイホームを貰っても嬉しくないわ」
と長谷川が言った。
イライアは彼の隣に座っていた。
「まだ子どもに会いたいのか?」
と彼女が尋ねた。
「もう日本に帰られへんのかな?」
と彼が尋ねた。
「無理じゃ。お主は日本には帰れん」
とイライアが言った。
「魔王を倒してもホンマに元の世界に帰られへんかったしな」
と彼は言って、悲しそうに笑った。
「そうじゃ。召喚された勇者は死ぬまで、この世界で生きるのじゃ」
と彼女が言う。
「そうか」
と彼が呟いた。
「別の子で良ければ、妾がお主の子どもに会わしてやろう」
とイライアが手をモジモジしながら言った。
「イライアさん、それはどういうことでしょうか?」
と長谷川が急に敬語で喋った。
「えっーと、わからぬのか?」
「わからぬ」と長谷川が悪戯っぽく言う。
「お主の子を産んでやろう、と言っておるのじゃ」
「産むって、何をするのか知っているんですか?」
「その敬語はやめんか」
「ごめんごめん。産む前にどんな行為をするか知ってるの?」
「……体を交えるのじゃろう?」
恥ずかしそうにイライアが言う。
「違う」と彼が言った。「お前はそんなことばっかり考えているのか。産む前にしないといけないのは結婚やろう」
「そんなことばっかり考えておらぬ。妾も結婚だと思ったんじゃ。間違っただけじゃ」
と彼女が慌てて言った。
「嘘やん。真剣に答えてたやん」
「決して嘘ではない。妾は嘘などつかぬ。結婚だと思っていたんじゃ」
「わかったわかった。イライアは結婚だと思いながら、体を交えるって答えたんやな」
「そうじゃ。ただそれだけの事じゃ」
「俺とそういうことしたいの?」
「……したいに決まっておろう」
と彼女が超絶に照れ臭そうに言った。
「俺もしたい」
と彼が言った。
長谷川がイライアの頬を両手で掴み、キスをした。
イライアのファーストキス。
あまり上手にできずに、歯がカチカチ当たるキスだった。
チェルシーは配慮して編集でエッチなシーンをカットした。
だからエッチなシーンは見れなかった。
それからイライアには幸せな日常がやって来る。2人は結婚してイライアは妊娠した。
大きなお腹。
彼の子どもがお腹の中にいた。
長谷川は彼女のお腹を触ったり、耳を当てて音を聞いたりしていた。
イライアは幸せだった。
だけど、そんな幸せは長くは続かなかった。
王様から長谷川に仕事の依頼がきたのだ。
その仕事の依頼は別の国を滅ぼすことだった。
長谷川はイライアのことを想い、イライアは長谷川のことを想った。
だけど結ばれるのは魔王を倒してからになる。
もしかしたら魔王を倒したら日本に帰れるかも、という期待が関西人勇者の中にあったのかもしれない。だから気持ちを保留にさせていたのかもしれない。恋よりも子どもに天秤は傾いていたんだろう。
子どもは凄い。いつでも会いたいし、いつでも守ってあげたい。自分がいなくては死んでしまいそうなほど脆《もろ》くて、そのくせ元気で一緒にいたら疲れる。
子どもは失うのが世界で一番恐ろしいモノだった。
だから魔王を倒したら帰れるかもしれない、という気持ちがある限りは、長谷川は彼女に手を出さなかった。
イライアは賢者の石のことを長谷川に内緒にしていた。
賢者の石は元の世界に戻すためのアイテム。勇者のためのアイテムである。
黄泉の国から元の世界に戻すのにはコストがかかる。世界中の人間か? それとも大切な人間か? 究極の二択を求められるほどのコスト。
だけど生きている人間を元の世界に戻すのはコストがかからない、とイライアは言っていたような気がする。←詳しくは聞いていなかったけど、そんなことを言っていたような気がする。
この時点で彼女は長谷川を日本に帰すことができたのだ。
だけど彼女は黙っていた。
愛した男がいなくなることを拒んだのだ。
2人は魔王を倒して、関西人勇者を召喚した国に戻った。
長谷川を召喚した国はバビリニアだった。この時代のバビリニアは中小国家だった。
王様に褒められ、大きな家と、それなりの爵位と、領地を勇者は与えられた。
すでに大きな家には執事もメイドもいた。
大きな家の大きな部屋。
その部屋の大きなソファーに長谷川は座った。
「ごっついマイホームを貰っても嬉しくないわ」
と長谷川が言った。
イライアは彼の隣に座っていた。
「まだ子どもに会いたいのか?」
と彼女が尋ねた。
「もう日本に帰られへんのかな?」
と彼が尋ねた。
「無理じゃ。お主は日本には帰れん」
とイライアが言った。
「魔王を倒してもホンマに元の世界に帰られへんかったしな」
と彼は言って、悲しそうに笑った。
「そうじゃ。召喚された勇者は死ぬまで、この世界で生きるのじゃ」
と彼女が言う。
「そうか」
と彼が呟いた。
「別の子で良ければ、妾がお主の子どもに会わしてやろう」
とイライアが手をモジモジしながら言った。
「イライアさん、それはどういうことでしょうか?」
と長谷川が急に敬語で喋った。
「えっーと、わからぬのか?」
「わからぬ」と長谷川が悪戯っぽく言う。
「お主の子を産んでやろう、と言っておるのじゃ」
「産むって、何をするのか知っているんですか?」
「その敬語はやめんか」
「ごめんごめん。産む前にどんな行為をするか知ってるの?」
「……体を交えるのじゃろう?」
恥ずかしそうにイライアが言う。
「違う」と彼が言った。「お前はそんなことばっかり考えているのか。産む前にしないといけないのは結婚やろう」
「そんなことばっかり考えておらぬ。妾も結婚だと思ったんじゃ。間違っただけじゃ」
と彼女が慌てて言った。
「嘘やん。真剣に答えてたやん」
「決して嘘ではない。妾は嘘などつかぬ。結婚だと思っていたんじゃ」
「わかったわかった。イライアは結婚だと思いながら、体を交えるって答えたんやな」
「そうじゃ。ただそれだけの事じゃ」
「俺とそういうことしたいの?」
「……したいに決まっておろう」
と彼女が超絶に照れ臭そうに言った。
「俺もしたい」
と彼が言った。
長谷川がイライアの頬を両手で掴み、キスをした。
イライアのファーストキス。
あまり上手にできずに、歯がカチカチ当たるキスだった。
チェルシーは配慮して編集でエッチなシーンをカットした。
だからエッチなシーンは見れなかった。
それからイライアには幸せな日常がやって来る。2人は結婚してイライアは妊娠した。
大きなお腹。
彼の子どもがお腹の中にいた。
長谷川は彼女のお腹を触ったり、耳を当てて音を聞いたりしていた。
イライアは幸せだった。
だけど、そんな幸せは長くは続かなかった。
王様から長谷川に仕事の依頼がきたのだ。
その仕事の依頼は別の国を滅ぼすことだった。
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